第8話 ダンジョンに行ってみる……①
祐樹は昨日買ったばかりの装備に身を包み都心から離れた山にあるダンジョンに来ていた。ネット情報によると5階層までしかない洞窟型で、襲って来る魔物はゴブリンのみ、コアの手前にあるボス部屋に進化種であるホブゴブリンがいるだけで簡単にクリアできるそうだ。
いざダンジョンに到着すると警察官のおじさんが入り口横にある小さな小屋からこちらを見ていた。
「こんにちは。ここのダンジョンに挑戦しに来ました」
「こんにちは。カードとバッジを見せてくれるかな?へぇ~16歳か。君みたいな少年も立派な冒険者なんだね。ダンジョンは危ないから気をつけるんだよ」
おじさんは冒険者カードの年齢を見て驚いた。こんな若い少年も危険なダンジョンに飛び込むのかと。
「ありがとうございます。それはそうとの辺りで冒険者らしき人を一人も見かけなかったんですけど、ここのダンジョンに冒険者の方は滅多に来ないんですか?」
この場所に来るまで同業者がいなかったので聞いてみた。
「そりゃあね。このダンジョンが山奥にあるって言うのも人がいない理由のひとつなんだろうけど、なんせゴブリンしかいないからドロップアイテムも対してお金にならない物しか落ちないから時間の無駄だってことでみんな来ないんだよ。でも、時々君みたいに初心者セットを身に着けた冒険者になりたての子が力試しで来るんだよ。今日は君だけしか来てないけど」
「そうなんですか。教えてくれてありがとうございます。そろそろダンジョンに行ってきます」
誰にも見られずスキルの実験もしたかったからラッキーと内心思っていた。これなら人目を気にせずスキルを使うことができるからね。
「頑張れよ」
おじさんは祐樹の姿が見えなくなるまで手を振って見送ってくれた。
ダンジョンの洞窟の中は一定の間隔で松明の明かりで照らされており意外と明るかい。少し進むと初ゴブリンとエンカウントした。
まず祐樹は近くにあった岩陰に身を潜めて様子を見ることにする。ゴブリンは祐樹の存在に気が付いておらず、石を積み上げて遊んでいた。
「うわ~生ゴブリンじゃん。鳴き声本当にゴブゴブって言ってる」
ラノベから飛び出てきたファンタジーの住人を生で見て興奮していた。肌が緑色で茶色い腰布を巻いて棍棒を持っていた。
「でも、ゴブリンと戦うの不安だな。小説では弱いみたいな扱いが多いけど実際はどうなんだろ?よし鑑定してみるか……」
種族 ゴブリン
レベル 2
HP 10
MP 0
物攻 11
魔攻 0
防御 8
スキル
棍棒術Lv.1
「一応鑑定してみたけど。本当に弱いわ」
人ではないとはいえ生き物を殺すのだ。抵抗が無いわけではないが、ここまで来たのだ。やるしかないと自分に言い聞かせて一気に岩陰から飛び出してゴブリンの心臓目掛けて剣を突き刺す。ゴブリンも祐樹の足音に気が付いたときには、心臓に剣が刺さっていた。そして、死んだゴブリンの体がキラキラと光って消滅し魔石と耳が残った。
「倒されても血が出ないで消滅してくれるから意外と抵抗ないかも。それでこれがドロップアイテムか」
ダンジョン内で魔物を倒しても解体する必要が無いのはありがたかった。だって、解体作業の経験もないし、少しグロい。
取り敢えずこの二つはカバンに仕舞ってスキルを確認してみる。すると目の前に透明な画面が現れた。画面にはつい先倒したゴブリンが記されていた。
「これでこいつを呼び出すにはモンスターを選択して召喚をタッチすればいいんだな」
すると目の前にゴブリンが現れた。こいつが召喚者の言うことを聞くのか不明なため命令してみる。反撃されでもしたらシャレにならないからな……。
「俺の言葉分かる?分かるなら右手を上にあげてくれ」
ゴブリンは右腕を上げてくれた。
「へぇ~スキルで呼び出した魔物は賢いんだな。次はお前の実力を見たい。ゴブリンを見つけたら戦ってみてくれ」
先見たゴブリンに知性がある生き物には見えなかったので、目の前にいるこいつとは大きな違いがある。
『ゴブ、ゴブ』
ゴブリンは祐樹の前を歩いて奥へと進んでいくとゴブリンを見つけた。
ゴブリンは棍棒を振り上げて思いっきり殴り掛かった。初撃は頭に入って脳震盪にでもなったのかフラフラして襲ってこないゴブリンを7,8発殴り続けて消滅した。
「よし、よくやった。同族だし、抵抗あるかなって思ったけど意外とそうでもないんだな。まぁ、仲間も増えたことだしこのままボス部屋まで一気に行くぞ」
『ゴブ!』「ゴブ!』
新たに加わったゴブ一とゴブ次と名前を付けたこいつらを連れてボス部屋まで一気に向かった。