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天使の殺意

「その存在はその存在である限り存在が許されている」


天魔法典の前文の中にそう書かれている。

カインはもともと悪魔であり死神ではなかった。

もっとも、死神も悪魔に分類されているが、その定義はしっかりしていて死神は他になることも、

他の悪魔が死神になることはない。例外を除いて。

その例外がカインである。例外とは「特別扱い」と取れるがそのほとんどは「異質」である。

カインは死神以前の記憶がなく、記録も残されていない。いや、残ってはいても誰も

その記録を知ることはできないのである。その記録を知るのはごく限られている魔界の上層部の

悪魔、天使、神々と言われているがそれも定かではない。誰もがその事柄そのものを禁忌とし、

触れることすらないからである。カイン本人もそのことを考えようとしても、まるでそうさせないように

意識がそれる。それにはカイン本人の性格も一つの一因かもしれないが、

何かしらの意志が働いているのかもしれない。ともあれここで言いたいのは、カインを含め、

カインの過去を知るものがほとんどいない。ということを知っておいてほしいと言うことです。

んじゃ本編へ・・・。


カインは人間界、とある国のとある町のとある学校の上空にたたずむ。つい先ほどその学校から

カインに向けて攻撃をしてきた悪魔の気配はもうない。悪魔は「消えた」わけではなく「隠れた」のを

カインは知っている。学校の上空にいるのはカインの今回担当する死の予定者がその学校にいるからである。

その予定者の「予定は」まだ一ヶ月以上先で、まだ死神の仕事をするには早すぎなのだがカインは

予定が決まるや、その人間を知ろうとすぐに人間界に降りてしまうのである。

実際これは死神の業務規約違反で注意を受けるのだが、「もう慣れた」とはカインの談。

上(主任)ももう言い飽きたので小額なれど減棒対象にすることで納めた。

カインは最初渋ったがガミガミ言われないのなら。と納得したという。

実際、別に問題を起こすようなことはなく、以前(第一話参照)のようにその人間を一目見たり、

合間合間で人間の世界で若干(?)遊ぶくらいである。その辺はカインも理解しており、

「この辺は大丈夫、これ以上はヤバイ!」というボーダーができているという。

この日も何の気なしにカインはその学校のその予定者を覗いて帰るつもりだった。が、

攻撃を受けてちょっと熱くなっちゃったところへガミジンが近づいてきた。というのが今である。


「死神カインだな」

カインの背後から近づいてきた半人半馬の怪物の集団の中でも一回り大きい中心にいる男が声をかける。

カインは顔だけ振り返る。妙に怪訝な顔。というのもカインはなにかしらの事で気分を害していた。

ガミジン達からするとカインの仕草は急に呼び止められて不機嫌に振り返って睨んできた。

ような感じだった。カインの不機嫌の原因はガミジンの後ろから発せられているカインに対しての、

猛烈な殺気だった。カインとその殺気の間には大ガミジンが立ちふさがっている。バツの悪そうな顔で。

「カ、カイン、死神証を出してくれ」

「?」

死神証。カインの持っている手帳の事である。この手帳は予定者の記入だけでなく持っているということで

死神の証明にもなる。死神はその存在そのものが証明となるが、カインを使い出してから?か、

よほどの事ではないが他の悪魔にも頼んだりする時や、人間に頼む時(いつか書きます。変なバトル漫画

みたいにはなりません)に手帳を発行し、それを身分証として提示させるのである。

カインは暫定的であれ、死神を続けて数百年たっているらしく、もう手帳を提示する必要などないのだが、

どうやらそうさせたのは、その殺気の主のせいだろうとカインは思った。

「おう、見せてやる。顔見せろよ」

カインは懐から手帳を取り出しプラプラさせながら大ガミジンの後ろに言葉を投げるように言った。

「!!!」

慌てたのはガミジン達だった。

『ばばばバカ!そんな口きくなって!』

周りのガミジン達はどよめき顔を蒼白させながら緊張したが、大ガミジンはビクっとはしたが、

顔をカインにのみ向けニラみながらテレパシーを送ってきた。カインもそれにテレパシーで返す。

ガミジンのテレパシー能力はその連帯的なガミジン達同士の特有の能力だがガミジン達が意識して

他の者に発することで交信することができる。

『ん?お前の後ろのヤツなんなの?ずっっっと殺気向けられてるぞ?気配からすると天使か』

『そうだ。今回の戒厳令は知ってるな。そこでガミジン隊と天界の連絡を円滑にするために天使が

