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プロローグ1

初の恋愛物です、至らない点もありますが暖かい目で見守ってあげて下さい

いつもの夕焼け、変わることのない町並み、特筆すべき特徴のないこの場所で、彼……矢野修也は帰路についていた

 

 「はぁ~今日も疲れたなぁ~」

 

 普通の学校で普通に友達と遊び、学校が終われば特別に何かするわけでもなく家に帰って遊ぶ。彼はそんなどこにでもある平凡な日常を過ごしている

 

 しかし彼はそんな日々にスパイスを求めたりはしていない。彼は今の生活に満足しているからだ。

 

 「取りあえず家に帰ったら……ゲームでもするかな、そんである程度まで進んだら宿題して……」

 

 今の彼はご覧の通り自宅に着いてからの予定を考えている。

 

 「……というか俺はなんで独り言を喋ってるんだよ。普通に頭の中だけで考えればいいだろ」

 

 ”うるせぇ携帯の充電切れて何も出来ねぇから暇なんだよ!”と一人でそうツッコミをしながら歩く姿は第三者からみればちょっとした恐怖であろう


 だが幸いなことに学校から終夜の家への帰路は人通りが少ないので先ず聞かれることはないのだが

 

 「取りあえず今の時刻は……っと、うん、もう直ぐ4時か、特にやることはないけどいいか。走ろう。今はそんな気分だ」

 

 終夜は一言そう呟き、直後全速力で走り始めた。

 

 

 

 

 

 「やっぱり走った方が早く着くよな」

 

 走り始めてから1分後、終夜は自宅の前に到着し、玄関の扉に手を伸ばした……が、その直前にいつもと違う所に気づいた


 「あれ?ポストに何か挟まってる?」

 

 普段は殆ど働かないポストが今日は珍しく仕事をしていたのだ。終夜は直ぐさまポストから挟まってるものを取り出した。

 

 「これは……手紙……?宛先は……俺!?」

 

 終夜は困惑した。何故なら彼には手紙をくれる知り合いに心当たり等ないからだ。しかし終夜はかつて無い程に心臓が高鳴っていた

 

 (というか封を止めるシールがハート型なんだけど……これってまさか!?)

 

 そう、その外見は所謂ラブレターというものと完全に一致していたのだ。

 

 当然のことながら彼は今まででラブレター等貰ったことがない。例え見知らぬ相手だとしても嬉しい物は嬉しいのだ。

 

 ……1つだけ別の可能性がある筈なのだが今の終夜の頭の中にその可能性は浮かんでいない。

 

 (と、取りあえず玄関の前でずっと止まってるわけにもいかないし、中身は部屋で読もう!)

 

 すっかりと気分の浮かれた終夜はそのまま玄関の扉を開けると、家族にただいまの挨拶もなしにそのまま自室へと向かった

 

 

 

 

 

 そして自室へと到着した終夜は鞄を下に降ろし、服を着替えてから自分の勉強机に向かって椅子に腰を下ろした

 

 (やばいな、誰かに見られてるって訳でもないのにすっげぇ緊張する……)

 

 『この手紙にはどんなことが書かれているのだろう』『この手紙を差し出してきたのはどこの誰なのだろう』

 

 今の終夜の頭の中は手紙の内容のことで埋もれている。彼は気持ちを少しでも落ち着かせる為に数分に及ぶ深呼吸をした

 

 (ふぅ~。よし、心の準備完了!……さぁ開けるぞ~……開けちゃうぞ~)

 

 終夜はハートマークのシールを丁寧に剥がし、ゆっくりと開封していく。

 

 (おぉ、凄い。しっかりと紙が入ってる。……さぁなんだ、どんな言葉…が……!?)

 

 手紙の内容を見た瞬間、終夜は一気に絶望にたたき落とされた。そこには愛を伝える言葉なんて書いていなかったからだ。代わりに書いてあったのは……

 

 『これは不幸の手紙です。今から一週間以内に呪いが降りかかります。助かる方法なんてないので諦めなさい。何とかするなんて出来ないので今のうちに覚悟を決めてね、この手紙を破ったり捨てたりなんてしたら直ぐに呪ってあげるから!』

 

 と言った、ラブレターとはほど遠い内容だったのだ。

 

 (……嘘だろおおおおおお!不幸の手紙とかただの悪戯じゃねえかよおおおおおお!しかも書き方が少し可愛いのもなんなんだよおおおおおお!)

