第33話 不埒な来訪者①
ブラハとの話を終えて城を出る。
街へと繋がる道の只中にシュアが立っていた。
俺は気さくに声をかける。
「調子はどうだ」
「状態、良好……大幅な強化を実感」
シュアはどことなく得意げに両手を広げてみせる。
外見に大きな変化はないものの、魔術的な観点ではほとんど別物にまで変貌していた。
最初に戦った時とは魔力の質量が段違いである。
改めて感心していると、背後からブラハの大声が飛んできた。
「当然だろう! わしが丹念に改造したんだからな!」
ブラハはシュアの背中を遠慮なく叩く。
そして流暢に性能の自慢をし始めた。
「旧型の術式と最新の魔導器を両立させた唯一無二の構造になっている! 拠点防衛が専門と聞いたから、魔力汚染下で最大の力を発揮できるように調整しておいたぞ!」
「さすがだな。この仕組みを瞬時に閃いたのか」
「樹海制圧の時に思い付いた案だ! ちょうどいいゴーレムができたら導入しようと考えていてな! シュアがいてくれて計画が早まったわけだ!」
運搬用の木造ゴーレムを量産していることから分かる通り、ブラハは魔術生物の分野にも詳しい。
その知識は専門家すらも軽く凌ぎ、他系統の技術を取り入れることで独自の発明を可能にする。
仮に彼が戦争ではなく人々のために才能を活かせば、文明が数倍の速度で進むと思われる。
そんなブラハはシュアの頭を撫でながら説明をする。
「大きな機能としては、拠点内の設備を操作できる権限を追加した! 念じるだけで自在に動かせるぞ!」
シュアは両手を緩く開いて前に出す。
それを合図に設置された結界や認識阻害が発動した。
建造物も変形して外からの攻撃を遮るような盾になる。
俺は何もしていない。
すべてシュアの新機能によるものだった。
「すごいな。シュアにぴったりの能力じゃないか」
「感激……」
呟いたシュアは都市内の設備を次々と動かす。
使い方を確かめているようだが、実際は純粋に楽しんでいるのだろう。
長年に渡ってこの地を守ってきたシュアにとって、新たな機能は待望のものだったに違いない。
本人の願いに寄り添った力となっていた。
当のブラハは都市を見回して笑う。
「がっはっはっは! これでも手加減をしているのだからな? お前さんの希望がなければ、この百倍の規模の戦力でも用意したというのに!」
「すべての国を敵に回す気か?」
「ふむ。それも悪くないな! 退屈しない戦争ができそうだ!」
ブラハの目が爛々としたのを見計らったかのように、残る二人の英雄が俺達のもとに歩いてくる。
「その発明爺はちゃんと監視しておきなよ。放っておくと大陸を消し飛ばしかねないからねえ」
「珍しく意見が合いましたね。私も"砲王"は厳重に見張っておくべきかと」
ミザリアはユエルは、冷ややかな視線をブラハに向ける。
ブラハは臆せずに二人を指差した。
「わしに言わせれば、お前さん達も大概だぞ!」
「ハッ、心外だね。あんたと一緒にしないでおくれ」
「不快です……そろそろ立場を分からせねばなりませんか」
三人の英雄は身構えて火花を散らす。
今にも殺し合いが勃発しそうだ。
俺とシュアは顔を見合わせると、ひとまず彼らを止めにかかることにした。




