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錬金術師の傭兵団 ~古強者は死に場所を求めて世界戦争に再臨する~  作者: 結城 からく


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第50話 英雄宣言⑥

 勝敗の決した刃影軍を見て俺は頷く。

 魔導器を捨てた兵士達が、呪槍を前に降伏を示していた。


(戦意を喪失したな。もう大丈夫だ)


 恐怖は病のように感染していく。

 一旦勢いを付けると、もはや誰にも止めることができない。

 己の死という未来を仄めかされれば、常人が冷静に振る舞うのは困難である。

 呪槍の餌食になりたくないと考えるのは当然の思考と言えよう。


 ミハエルは残る兵士にも降伏を促している。

 その間も不意の攻撃に備えて警戒心を高めていた。

 勝利に酔い痴れることなく、為すべきことを進められている。


 新たな槍使いの姿に、俺は正直な感想を洩らす。


「悪くなかったな。荒削りだが光るところがある」


「アッシュ様は優しいですね。これくらい無傷で勝てとおっしゃってもいいですのに」


「孤軍奮闘で敵を殺さずに乗り切ったんだ。上出来だろう」


 呪槍の適性を確認することもできた。

 課題点はあれど、強いて追及するほどではない。

 大きな損害を受けずに目的を達成したのだから褒め称えるべきである。


 ミハエルは周囲の兵士に何事かを話し始めた。

 どうやら戦いで中断していた説得を再開したらしい。

 怯える兵士に対して落ち着いて語りかけている。


「このまま敗走を許さず、統率する気か。面白い発想だ」


「上手くいくのでしょうか」


「本人次第だな。戦いでの勝利を活かすには、言葉の力が必要になる」


 武力で圧倒すればいい話でもない。

 この先は話術と求心力が必須になってくる。

 今のミハエルの資質を問われる場面であった。


 ミハエルは両手を広げて述べる。


「俺は英雄だ。国が見栄を張るためのお飾りじゃない。自由を愛し、誇りを懸けて戦う英雄でありたい。それを王に伝えねばならない。皆もついてきてくれ」


 兵士が沸いた。

 畏敬と歓声がない交ぜになって爆発する。

 決して上等な語りではなく、むしろあっさりとした内容だったが、ミハエルの全身全霊が込められていた。

 故に魂を揺さぶる。

 未熟なミハエルの格が熱狂によって引き上げられていく。


 遠くから見守る俺は小さく拍手を打つ。


「英雄宣言か。粋な演出をしてくれる」


「面白いですわね、彼」


「そうだな。まだまだ成長する余地がある。逆境を糧にできるのは立派な才能だ」


 先代"呪槍"レドウィンの判断は正しかった。

 彼はこの将来性を見据えていたのだ。

 だから悔いを晴らした己を犠牲にしてミハエルに力を託した。

 過去の英雄の遺志は、現代の英雄の標となって道を照らしている。

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