第103話 新たな道へ④
ブラハは騎士国との戦いで死んだ。
ところが彼は予め対策を打っていた。
自らの魂を魔術的な手段で分離し、樹海で培養していたのである。
肉体的な死を迎えたブラハは、培養した魂をゴーレムに移すことで復活した。
この仕組みを用いれば、半永久的に活動できてしまう。
ついに人間をやめたわけだが別に違和感はなかった。
いつかそこまで踏み込むだろうとは思っていた。
現在も樹海はブラハに占拠されている。
各国と提携し、軍事力の向上に勤しんでいた。
ブラハとしては戦争がしたいのだろうが、周辺国が諦めているので戦いは起きない。
どこも勝ち目がないと判断し、友好的な関係を築こうとしているのだ。
そのせいで樹海のある地域だけが平穏な状態となっていた。
このままでは戦争ができないと思ったブラハは、最近では次元の壁を破壊する方法を模索中だ。
話を聞いたところ、別世界と繋げて新たな戦争を始めるらしい。
なんとも現実離れした目標だが、既に彼は現代文明を超越した技術力を有している。
成功させる日は案外近いのかもしれない。
何にしても大それた計画だ。
まあ、この世界に迷惑がかからなければ問題ない。
ブラハなら支障なくやり遂げるだろう。
いずれ別世界へ旅立ってしまうが、それはそれで別にいいのではないか。
元よりブラハの行動を制御できるとは思っていない。
とりあえずブラハが破壊した壁の穴を地形操作塞いでおく。
豪快に登場したブラハに対し、子供達は大盛り上がりであった。
見知った仲のようでしっかり懐いている。
ブラハは得意げに発明品を見せており、それがまた印象を良くしているようだ。
祖父と孫のような関係性である。
ブラハの狂気的な面を知らなければ実に平和的な光景だった。
俺は小さくため息を吐いてから部屋を出る。
「三人とも後でこっちに来てくれ。今後の話し合いをしたい」
それだけ伝えてからミザリアとユエルの待つ部屋に戻った。
ミザリアは空の酒瓶を足元に置きながら笑う。
「世話係がいると助けるねえ。用心棒にもできるのがいい」
「過剰戦力だろう……あいつらを倒すには軍隊が必要だ」
ミザリアだけでも十分だというに、今の修道院の防衛力は世界有数と言えるほどに堅牢である。
普段はいないミハエルとブラハを抜きに考えても、優れた性能を持つシュアがいるのだ。
一応、樹海との転移装置もあるので、緊急事態の際はブラハを要請することもできる。
ここに暮らす子供達が危険に晒されることは絶対にないだろう。




