お仕事満了。そして
「・・・」 「・・・うーん」
「・・・」 「なんか・・・早いな」
薄暗い岩壁に無数にあいている洞穴の一つ。その前にタキシードに見える
鎧のような光沢をした衣服に包まれた紫色の顔色をした2メートルはあろう身長の悪魔が
一つの洞穴の前でつぶやいている。洞穴の奥には人影はない。が
気配があり、あるものと言えば人魂のような淡く光る塊だけ。
その塊に向けて男が続ける。
「あれだけのことをしときながらもう形が作られつつあるのか・・・ディブグよ」
「・・・なんか人間の世界じゃすげぇウイルス騒ぎが起きたみたいだな。その影響だろうよ。
まぁ完全に復元してもここから出るのはそうとう先だろうけどな」
「病魔なんだろ?その騒ぎにかこつけて出れるんじゃないのか?」
「親分の方で始末つけるんだと。病魔括りで妖気流れてきちゃいるが
さして俺そのものにゃ影響ねーわ」
「パズ―スはこの騒ぎなんといってる?」
「さぁな。人間どもの自業自得すぎだっつって呆れてたぜ。顔出しに来た時に
『カインにやられてなきゃ今頃大暴れできたな』とかいいやがって・・・」
「あれから向こうでいう10日くらいか」
「なぁ・・・」
「ん?」
「あいつ、カインの魔力って念動力だけなんだよな?」
「んん?カインは風を起こす衝撃能力だぞ。威力は最大で強めの台風の3倍くらいだが」
「はぁ?あの時俺の魔矢は・・・
ー - - - -
「死ねえええええええええええええええええええええ!!」
ディブグ渾身の魔力でできた人の胴体くらいはあろう矢先の真っ赤な矢が
しゃべりかけのカインめがけて放たれた。
恐ろしい速さと反比例するほどの静かさがカインを襲う。
しゃべりかけ、構えてもない姿勢のカイン。もう目の前にまで来た矢先。すると
バチィィィン!!ヒュヒュヒュヒュガイン!ヒュヒュ・・・カランカラン・・・
まるで固い鉄の壁に直撃した棒が弾かれて飛んでいくように矢はいつのまにやら
ディブグの後方に回りながらとんでいった。一度体育館の天井をすり抜けその上の
数メートルほどに上辺の結界にぶつかり跳ね返るようにディブグの後ろに落ちた。
床をすり抜けないのが不思議ではあったがあえてスルーしておく。ほどなく空気に消える矢。
落ちた矢の音の方向に目を向けたディブグ。カインから目を離した直後ディブグはこの岩の洞穴で
意識を取り戻した。
ー - - - -・・・
(言葉は続いている)・・・確かに貫けるくらいの魔力をあの矢に注ぎ込んだ。
あいつ隙だらけだったんだ!わざとしゃべってる最中に撃ったんだから!でもあいつ」
思い返せる限りの記憶を口にしながらヒートアップしだすディブグの人魂。
「隙だらけ?あいつがか?はっ」
「あ?」
「あいつはお前と対峙した瞬間からお前に油断する瞬間なんかないぞ。
見てないようで見ていて、しゃべってる間も敵だけ見てるような奴だ。単対多であれ、な」
「でもあいつのあのしゃべりは自分の有利を確信して自分に酔って
説教し出す時のそ「「どんな時でも!あいつに隙なんかねーよ!
腹立ってるときは特にな。勝てんかった段階で思い知ってんだろ?」
「う・・・」
熱くなってきた言葉にかぶせるように正論をぶつけたことでディブグは口を閉じてしまう。
「それと、俺は別にお前が俺とかにしたことをとやかく言うために来たんじゃねぇ。
何の気なしに除いた穴にお前に似た妖気があったからのぞいたらそうだっただけだ」
「・・・」
「まぁ話しかけたのは俺だからな。悪かったな蒸し返させちまって」
「・・・」
「懲りることはなさそうだがなるべく人の欲にちょっかいだすの止めといたほうがいいぞ。
100年じゃすまなくなっても知らんぞ・・・」
「おお・・・」
聞こえないため息を一つついて紫顔の男は洞窟を左に向け歩きかける。人魂は動かない。
「そういや、あいつ魔力を自分の体の一部に集中させることができるっつってたな」
「!・・・なに?」
「俺らの魔力は妖気を変換して魔法の燃料にする。あいつは自分の体に魔力を集中して
衝撃魔法を体に使うことができるらしいぞ。どうやったのか知らんがおそらくそれじゃないか?」
「なんだそれ?衝撃魔法であの矢をどうやって・・・!」
「現場知らんしあいつの能力も知らんからなんも言えんが、
まぁ出てきたらまたどっかでケンカ売ってみるんだな。じゃ」
男はそのまま数歩歩いてその姿を闇に消した。
ーーー ー ー ー ー ー ー
そこはヘカーテの部屋「主任室」
「いやはや、プリンシパリティにカイン、よくやってくれた。
戒厳令は解除して消失分の霊気と妖気は安定するまで
こちらで管理することになった,で、それから~」
部屋の中央、来客用のソファーに対面するヘカーテ、ドミニオンと
カイン、プリンシパリティ。にこやかに話すドミニオンとは対照的なカイン達。
『相変わらず長いなこいつは・・・』と思うと思うことがこの部屋では
筒抜けになってしまうので心を閉ざし表情で訴えることにしているカイン。
こちらも心がわからないが表情の暗いプリンシパリティ。
テーブルに血のようなワインが4杯それぞれの前。
カインの隣はヘカーテ。プリンシパリティの隣にドミニオン。
カインとプリンシパリティをつないでいたグレイプニルはすでに解かれていた。
ドミニオンの独説の前にカインが前もって解かせたのだ。こうなることを見越して。
事実、カインが入室してここまで3時間たっていた。
「~という事になった。だから始末書はその3枚くらいでいいだろうとのことだ」
そうドミニオンが締めくくった直後カインが立ち上がる。
「了解。明後日くらいまでに提出します。」
「あ、カイン?べ、別に急がなくて・・・」
「失礼します」
ドミニオンが何かしら気弱にカインに声をかけようとした時、カインはすでに
一つ跳ねて数メートル先のドアまでとんでそのまま出て行ってしまう。
プリンシパリティは一声も発していない。カインと入室して一言も、そう、一言もだ・・・。
毎度ながら遅くなりました。
何とかこの話は完結させます。あっちもこっちも未完だらけですが
なんとかします!