第21話 傭兵団の拠点③
ゴーレムの性能を考察する俺は、険しい顔のミザリアに言う。
「三屍神より破壊力が高いんじゃないか……?
「馬鹿を言うんじゃないよ。あの鉄屑は魔力汚染があるから粋がれるのさ。さっさと潰しちまいな」
ミザリアに背中を蹴られた。
幻影なのでもちろん痛くないが、彼女の怒りがしっかりと伝わってきた。
交換した一部の魂が反応しているのだろう。
俺は駆け出しながらユエルに指示をする。
「援護を頼むぞ」
「承知しましたわ!」
中距離以上での戦闘は熱線が飛んでくる。
対抗できないこともないがやや面倒だ。
相手は魔力に依存するゴーレムなので、直接触れて外部からの魔力供給を断つのが最適だろう。
接近する俺に対し、ゴーレムは熱線を連続で放つ。
俺は結界を盾にするも、撃ち抜かれた挙句に肉体を抉られた。
皮膚と肉が焼ける音と臭いがする。
しかし貫通までは至っておらず、立ち止まるほどではない。
重傷には違いないが、先ほどよりは大幅に威力が減退していた。
ゴーレムの不調ではない。
俺の魔力吸収が効いている証拠だ。
最初の一撃で分析し、命中時の威力を削ぐことに成功したのである。
魔力の性質が明らかになるほど、俺への攻撃は効きづらくなる。
ここからさらに有利になっていくはずだ。
それでも構わずに熱線を発射するゴーレムだったが、突如として動きが鈍くなった。
さらには体勢を崩して転倒し、空に向かって熱線を乱射し始める。
手足が地面を掻くも、上手く立ち上がれないようだった。
俺は一瞬だけ後方を見やる。
ユエルが両手をかざして立っていた。
彼女は規則的な魔力の波動を帯びている。
それはちょうどゴーレムと同質のものであった。
聖女ユエルの能力は共鳴だ。
己の魔力を調整し、相手に合わせることで同質の感覚を得られるのである。
相手の魔力が高まれば自分も呼応して力を発揮する。
ユエルはこの特性を逆手に取り、同調した状態で己の魔力を少しずつ歪め、相手の魔力も乱すことができるのだ。
最初は自分から共鳴しておきながら、最終的には相手を強制的に共鳴させる。
聖女の名に反した悪質な術者であった。
ユエルの能力によってゴーレムは混乱している。
攻撃を仕掛ける絶好の機会だろう。
俺で無刃剣で真っ向から斬りかかる。
倒れていたゴーレムは瞬時に両手を伸ばし、手のひらで魔力の刃を挟んで止めた。
紙一重のところで斬撃はゴーレムに達していない。
「えっ」
俺は予想外の状況に困惑する。
次の瞬間、ゴーレムの強烈な前蹴りが鳩尾に入った。




