第27話 砲王の提案①
数日後、俺達はブラハのいる樹海へと訪れた。
守護ゴーレムのシュアの整備をしてもらうためだ。
シュアは拠点の都市を離れることを嫌がったが、なんとか説得して同行させた。
不在中に第三者から占領されることを恐れたのだろう。
だから俺とミザリアとユエルの三人で防衛用の術をしっかりと施してきた。
いかなる精鋭軍だろうと、無策で近付けば崩壊するような守りだ。
万が一のために俺の片目の視覚も置いてきたので、あの拠点が危険に晒されることはまずない。
未だ焦土の目立つ樹海の只中には、木造の巨大な建造物がいくつもそびえ立っていた。
その一角で豪快な笑い声が響き渡る。
「がはははははは! 良い造りをしとるじゃないか! さすがは青炎国の守護ゴーレムだ! こいつは改造のし甲斐があるわい!」
白髪混じりの髪を揺らして言うのはブラハだ。
様々な道具を使ってシュアの内部を点検している。
彼の装着するゴーグルは多彩な機能を備えており、それで詳細な構造や情報を得ているのだろう。
されるがままのシュアは、心なしか震えた音声を発する。
「き、危険察知、反応……」
「怯えなくていい。ブラハは世界一の技術者だ。俺より上手く修理できる」
「そうだぞ! 安心してわしに任せておけ! 旧型から最新のその先へと導いてやろう!」
ブラハは拳を突き上げて宣言する。
ゴーグル越しに覗くぎらついた目は微妙に焦点が合っていない。
力強い言葉だからこそ不安を煽ってくる。
シュアには怯えなくてもいいと言ったが、さすがに同情せざるを得なかった。
俺はブラハに忠告をする。
「くれぐれも自我は弄らないでくれ。シュアも死に損なった大戦の英雄だ。本人の意志は消したくない」
「みなまで言うな。わしを誰だと思っとる。心配せんでも余計なことはしない。独りよがりな改造は相手への侮辱になるでな」
「……お前はいつも独りよがりな気がするが」
「がっはっはっは! そういえばそうだったわい!」
ブラハは額を叩いて笑う。
やり取りを眺めていたミザリアが迷惑そうにぼやいた。
「相変わらずうるさい爺さんだね」
「そういうお前さんは絶世の美女のままだな! 幻とは思えないほど良い尻だ!」
「……腐りかけのアンデッドにしてやろうかい?」
「上等だとも! 寿命に縛られなければ、いつまでも兵器開発ができるからな!」
ブラハは意気揚々と答える。
脅しも通じず、ミザリアは不機嫌そうに目を背けた。
ちなみにブラハのゴーグルには、魂を感知する機能がある。
それによってミザリアと会話ができるのだ。
あらゆる面で問題人物だが、腕前だけは超一流の発明家。
それが"砲王"ブラハという男だった。




