どうしてこうなった?
「グレイプニル。その出自は北欧神話である。
山のような巨狼フェンリル。その狼を捕獲するために北欧の神々は試行に試行を重ね、
幾度の失敗を経てそのグレイプニルを作り出した。そのグレイプニルによって
巨狼フェンリルを捕獲することに成功した。しかしラグナロク、神々の黄昏を迎える頃には
グレイプニルは解き放たれフェンリルは暴れてしまう・・・。
というのがこのリボンの由来さ・・・」
カインはベッドに座って漫画を読みながら言葉を締めた。
「じゃあそのリボンはそのフェンリルを縛ってたんですか?」
宿題をしながら針生戸映一は聞き返した。
カイン「いや、アレはまだフェンリルのリードとされてるよ」
映一「え?でも今・・・」
カイン「神話の話さ。神話の中ではそうなってるが、その中から生まれた俺らのような存在は
その先があるんだ。神々の黄昏だって結局は大げさな身内ゲンカだったんだし。
オーディン様は確かにフェンリルに丸呑みにされたが、あれだってオーディン様が
あまりの可愛がりに身をすり寄せてたらイラっときたフェンリルが咥えちゃっただけなんだから」
映一「そ、そうなんだ・・・」
カイン「だがグレイプニルの完成度は素晴らしいらしくてな。天界はガミジン隊・・・まぁ
警察みたいなもんだがその装備品に支給させたくらいだ。これはその強化版みたいなもんだ」
映一「天界にも警察があるんですね。いい所っぽいのに」
カイン「まぁ主には人間界の警戒だけどな。今回もいっぱいいるよ」
『あいつらのせいでこーなってるんだけどな・・・』ガミジン達のことを思い出したカインは
そう思いながらベッドに寝転がって漫画のページをめくった。
カインから伸びたグレイプニルはそのまま上に伸びる。天井に透き通りながらまだ伸びる。
10mほど上空に、その片方の端で縛られた天使。プリンシパリティが頭を抱えながら叫んでいた。
プリン「・・・な、なんでこうなってるんだ・・・?」
この数時間前、魔界の死神の部署。主任室内。
主任ヘカーテの巨大な机、ヘカーテは巨大なまま机の椅子に座っている。机の上に
フィギュアのようにカインとプリンシパリティが立っている。
プリンシパリティはこの状態のヘカーテを知らずまた、こういう事態に慣れてないのか
唖然という顔をしてヘカーテを見上げている。カインはちょっと面白がっている。
ヘカーテ「・・・はあ・・・まぁお礼を言っておこう。マリア」
そこにいない名前を聞いて驚くプリンシパリティ。きょろきょろするとカインの態度に気づく。
カイン「俺、じゃなくてマリアなんですね・・・」
そう呟きながらカインの手は胸元の宝石を撫でている。プリンシパリティはその宝石の違和感に
少し気づいたようだ。あの宝石のことを言ってるのだろうと。
ヘカーテ「当然だ。マリアの神秘的な力であの現場の物理的霊的な被害は完全に復旧できた。
マリアがいなかったら。と思うとゾっとする」
カイン「マリア=俺ってことには・・・」そのへらついた顔はヘカーテだけでなくプリンシパリティ
もイラっときた。
ゴズッッ!!カインの背後から音もなく近づいた壁にかけられていた大鎌の先端が
カインのいた場所に正確に刺さる。カインは冷や汗を流しながら避けている。グレイプニルは無事だ。
ヘカーテ「なるほど、鎌でグレイプニルを切ろうとしたな?それで怒らせたのか。
お前はこの部屋で何かを企めない・・・。計画して入ってきたな?」
カイン『やっぱ無理か・・・あ!』この部屋では死神達の思考や心は隠し事防止のため
主任には筒抜けになっている。時としてそれを声にして部屋で聞くこともできるのだ。
ヘカーテ「そのグレイプニルは私の魔力とドミニオンとの融合した魔力で縛っている。
そうなると契約満了まで私ですら解けない。切ることも無理だ」
カイン「わかりました・・・あ~あ」カインは残念そうに刺さった大鎌の刃にもたれかかった、
が、もたれかかろうとした大鎌は素早くスルっと抜けて上へ上がった。もたれ損ねたカインは
そのまま尻餅をついた。プリンシパリティは思わず笑みがこぼる。
カイン「なに見てんだよ!プリンちゃん(笑」
プリン「な!貴様今なんと言った!!」
プリンシパリティは一気に赤面し素早い動作で武器を手に構えた。立ち上がり尻をパンパンと
叩きながらカインが言う
カイン「ガミジン達がお前を止めたとき隊長が言葉かんでたろ?その時思いついたんだ。
だいたいプリンシパリティって呼びにくいよな~!13番ってのもなんか味気ないから
俺が名づけてやるよ!プリンで決定な!」
プリン「きっきっ貴様~!なめるなぁ~!!」
渾身のひと振りがカインを襲うがカインは笑いながら躱す。傍から見ると痴話喧嘩だが
片方の殺意は尋常ではない。これ以上やると机がボロボロにされそうだ。と感じたヘカーテは。
ドンッッ!!
