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錬金術師の傭兵団 ~古強者は死に場所を求めて世界戦争に再臨する~  作者: 結城 からく


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第51話 殻を破るとき①

 およそ十日ほどかけて、俺達は首都に到着した。

 刃影軍を連れての移動だったので余計に時間を要したが、ミハエルの威厳や影響力を演出するのに重要な点である。

 彼らを置き去りにするわけにはいかなかった。


 少し遠くに見える首都の門は閉ざされている。

 結界も張られており、露骨に警戒態勢を敷いていた。

 やがて拡声の魔術を使った警告が聞こえてくる。


「止まれェ! それ以上の接近は攻撃行為と見なす!」


 外壁の上には兵士達が控えていた。

 それぞれ遠距離用の魔導器を装備し、俺達に狙いを定めている。

 ミハエルは堂々と胸を張ると、高らかに名乗りを上げた。


「俺は"呪槍"の英雄ミハエルだ! 王に用件がある! 争うつもりはないッ!」


 返答はない。

 代わりに数本の影の矢が放たれた。

 正確な軌道でミハエルを射抜こうと飛来してくる。

 ミハエルが舌打ちして呪槍を構えようとしたので、俺は手で制した。


「ここは任せろ」


 迫る影の矢に手をかざし、術を構成する魔力を吸い取って消滅させる。

 一部は制御を奪って跳ね返した。

 矢は門に突き立って兵士達を驚かせる。

 加減をしたので死傷者は出ていない。


 ミハエルは呪槍を下ろして礼を言った。


「……助かった」


「これは戦いではないからな。お安い御用さ」


 俺達は今から国王と面会をするのだ。

 刃影国を滅ぼすつもりはない。


 ミハエルは既に英雄としての気概を示している。

 つまり俺が効率的に対処しようと問題ないのである。


 俺達は引き続き首都へと接近していく。

 何度か影の矢を防ぎ、巨大な影の槍も反射させて結界ごと門を粉砕してやった。

 おかげで向こうは大騒ぎである。


 それとは対照的にこちらは落ち着いている。

 すぐ後ろを同行する刃影軍も、緊張した面持ちながらも動揺は少ない。

 ミハエルによる蹂躙が主従関係を確固たるものになっていた。

 兵を統率できるのは良い英雄の最たる証左と言えよう。


 ユエルは外壁で構える兵士を見て言う。


「攻撃の頻度が減ってきましたね」


「まったく通じないとなれば意志は削がれるだろうな。仕掛けるほど被害が膨らむのなら、無防備で待った方がいいという考えも出てくる」


 俺の反撃は脅しだ。

 余計なことをするなという警句である。

 積極的な攻撃をしないのはその訴えを伝えるためだ。

 向こうがだんだんと大人しくなりつつあるのは目論見が成功した証拠だった。

 指揮官が俺の意図に気が付いたのだろう。


 監視役から情報が漏れているとすれば、俺とユエルが同行していることも知っているはずだ。

 真っ向勝負では絶対に勝てないと悟ったのではないか。


 ひとまず首都外での戦いは俺達が制した形になるが、問題はここからだ。

 政治的な手腕は相手が勝る。

 ミハエルの正式的な離脱を支えなくてはならない。

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