第104話 新たな道へ⑤
新たな酒を取り出したミザリアは、思い出したように話題を変える。
「傭兵団の調子はどうなんだい。相変わらず派手に暴れているそうだけど」
「まずまずだな。育成した端から死んでいくから忙しい。あと何人か指導役が欲しいところだ」
ベイドの死後、俺は傭兵団の拡張を進めた。
新たな戦争のために団員を募集し、戦力の充実を図ったのである。
戦いの中で死にたい者は現代にも確かに存在する。
それも力を持つ英雄だけでなく、無名の一般兵も少なくない反応を示した。
たとえ無惨な死を遂げようとも何か残したい……そう考える者は俺の予想以上に多かったのだ。
彼らは熱に浮かされたように傭兵団のもとへ訪ねてきた。
結果、傭兵団の人員は一万人を優に超える。
ミザリアに話した通り、次々と戦死するので規模感は安定しないが、それを凌駕する勢いで入団希望者が現れるのであまり関係なかった。
団員に指導するのは殺すための戦闘技術だ。
生還は度外視しているため、一般的な訓練とは内容が異なってくる。
英雄でない人間が増えたので"一騎当千"の掟は廃止されたが、それでも他人任せな戦い方をする者はいない。
誰もが全力で挑み、華々しい勝利を手にするか死んでいく。
傭兵団の何割かは騎士国の人間で構成されていた。
ベイドの遺言により、俺の配下になるように命令されていたらしい。
自らが敗北する展開も考えていたのだろう。
なんとも用意周到な男である。
騎士国の人間も扱いとしては他の団員と変わらない。
彼らも戦いの中での死を求めており、この七年で大半がいなくなった。
生き延びた実力者は、ミハエルと共に傭兵団の指導役を担っている。
縁があれば、いずれ彼らも仲間の後を追うことになる。
俺は微笑してユエルに告げる。
「いずれ英雄国にも宣戦布告をするつもりだ」
「ええ、お待ちしておりますわ。最大戦力で歓迎いたしましょう」
ユエルは優雅に一礼する。
彼女の英雄国はこの上ない強敵だ。
死にたがりの戦争狂が揃う傭兵団にとって、絶対に見逃せない相手である。
地理的な関係で全面戦争には至っていないが、どこかで挑まねばならないだろう。
その時に備えて、こちらも訓練を進めていきたいと思う。
来たる戦争を想像して胸を躍らせていると、ミザリアが呆れたようにぼやく。
「別にいくら戦おうと勝手だけど、修道院を巻き込まないでおくれよ」
「分かっている」
「当然ですわ」
俺とユエルは同時に応える。
ミザリアは面倒そうに嘆息し、それから酒瓶を開けた。