おもむろに机を叩いてみた。机の上のものはカイン達を含め一瞬浮かび上がる。
そして着地。道具類はそのまま降りてきたがカインたちはこけた。
ヘカーテ「くだらん喧嘩は後にしろ。報告はほかにある」
二人は立ち上がり睨み合いながらの顔を戻しながらヘカーテに向ける。
ヘカーテ「カイン、今回だけ特例として予定者、針生戸栄一周辺への干渉を許可する」
カイン・プリン !! 驚く二人。当然ではある。
プリンは魔界の存在が人間と関わることを許可するという事に。
カインはまさかの人間と関われるということを主任から許可されたという事に。
ヘカーテ「もちろん、予定者の周辺への影響が極端になった場合は即止める。最悪は殺す。
カイン「何があったんですか?」
ヘカーテ「あの騒動のあと、ガミジンが殺された・・・。 ( 二人 !! )
幸い、針生戸映一に被害、影響はない。彼のものを自宅へ移しレテの水の調整作業中にな」
プリン「脱走者、ですか?」
ヘカーテ「そうだ。報告では脱走させた人間の家とは離れていたはずだが、今調査中とのことだ」
カイン「ってことは針生戸の記憶はあのままってこと・・・なんですね?」
ヘカーテ「うむ。機会を狙ってレテの水を与えるもよし、だが脱走者が人間に危害を加えなかった。
というのも少し気にかかる。調整作業はその家の数m上空でやってたそうだ。
何かしらの捕殺の手段に使えるかもしれない」
カイン「人間を道具に使うんですか?あんま気が乗らないですね」少しムっとしたカイン。
カインの表情は明らかに怒っている。だが何に怒っているのか?今のやり取りの中
何をカインの機嫌を損ねたのか?プリンには今理解できていない。
ヘカーテ「可能性の話だ。お前の死神としての仕事はその者を予定期日まで守ることでもある。
それに加え、脱走者捕殺の依頼を受けている。効率よく仕事を進めるためにも、
あの人間と関わって良い。と、こちらが許可した次第だ。そうすることで依頼を早く終わらせ
そのグレイプニルを解くこともできる。何か不満か?」
カイン『・・・』カインは黙ったまま下がり身を返して扉へと進んだ。
ヘカーテ「・・・その沈黙を答えとする。プリンシパリティは従来通りカイン、
並びに周辺の警護と連絡を。今回の事は二度とないように冷静にな」
プリン「は・・・はい!行ってまいります!」
敬礼した後、回れ右をしてカインの後を追うようにして扉へ。
バタン。二人の出たあと主任は机から離れ、
対面の壁に流れる鮮血の滝のワインをグラスに注ぎ一口含んだ。
ヘカーテ「・・・プリン・・・か。一となれるか・・・そのまま消えるか・・・」
何かを考えながら窓に向かいグラスをまた口へと運んだ。
続きです。ファンタジーものらしくなってきました。
プリンシパリティは今後セリフ時は「プリン」と表記します。
イメージとしてはお姉さん系なんですけどね。




