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錬金術師の傭兵団 ~古強者は死に場所を求めて世界戦争に再臨する~  作者: 結城 からく


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第42話 槍の英雄⑤

 レドウィンは果敢に攻撃を仕掛けていく。

 豪快かつ繊細な動きは、歴戦の英雄の名に恥じない鋭さがある。

 "不戦"の蔑称も霞むだけの迫力と強さを伴っていた。

 愛用の呪槍には治癒困難の力があるため、削り合いに持ち込めば圧倒的に有利だ。

 彼自身の技量も相まって避けがたい脅威となっている。


 一方、ミハエルの槍捌きは堅実であった。

 防御主体で僅かな隙を縫うように反撃を織り交ぜている。

 レドウィンの攻撃に追いやられながらも、必死に互角以上の戦いに持ち込んでいるようだ。

 得物の槍に呪槍のような特殊能力はないが、ミハエルの身体強化が反映することで優るとも劣らない力を実現させている。

 純粋な破壊力ならばレドウィンを凌駕するだろう。


 二人の槍使いによる戦いは拮抗した展開が続く。

 絶技の応酬が高速で行われている。

 もはやどちらが勝利するか予想も付かなかった。


(現代にもこれだけの強者がいたのか……)


 俺はミハエルの戦いぶりに感心する。

 傭兵団の計画を進めることを最優先しており、各国の内部事情は詳しく調べていなかった。

 魔導器を使った兵力が主流で英雄を否定する中、まさかこれだけの傑物が生まれるとは。

 才能に依存した強さではない。

 あれは地道な努力の賜物である。


「お前も、居場所がない人間なのか……」


 これだけの実力を持っていながら、ミハエルの周囲では敵も味方も魔導器を使う。

 彼自身、士気を上げるためのお飾りとして扱われている。

 当然ながら満足できるはずがない。

 ミハエルにとっても、今この瞬間は貴重な体験だろう。


 俺が考えている間もミハエルは決死の表情で猛攻を繰り広げる。

 消耗戦は厳しいと判断して、防御主体から切り替えたらしい。

 限界を超えた速度で突きを放っている。


 レドウィンは歓喜し、呪槍を回して応じてみせる。

 それでも細かな傷が手足に増えていくのは、あまりの攻撃速度に対処し切れていないからだ。

 己の負傷にも臆せずレドウィンは冷静に勝機を窺っていた。


 俺は二人を無言で見守る。

 どのような結果でも本人達が望んだことだ。

 第三者が介入するのは野暮であろう。


 やがて戦いは最終局面に至った。

 レドウィンは澄ました顔だが、脇腹に大きな裂傷を負っている。

 呪槍に込められた魔力も少なくなり、彼の余力が尽きようとしていることを表していた。


 対するミハエルも無事ではない。

 全身各所に付けられた細かな傷が紫色になって脈動している。

 呪槍の効果で常に体力を吸収される上、血も止まらないのである。


 互いに瀕死で長くは戦えない状態だ。

 全力で命のやり取りをしているのだから、むしろまだ立っていられるのが不思議なほどであった。


 睨み合う彼らが同時に駆け出す。

 残る力を振り絞って刺突を打ち放った。

 刹那、血飛沫が跳ねる。

 呪槍の切っ先がミハエルの胸を貫いていた。

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