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錬金術師の傭兵団 ~古強者は死に場所を求めて世界戦争に再臨する~  作者: 結城 からく


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第49話 英雄宣言⑤

 刃影軍の攻撃は苛烈だった。

 影を用いた攻撃――矢と蛇の二種類を射程に合わせて切り替えている。

 ミハエルの接近に合わせて影の盾も展開されていることから、正確には三種の術を準備していたようだ。


 一般的な魔導器に仕込める術は二種類までである。

 つまり三種の術は、人員ごとに別の魔導器を所持することで成立させているのだろう。

 陣形に合わせて使用し、状況に応じた戦い方ができるように工夫したのだ。


 巨大な影の槍を使ってこないのは、俺達の拠点を襲った際に完封されたからと思われる。

 一撃を重視した術は対処された際に危険だと判断したに違いない。

 別に矢でも蛇でも変わらないのだが、向こうは俺の正確な能力を知らない。

 どのみち魔導器に頼った攻撃しかできないため、今回のような戦法を選んだらしい。


「うおおおおおぉぉぉっ!」


 ミハエルは影の蛇を切り進む。

 血だらけになっても再生力に任せて突破し、そのまま刃影軍に跳びかかった。

 並べられた影の盾を蹴り倒し、呪槍で薙ぎ払って防御を崩していく。


(負傷を気にせずに突っ込めるのは大きい。死への恐怖を克服することで、攻撃がさらに冴え渡る)


 ミハエルは発展途上の戦士だ。

 不完全ではあるものの、一方で未知の成長性を秘めている。

 ようやく立場から解放された彼は、新たな一歩を踏み出そうとしていた。


 俺は魔術で視力強化し、ミハエルと刃影軍の攻防を観察する。

 正面から挑むミハエルは次々と兵士を打ち倒していく。

 身体強化による殴打や蹴り、呪槍の石突きを駆使した気絶や骨折で無力化する。

 傷を負いながらも果敢に攻め立てていた。


「すごいな。殺さずにやり通すつもりか」


「甘いですわね。見せしめで犠牲者を出す方が手っ取り早いでしょうに」


「本人なりのこだわりだろう。俺達が口出しすることではない」


 俺もユエルと同意見だ。

 しかし、ここはミハエルの戦場である。

 すべては本人の責任に尽きる。

 いわば乗り越えるべき試練だった。


 ミハエルは四方八方から襲い来る兵士を薙ぎ倒しながら叫ぶ。


「聞け! これ以上は抵抗するなッ! もう容赦はしないぞ!」


 鬼気迫る勢いに加えて、呪槍から放たれる禍々しい魔力が周囲を赤黒く染める。

 恐ろしい光景によって兵士の勢いが徐々に衰えていく。

 そもそも間合いを詰められた時点で勝ち目がなく、至近距離から影の矢や蛇を飛ばしてもミハエルは一向に倒れない。

 目の前で仲間達が滅多打ちにされている状況で士気が上がるはずもなかった。


 加速度的に猛威を振るうミハエルを前に、兵士達は一人、また一人と降伏を始める。

 敗北の波は瞬く間に波及し、やがて戦場は沈静化していった。

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