一隊にお一人つく事になった。そのお方だ』

『そのお方、めっちゃ俺を憎んでらっしゃるようだけど・・・気配からすると全く知らないヤツじゃね?』

「そうだろうな。人間界に降りたのは誕生して初めてと言っていた』

『はぁ?ちょっと待て!ならなんでそんな見ず知らずのヤツから殺気ギョンギョンに向けられなきゃ

ならないんだ?』

そうこう会話(?)する間にもカインは手帳を大ガミジンに渡し、大ガミジンはその受け取った手を

後ろに回すようにして他のガミジンに渡しそのガミジンが丁寧にその天使に渡していた。

『知らん!だがちょっとの辛抱だ!さっさと手帳見せて形式的に済ませれば本人もすぐ納まろう。

そしたらすぐ我々はここを離れる!よく解からんがこの方はよほどお前が嫌いなようだ。

お前を狙った魔矢に気づいたのはこの方だがその矢以上にお前がいることに怒ってたからな』

『だーからなんで知らん天使ごときに睨まれなきゃならないんだよ!」

「!!!!!」

カインの天使への疑問、よほど熱くなってたのか思っていただけだったのが声に出てしまっていたようで

周りを一気に凍りつかせた。

「あ」

カインの声に天使の殺気が色を変える・・・。

「・・・なんだと・・・?天使ごとき・・・?ごときと言ったな?悪魔の分際で」

『!?』

ピクっときたのはカインである。

「悪魔の分際?」そら天使はかなり悪魔を下に見てるフシがあるのは知っている。

「天使ごとき」と言ってしまったのは悪かったさ。でも最初に殺気ギョンギョンに向けてたのは、

そっちだろ。カインはそう考えながらカインを包む妖気の色をその殺気に応えるように変える。

カインにもいろいろあった。ガミジン達とも最初のうちは同じ悪魔であろうとも、

人間界でする仕事の違い、存在の違いから幾度と衝突しそのことでも始末書を書いたことも

カインにはある。がそのうち打ち解け今があるように、最近のカインに「悪魔ごとき」とか、

「死神」であることを疑われるようなことはない。しかし、今になって手帳を見せろだの、

殺気を向けられてただの、「悪魔ごとき」だのときてカインも熱くなっている。

『落ち着け!この場は穏便にだな』

『カインさん!ここは押さえて!』

『気持ちを静めてください!カインさん!』

大ガミジンだけでなく他のガミジン達もカインをなだめ始める。

少し呼吸が大きくなるカイン。ガミジンたちの言葉でその呼吸を深呼吸に変えたその時だった。

「ええ~い!触るな悪魔がぁ!!」

ジュバァ!!

大ガミジンの後ろから怒声とともに何かを振る音と何かが詰まった大きな袋を切ったような音が

ほぼ同時に聞こえてきた。

「!!」

大ガミジンは無念の表情で下唇を噛む。大ガミジンの左から一回り小さい、それでも普通の人間より大きな

ガミジンが表れてくる。力なく仰け反りながらカインを見てくる。

「!」

仰け反りが回転に変わるあたりで胴から下がとぎれて、下半身がそのまま下へ落ちていくのをカインは見た。

『カインさん、どうかここは俺に免じて・・・隊長の指示に・・・』

そのガミジンは視線が合った瞬間、そうカインにテレパシーを送り、意識が切れた。

ガミジンの体は落下しながらその体を空気に溶かしていった。妖気で固めて体を形成する魔界の存在は

体が形成できなくなると意識が瞬間的に別の場所に転送されるが、体は妖気の塊なので溶けやすい氷のように

その空間に溶け込んでいく。

カインの殺気は一気に消えた。大ガミジンや他の残りのガミジン達も一様に無念の表情を浮かべながらも

カインから殺気がなくなったのを安心して落ち着いてきた。

「・・・おい」

カインは殺気を消したわけではなかった。

「今、なんで斬った・・・?」

カインは怒り方が2種類あって、ふつふつとこみ上げる時と、突発的に爆発する時とある。

先ほど悪口を言われて怒っていたのは突発的に怒り、早い段階で脅しにも似た巨大な妖気交じりの殺気を

かもし出すが、どちらかというとやっかいなのは「ふつふつと煮えてくるタイプ」で我慢(?)というより

まるで火山が徐々に噴火口へ近づいてくるような感じで静かになりそこからドカン!と

手がつけられなくなる。正直静かになる時はそのまま静まる時と怒った時と違いがわからないので

静かになったくらいでは注意しなければならないのだがこの時にはその場の全てのガミジンたちが

ソレを忘れていた。

『!マズイ!カイン!落ち着け!怒るな!冷静に!冷静にだ!』

『あいつなんで斬った!?天使だからって勝手に悪魔斬っていいのか?部下だぞ!部下なんだろ!?』

すこしまだ理性があったようでカインは会話に応じた。

『お前とケンカさせないように天使の体を止めようとしたんだ!あの方はお前のことをよく知らないんだ!

