第45話 傭兵宣言①
その後、俺達は拠点内の城に集合した。
来客用の一室で俺は端的に発表する。
「次代の"呪槍"ミハエルは傭兵団に加入することになった。今後は俺達の仲間として活動してもらう」
目配せするとミハエルは頷いた。
彼は皆の前に立って一礼する。
「若輩者だがよろしく頼む」
真っ先に反応したのはミザリアだった。
彼女は疑念を隠さずに指摘する。
「あんたは刃影国の英雄だろう。勝手に決めていいのかい」
「知ったことではない。俺は国を捨てる。受け継いだ遺志の方が遥かに重い。国に恩はあるが、所属したままでは英雄らしく生きることができない」
「フッ、相当な覚悟だねえ」
ミザリアは小さく笑う。
それ以上は何も言わないのは、ミハエルの心意気を認めたからだろう。
俺は残る二人に問いかける。
「ユエルとシュアは何か意見はあるか」
「特にありませんわ。アッシュ様との仲を邪魔されなければどうでもいいです」
「仲間、歓迎」
反応はそれぞれだが異論はないようだ。
基本的に英雄とは個人主義である。
周囲から持て囃されるものの、なれ合いが無くとも生きていける者ばかりだ。
別に傭兵団に誰が加入しようと構わないのだった。
とにかく反対意見はなさそうなので、俺はそのまま話をまとめようとする。
するとミハエルが挙手をした。
「待ってくれ。国を捨てると決めたが、離反することは報告しておきたい」
「正気かい。向こうが素直に承諾するとでも?」
「無理だろうな。だけど直接伝えるつもりだ。それだけの義理はある」
ミハエルの表情からして、諦めるつもりはないらしい。
俺は嘆息してから名乗り出る。
「俺も報告とやらに付いて行こう。刃影国はこの拠点を奪おうとした。ついでに抗議したい」
「……本格的な争いになるよ」
ミザリアは呆れて肩をすくめた。
俺は首を振って答える。
「構わないさ。どうせミハエルが報告した時点で戦闘になる。護衛役が必要だろう」
「俺は一人でも負けない」
ミハエルが断言するも、その双眸は未熟な者のそれである。
能力や精神性は立派な英雄だが、経験値が圧倒的に足りていない。
だから俺は落ち着いた声音で諭す。
「自信があるのは良い。だが、状況を甘く見るな。お前のような武人は搦め手に弱い。いくら戦闘能力で圧倒しても、魔術にやられることは珍しくない」
「それは……」
「俺のような人間がそばにいるだけで搦め手への対策ができるぞ。孤軍奮闘が傭兵団の方針だが、そこまでのお膳立ては勘定に入らないだろう」
淡々と説明すると、ミハエルは何も言わなくなる。
ひとまず納得したようだ。
逸る気持ちは分かるものの、ここは堪えて冷静に動いてもらおうと思う。




