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脱走者

中空に浮かぶカイン。

そこは人間の世界。日本であろう。下に広がる町並みに田畑が見える。

町並みとはいうものの田畑の面積が多く田舎。と一目でわかる。

カインの下にはその田畑の真ん中に大きな敷地に三棟の建造物。楕円形に線が引かれた砂地の広場。

その中で体格ががっちりしているが年若の人間が幾人か、三十人位だろう、その建造物の周りを

あるルートに従って走っている。どうやら学校というところのようだ。

カインがその姿勢のまま下の学校を見ながら手帳を広げる。

「・・・針宇都映一・・・。高校生か・・・。ガキとはな~・・・。」

愚痴、というより後ろめたさを秘めたため息交じりのぼやき。死の予定を受けたのは高校生。

ぼやきはそれが理由である。

人間には老若男女等しくどういう形であれ死を迎える。しかし、天寿を全うするか、唐突な事故か、

その結末は多岐に渡る。どういう結末であれその死に本人、周りの人間がどう思うかは

その時になって見なければ解からない。しかし、それはある程度、生きてみなければなおさら解からない。

生きる。ということはその環境によって左右されることが大きい。幸せの中で生きていても事故はおきる。

過酷な環境、状況でも生き残る術を身につけ、生き残ろうとすることで活路を開く者もいる。

すなわちそれは生きる結果でもある。それはカインもわかっているのだが、老若のことを考えると

「若くして死ぬより老いて死ぬほうがまだいい」とカインは思っているフシがある。

そのせいか若くして死を迎える予定者には若干テンションを下げる傾向があるため、このため息である。

「運命ってのも酷なもんだな・・・。まぁ、それが運命か・・・。・・・ん?!」

しんみりしていたカインの目前に突然濃い妖気の矢じりが恐ろしい速さで迫ってきた!

「!なろう!」

矢じりがカインの眉間まで数センチという瞬間魔力の帯びた左手のひらが妖気の光線の横っ面を

引っぱたく。と同時に顔をすばやく逆方向へ捻る。

軌道をずらされた光線は、矢じりがカインの顔すれすれをかすめカインを通り過ぎていった。

カインを通り過ぎ数メートルのあたりで煙のようになって消えた。

カインの視線は光線の飛んできた下の建造物。校舎だろう、その中に感じる光線と同じ妖気をにらむ。

「あいつだな?脱走者ってのは・・・。不意打ちとはな・・・いいケンカの売り方だ(笑)。

しかもかなり重かった。ただの気まぐれで人間界に来れるようなヤツでできる矢じゃなかった。

そうとうエサ食ったか・・・。」

脱走者。それは人間界の魔界の者が無許可で来ることをさす。カインは死神という名分があるので

これには含まれない。

・・・あえて説明しよう。魔界のもの(悪魔)は死神というような名文のない悪魔以外、

なにかしら理由のない悪魔は人間の世界においそれと出られないようになっている。

これは天界、魔界で定めた天魔法典で決められたことであり、それに準じた施行を施されている。

魔界の出口は一箇所と定め、空間を転移して移動する際にしても、その出口を

通過しなければならないようになっているし、その出口には門番がおり、並大抵の悪魔では

太刀打ちできないようになっている。それ以上の悪魔は人間界そのものには大して興味を抱くことはなく、

興味を持つような悪魔はそれこそ封印されたりされている。

これでは悪魔は全く出られない。ように思われるが、実はそうではない。

この場合、魔界を出ようとすることはできないが、人間界から引っ張ろうとすることは・・・?

実はできる。のである。悪魔は人間の欲望の形である。その欲望を持つ人間が、異常な欲望の強さ、濃さ、

の影響か、魔界のその欲望の形とされる悪魔に伝わる事が、ごく稀にあるという。

その伝わった欲望は蜘蛛の糸のような細くもろい糸として悪魔の前に現れる。その糸を掴んでも

糸がそのまま千切れたり、その糸を見つけた門番が断ちにいったりする事が多いが、

ごくごく稀にその糸をそのままよじ登り人間の欲望にたどり着いてしまう悪魔がいる。

それが脱走者である。脱走した悪魔はそのまま人間の欲望の意識に入り込み、その人間の欲望と重なり

その人間の欲望を満たす手助けをするのである。人間を介した脱走にはある程度条件があり、

悪魔は脱走したからといってそのまま人間界で形になるわけではない。意識を伝って出たわけなのだから

悪魔は意識の中にしかいられない。そのためその人間の意識の中でまずその人間の意識を

飲み込まなければならない。意識の中であれ悪魔はその魔力を使うことはできる。(人間界ではさして

形にはできない。人間の意識に影響を与えたりする程度(催眠、洗脳))

人間は欲望を満足させてくれるものに依存する傾向がある。そのため悪魔はその人間を自分に

依存させ、そのままその人間の意識を魂ごと食らうことができるのである。

そして悪魔はその人間そのものとなり、そこからが悪魔の本当の時間になる。ということである。

もっとも、その本当に時間に差し掛かる前になにかしらの手段でその悪魔を処断するのだが、

できるだけその悪魔に取り付かれた人間に被害を与えないようにしなければならないことも

天魔法典には書いてある。人間界にそのまま出てきている悪魔ならガミジン達でもそのまま

倒し、魔界に強制送還することはできる。が、人間の欲望によって出た悪魔はその人間の中にいるため

その人間から引き剥がす事かできなければ手が出せない。以前ガミジンがやられたのは

そういう理由からである。

意識の中であれ自分の魔力を引き出せるので悪魔はその魔力をある程度、

条件付で具現化することができる。その人間の意識がなにかしらの形で沈んでいる時、

(気絶、睡眠など)悪魔はその時に限り魔力を具現化することができる。ということなんだが、

その欲望を完全に満たすまでは人間の意識を優先させなければ、天魔法典の規約を破ることになり

消滅する恐れがあるのが、本能的に焼きついてのか、悪魔は慎重に動くため、

人間界そのものにはさして影響は見えない。しかし、悪魔は人間が意識を沈めている間、

悪魔らしく動き、手の届く範囲で自分を追ってきたガミジンや、そのほかの天使や、

近くをほっつき歩いてる悪魔などを殺して食らい。自分の糧とすることができる。

多く食らうことによって魔力を蓄え人間を取り込み終えた時により強大になることができる。のである。

まぁ、そうなる前に倒されるか、そうなったらなったで人間界に影響が出る前にボコるだけだけどな。

長くなったけど説明するとそんなトコだ。しかもよりによって今回の予定者の至近距離に脱走者が

いるとは・・・ご都合主義にも程があるってもんだな。あからさまに「俺がやれ」って

言われてるみたいだ・・・。ま、タダじゃぁやんないけどな。

戒厳令が敷かれたことで封じ込めそのものは終わってる。あとは人間の意識に入り込める天使を使って

脱走者を出すだけだろうが、あの矢の強さから考えると・・・結構手遅れ感があるな・・・。

俺にお鉢が廻ってくるのももうそろそろってトコか。よ~し・・・日ごろいろいろ引かれてるからな。

思いっきりフっかけてやろう!んっふっふっふ・・・。

そんな感じで意地汚い笑みを浮かべながら皮算用しているカインの後方に、

カインに気づいた魔界の一団がカインとの距離を詰めてきていた。

今回は悪魔が人間界にくる方法などの説明がちょっと長いです。

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