お前怖いからな~。しょうがない!あいつならタンタロスに逝っただけだ!よくあることだから!』

『よくあることって・・・あの天使なんて名前だ?』

テレパシーでの会話、その間でも、大ガミジンは必死にカインを抑えて説得している。

他のガミジン達はさっきの斬られたガミジン達の事で天使に近づかないように天使を説得している。

「(ゴニョゴニョ)様、どうかここはお静まりください。ここは人間の世界です。いかに(ゴニョゴニョ)

様でもこれ以上はお咎めを受けかねません」

『よく聞き取れないな・・・?わざとか?』

『ま、まぁな。なんかお前に聞かれたくないんだと。だから私も言わん』

『ケチー』

カインは呆れて姿勢を戻した。もう殺気を出そうとするほど怒ってはいない。なんとか収まったようだ。

「そこまでいうならしょうがない。さがってやる」向こうも収まったようだ。

「おい!いい加減に手帳かえせよ!バカ天使が」

「!!!!!!!」

収まった矢先、カインは馬鹿にした口調で手帳の催促をした。

「天界もクソだな!いくら戒厳令とはいえこんな融通もきかん人間界のことや俺のことを知らん

バカ天使をよこすなんて(笑)ガミジン達が可哀想だぜ。お前も大変だな、隊長」

『カ、カイン・・・!』

全てカインの計算だった。唖然とするガミジンの中一人、大ガミジンがカインの狙いを理解した。

「ぉ・・・お前のことなら知ってるさ(声が震えている)死神と偽り、

多くの人間や悪魔を食らってきた悪鬼・・・。」

『?』

「旧約聖書から創生されたごたいそうなワリにくだらんことだな・・・それでもなお死神の中に隠れて

愚行を繰り返す狡猾な悪魔め!私が来たのは貴様のような悪辣な外道を滅するためだ!!!」

『何を言ってるんだ?俺を知ってるのか・・・?まさか』

カインは少し迷った。この天使の言ってること。その中に理解できない部分がある。

旧約聖書の「アベルとカイン」という伝説から生まれた存在であるのはカインは理解している。

が死神をやる前、自分がどういう存在だったかを知らない。この天使の口ぶりは

まるでソレを知っているかのようだった。

ともあれ天使の憤怒は限界を楽に越えた。天使の妖気(天界では聖気と言う)は圧力を持ち、

周りのガミジンたちを跳ねのける。前に押し出される大ガミジンも突然の圧力に耐え切れず、

つんのめってしまい危うくカインとアクシデントキッスをかますところだったが、すんででカインがかわし

お互い事なきを得た。カインはここで天使をはじめて見ることになる。

「女の天使・・・」

天使の周りはまぶしいほどの光の聖気に包まれている。髪は肩まで伸びたブロンドでまぶしい聖気をより

輝かせるようになびいている。

・・・全裸だ。その体はギリシャ彫刻のように素晴らしいの一言では収まらないような

プロポーションをしている。しかしながら要所要所はまるでそうあるかのように羽衣がまとわりつき

うまく隠れている。絶対「見える」ことはなさそうだ。

手にした長柄の諸刃の槍。その片側には血糊がついている。さっきのガミジンのものだろう。

全体を見るとこれから悪魔に処断の刃を振るう勇敢な女天使の姿だが。その表情が異常なほど、

醜い憤怒を表し全ての美的要素を台無しにしている。

カインの描いた計算はこの構図だった。相手を限界まで怒らせ、向かってこさせれば

最悪、天使を殺しても「過剰防衛」で消滅だけはない。という考えである。

が、カインは先ほどの、天使のカインの死神以前を知っているかのような言葉を考えていた。

それでもカインの右手には既にいつもの腰ベルトから出した愛刀が攻撃型に伸びている。

戦闘経験、その力の差、カインの天使殺害はもう時間の問題であった。

『カイン!やめろ!やめるんだ!』

もうカインに誰の声も届かない。カインが足をにじり進ませる。その時だった。

「そこまでだお前ら」

太い声がその緊張した空間にだけ響いた。

さて、ガミジンを斬った後天使の武器に血糊が着いているくだりですが、

簡単に言うと「そういうもの」と言う感じで理解してください。

魔界の存在は妖気で体が形成されているので血が流れるのは不自然。ですが、

人間型、動物型はその概念どおり血を流すこともあれば涙、汗、

いろんな汁を出すことだってできます。ただ、それは物質的なものではない。

ということでご理解ください。そんな感じで続きます。

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