第48話 英雄宣言④
呪槍の一閃が影の矢をまとめて薙ぎ払う。
生み出した隙を利用して、ミハエルが勢いよく駆け出した。
「ここで待っていてくれ! なんとか止めてくる!」
「分かった、頼んだぞ」
ミハエルは刃影軍もとへ接近しつつ、停戦を求める説得を強行する。
絶えず襲いかかる影の矢を凌ぎながら叫んでいた。
「やめろ! 争う気はないんだッ!」
影刃軍は攻撃を繰り返す。
ミハエルの言葉は届いているだろうが、それでも魔導器による射撃を行っている。
兵士達からは恐怖と憎悪を感じる。
その反応から察するに、ミハエルが国を離れることは周知されているようだ。
おそらくは根も葉もない噂も加えて流れているのだろう。
故に向こうからすると、ミハエルは邪悪な反逆者であった。
説得を聞かないのも当然の反応だ。
降り注ぐ影の矢が鬱陶しいので、地形操作で土の天井を作って防ぐ。
さすがのミハエルも、遠距離から俺達を守れるほどの技能はない。
徐々に刃影軍へと詰める彼の背中を見て、俺はユエルに指示を送った。
「しばらく様子見するぞ。英雄ミハエルのお手並み拝見といこう」
「承知しました」
これはミハエルの試練だ。
よほどの事態にならない限りは援護するつもりはない。
何より彼自身が任せろと言ったのだから、それを信じるのが俺達の責務であろう。
突進するミハエルに影の攻撃が雪崩れ込む。
矢では通用しないと判断したのか、今度は大地を這う無数の蛇となって襲いかかっていった。
影の蛇は不規則にうねり、緩急をつけた動きで進んでいく。
あまりの密度で足の踏み場もない状態となっていた。
そこにミハエルは躊躇いなく跳び込む。
呪槍の連撃で無理やり進路を切り開いていった。
千切れ飛ぶ蛇に噛まれるも、気にせずに攻撃を繰り出している。
多少の傷は許容し、一気に突破することを決めたらしい。
俺はミハエルの戦いぶりを分析する。
体内を巡る魔力は活性化し、高速で傷を治癒していた。
時間経過と共に動きの冴えが向上している。
(呪槍と完璧に適合している……ひょっとするとレドウィン以上か?)
先代の使い手であるレドウィンは、呪槍による攻撃を毒のように扱っていた。
或いは突き刺して相手の魂を引きずり出して喰らう。
一連の戦法から自他ともに認める攻撃型の槍使いであった。
対するミハエルは防御型に該当する戦士だ。
生死の狭間から呪槍との一体化で蘇生した彼は、新たに再生能力を獲得している。
魂の結びつきも強固であるため、不死性という観点ではレドウィンを凌駕していた。




