ユニークな作文シリーズ その7 Gちゃんのこと
1990年ごろの、北九州の町はずれの、実業高校の、女子クラスの雰囲気が、よくわかる作文だと思うのですが、いかがでしょうか。
見た目は、やさしく、おとなしそうに見えます。ぽっちゃり型で、色白で、目もぱっちりしていて、笑うと歯が見えて、すごくかわいいなあと思っていました。入学式の時なんか、特にそう思いました。ところが、なれてくると、第一印象とはちがい、よくしゃべります。あの、かわいいと思った八重歯が、じゃまそうに見えます。笑いすぎて口がかわいた時、口をとじようとすると、八重歯がじゃまになって、顔全体がゆがんでしまうのです。自分も安産型のくせに、私のことを安産型と言って、走って逃げます。とにかく、悪口を言わせたら日本一。それでいて、こっちがおこれないというところが、また、くやしいのです。
Gちゃんの口ぐせは、大きなおせわと、変なのと、私のことが好きなんやないん? です。最後のセリフは、いつも、O先生に言っています。
目があまりよくなくて、うしろの席だと、めがねなしには黒板の字が見えません。それをいいことに、時々、自分がノートをしたくない時など、先生に、めがねを忘れたけ書けん、という理屈をならべて、ノートをさぼります。
Gちゃんがおこった時は、私たちが何回話しかけても、知らんちゃ、しか言いません。歩き方にも特ちょうがあります。背すじをのばし、お尻をうしろに、ぷりっとつきだした感じで、少し不良っぽく、ゆっくり歩きます。
私もやせたいと思っていますが、Gちゃんも、今、やせようとしています。でも、よく食べています。
Gちゃんは、せいかんたいも多いようです。特に、ひざが弱いみたいで、ちょっとかるくさわっても、体をよじらせて笑います。歯をむきだして笑います。あんまりこちょぐりすぎると、少しむっとした顔にかわります。そこがまた、おもしろいのです。
はがいいことに、Gちゃんには彼氏がいます。その上、すごく仲がよくて、私たちに見せびらかします。よく手紙を書いています。彼氏からの手紙を私たちみんなに見せてくれます。内容は、ここには書けませんが、とてもうらやましいことが書いてありました。
Gちゃんは、その手紙を何回も何回も読みなおしていました。それも授業中に……………。その時の顔は、
ニヤケていて見られたものじゃありません。それでも、ちょっとだけ、かわゆいな、というところもありました。
書いた生徒も、書かれた生徒も、純朴そのもの、という感じがしませんか?
こういう所に、昔、身を置いていたということは、私としては、ラッキーなことであったと、しみじみ、なつかしく思われる、お爺さんになりました。