第106話 新たな道へ⑦
最終話です。
俺達は今後について話し合いを行う。
それぞれ立場と力を持つ者同士だ。
情報や意見を交換する機会を定期的に設けているのである。
特に戦争の方向性を定めるのに一役買っていた。
話の途中、ミザリアは思い出したように言う。
「そういえば、あの武器が完成したと聞いたけど持ってきたのかい?」
「ああ、一応見せておきたくてな」
俺は亜空間から長剣を取り出す。
その剣の刃は漆黒だった。
鈍い艶があり、仄かに魔力を帯びている。
使い手の魔力を流すことで浸透し、さらなる切れ味を発揮するだろう。
剣に装飾は一切なく、実用性だけを重視した見た目をしている。
目利きのできる商人ならば、どれほどの価値を秘めるか理解し、そして畏怖の情を抱くに違いない。
それほどまでの武器だった。
この長剣は魔導器だ。
風化したベイドの死体を錬金術で集め、彼の長剣に仕込んだものである。
俺は長剣をユエルに差し出す。
「この剣を英雄国の象徴にしてくれ。ベイドの奴も喜ぶだろう」
「承知しました。責任を持って預からせていただきますわ」
ユエルは丁重に受け取った。
英雄国はベイドの遺志を継いでいる。
長剣を保管するのに適しているだろう。
少なくとも俺が持っておくよりはベイドも納得するはずだ。
まあ、そもそも魔導器にすること自体に反対かもしれないが。
ミザリアは意味ありげな視線を向けてくる。
「亡き弟子への気遣いとはね」
「そうじゃない。これは過去の清算と戒めだ」
反論しようとしたその時、部下から念話が届いた。
俺は意識を切り替えて報告を聞く。
念話を終えたところでミハエルが尋ねる。
「何かあったのか」
「新しい戦争だ。傭兵団に宣戦布告があったらしい」
それを聞いたミハエルは戦意を漲らせる。
呪槍の力が静かに昂っていくのが伝わってきた。
ミハエルは椅子から立ち上がって笑う。
「久々に最前線で戦うか」
「いいじゃないか。俺も一緒に行こう」
話し合いも終わったので、帰還したらさっそく戦争の準備をしよう。
やるべきことは山のようにある。
部隊の編成や作戦を考えなくてはならない。
頭の中で整理していると、ミザリアが俺の肩に手を置いた。
彼女は片目を閉じて言う。
「今度こそ死ねるといいね」
「まあな。こればかりは運命に身を委ねるしかない」
俺だっていつかは死ぬ。
戦いの中で敵わない相手と遭遇し、全力を尽くした末に敗れるのだろう。
それが具体的に何年後かは分からない。
だからこそ、進み続けるのだ。
英雄達に理想の死を。
これには俺自身も含まれている。
いずれ訪れる最期まで、この戦争を謳歌しようと思う。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
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