第53話 殻を破るとき③
ほどなくして謁見の間に到着する。
俺は扉の向こうの魔力を探る。
罠は特に仕掛けておらず、四つの反応が俺達を待っている。
他には誰もいない。
あまりにも警備が手薄だが考えがあるのだろう。
俺はミハエルに最終確認をする。
「いけるか」
「ああ、大丈夫だ」
ミハエルは緊張気味に応じる。
動きが硬くならないか心配だが、あまり世話を焼きすぎるのも良くない。
刃影軍を仲間にして率いるほどの功績を掴んだのだから、きっと今回もやり遂げるはずだ。
若き才覚を存分に見せてもらおうと思う。
俺は扉を押し開く。
少し先の玉座に国王が腰かけていた。
浅黒い肌に短い銀髪が特徴の男だ。
煌びやかな刺繍の施された衣服に身を包み、大儀そうに足を組んでいる。
両腕は肘から先がなく、何重にも布を巻きつけている。
全体的に細身な体躯だが貧弱な印象はない。
余計な脂肪を削ぎ落とした体型で、明らかな武闘派であった。
猛獣を彷彿とさせる眼光もそう感じさせる一因だろう。
国王の体内から感じられる魔力は洗練されている。
特に欠損した両腕に集中し、いつでも術を発動できるように構えているようだった。
なるほど、権力に縋るだけの人物ではないらしい。
確かな実力を備えているのが分かる。
国王のそばには三人の護衛が控えていた。
揃いの鎧はこの国の兵士のものとは異なる。
彼らだけの特別な扱いなのか、或いは別の組織に属しているのかもしれない。
護衛達は国王以上の魔力を宿していた。
人工的な反応が混ざっているのは、複数の魔導器を装着しているからか。
ただしそれらに依存している様子はなく、彼らの雰囲気は歴戦の猛者であった。
感情を含めずに俺達を観察する双眸は冷徹の一言に尽きる。
異常事態にも臆さず、己の役割を理解していた。
(なかなかの難敵だな。面白い)
俺は思わず微笑む。
ただ同行するだけのつもりが、想像よりも手強そうな相手が出てきてくれた。
護衛だけでなく国王までもが実力者なのは想定外だ。
武力で刃影国をまとめ上げているのだろう。
警備が手薄なのも自信の表れに違いない。
居並ぶ四人の敵を見て戦闘意欲が湧いてくる。
それを理性の鎖で食い止めた。
これはミハエルの舞台だ。
俺がでしゃばるのは野暮である。
なんとか本能を抑えなければならない。




