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錬金術師の傭兵団 ~古強者は死に場所を求めて世界戦争に再臨する~  作者: 結城 からく


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第52話 殻を破るとき②

 破壊された門から首都内へと踏み込む。

 こちらを窺う民衆は不安そうだ。

 一触即発の空気に怯えている者も多かった。

 彼らの大半が状況を把握していないに違いない。

 国としても実情を公表できない部分もあった。


 周囲に展開する兵士達は攻撃を仕掛けてこない。

 さすがに民衆を巻き込みかねない局面で戦いを起こすのは不味いと判断したようだ。

 仮にそうなっても俺が止めるつもりである。

 無関係な人間が死ぬようなことは許されない。


 不気味な静寂の中、何も起こらずに城まで到着した。

 四方と上部を結界が守っているが、正門に続く箇所だけ取り除かされている。

 塞いでおくと俺が破壊すると思われたのだろう。

 その予想は間違っていないので賢明な行動と言える。

 刃影国を守護する大魔術だが、俺からすれば破壊など造作もない。


 話し合いの結果、城内へは俺とユエルとミハエルの三人で入ることになった。

 無理に兵士を引き連れていくと乱戦になる恐れがあるためだ。

 戦力的にも十分である以上、不確定要素を持ち込む方が面倒である。


 残す兵士達については、俺達が脅して人質に取ったということにしておいた。

 これならば処罰も軽くなるはずだ。

 まあ、王との面会の結果次第では処罰どころの話ではなくなるかもしれないが。

 何にしてもやることは決まっていた。

 ただ前に進めばいい。


 俺達は城内を歩く。

 不自然なほどに誰もいない。

 先ほどまで周りにいた監視役の兵士も不在だった。


 ミハエルは不思議そうに疑問を呈する。


「妙に静かだな。罠でも仕掛けられているのか?」


「アッシュ様がいる中でそれはありませんよ。この上ない愚行ですので」


 なぜかユエルが誇らしそうにしている。

 まるで自分のことを褒められたかのよう態度であった。

 俺は近辺の魔力を解析して述べる。


「下手な妨害は逆効果だと気付いたらしい。こちらとしては好都合だ。ただ、結界を広げて邪魔が入らないようにするか。せっかくの機会を台無しにされたくないからな」


「前から気になっていたが、本当に錬金術師なのか? その領域を逸脱しているように思うが」


 ミハエルが興味を隠さずに訊いてくる。

 俺が答えるより先に、ユエルが早口で語り始めた。


「アッシュ様は世界最高の錬金術師ですからね! 五十年前の大戦で"万能"の二つ名を得るほどです。当時の時点でも異端の才覚を誇っていましたので、魔導器に依存する現代では尚更でしょう。あらゆる系統の術を習得されることで、常識に縛られない素晴らしき力を――」


 ユエルが止まらない。

 恐ろしいほど流暢に喋り続けている。

 錬金術と俺について詳しく説明しているようだが、熱意が強すぎて内容が頭に入ってこない。

 質問をしたミハエルもすっかり気圧されて黙っていた。

 俺は小声で伝える。


「あまり気にするな。英雄の能力なんて例外ばかりだ」


「……分かった」


 延々と語るユエルを一瞥した後、ミハエルは慎重に頷いた。

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