 

 終夜は心で悲鳴を上げながら床に崩れ落ちていった。当然だろう、ラブレターかな?ついに俺にも春が来たんだな!と思っていたらまさかの不幸の手紙だったのだから。

 

 余程の鋼の精神でもない限り、この仕打ちに耐えられる男子高校生はいないのではないだろうか

 

 (というか!というかさぁ!助かる方法ないって酷いぞ!呪いみたいなオカルトとか俺は信じてないけどさ!それでも不安にはなるんだよ!)

 

 終夜は自分で言ったとおりオカルトを信じていない。しかしあり得ないことでも実際に起きたら等と考えてしまえば、僅かな恐怖は襲ってくる

 

 「……ちぇっ、悪戯か」

 

 多少荒んだ心を静める為に口先だけでも淡々とした言葉を何とか捻り出す。……だがやはりそれだけでは足りない。

 

 (呪いなんてあるわけがない。だからこれを破り捨てても何も起こらない。そうだ、こんな手紙は直ぐに破り捨てておこう)

 

 そうして終夜は思考を止め、後のことは考えずに手に持っていた紙を一気に破り、床に置いてあるゴミ箱に捨てた

 

 「……ほら、やっぱりただの悪戯だ。呪いなんてあるわけないんだよ。……それにしても酷い悪戯だったぞ。おかげで暫くの間は人間不信になりそうだ」

 

 ぼそっとそう呟くと、終夜はまだ家族に帰宅を伝えてなかったことを思い出した。

 

 「あ、そういえば浮かれてて母さんにただいまって言うの忘れてた」

 

 さっきの手紙のせいで精神にかなりのダメージが入っていたが、しっかりと帰宅は伝えなければいけない

 

 「……はぁしょうがない。一旦下に行って伝えて――」

 

 そう言って家族に挨拶をするために部屋の扉を手に掛け――

 

 「――え?」

 

 ――た、その直後だった。突然部屋の照明が切れ、彼の部屋は暗闇に閉ざされた


 「な、なんだこれ……!?」

 

 終夜が怯えるのも無理はない。暗闇で自分の体が見えないのだ。それだけならまだ部屋が暗いからで済む。

 

 だが問題な点が一つある。それは

 

 「……これって……魔法陣……?」

 

 現在彼の目の前にアニメのような魔法陣が出現している。そして部屋の構造もしっかりと視認出来る、それなら当然自分の体も見えるはずなのだ

 

 しかし先ほども言った通り現在の終夜は自分の体が見えていない。物理的にあり得ないこの状況、そして自分が否定していたことが目の前で起きていることに恐怖するしかないのだ

 

 (いや、いやいや、いやいやいや。あり得ねぇって……なんでこんなことが起きてるんだよ……)

 

 あまりにも非現実的なことが起こり、終夜の頭の中は混乱して、膝から崩れ落ちた。……そしてその直後

 

 『――愚かなる人間……折角一週間の猶予を与えてやるつもりだったのに自ら猶予を無碍にするとは……』

 

 部屋中におぞましい声が響き渡り、ゴミ箱から黒い霧が噴き出し、魔法陣へ吸い込まれるように集まっていく

 

 彼は最早動ける状態ではない。突然鳴り響いてきた声により精神の底に深いダメージを負ってしまったからだ

 

 「な、なんなんだよ……いったいなんなんだよ!今この部屋で何が起きてるんだよ」

 

 ”あの手紙を破り捨てたからか!”と彼は心で悲鳴を上げた。しかし心で叫んだ所で当然何かが変わるわけでもない

 

 こうしている間にも黒い霧は魔法陣に徐々に集まっている。

 

 「クソッ!クソッ!何でだよ!鍵も掛けてないのに何で開かないんだよ!」

 

 何とか動く手を使ってドアノブを何度も捻るが効果はない。

 

 そして、それから数秒、どうやっても直ぐ後ろにある扉が開くことはないと悟った終夜はとうとう諦めてしまった

 

 黒い霧が魔法陣の中に全て集まり、なにかが現れ始めた

 

 ハッキリとは見えていないが、それは人間のような形をしている。

 

 「…………………」

 

 それから更に数秒、いつの間にか黒い霧は全て晴れて消滅し、その中から現れたのは

 

 「……君…は…?」

 

 この世界に存在しているとは思えない程にかわいらしい女の子であった。……しかし、彼女が人間ではないことはどれだけ鈍感であろうと一瞬で分かる、なぜなら

 

 「…角…?…羽…?」

 

 彼女には明らかに人間ではない特徴があった。先ず後頭部には禍々しい形の角。背中には黒紫と赤を主体にした羽が生えていた

 

 ここまで特徴が揃っていては彼は認めるしかないだろう。……オカルトは実在したのだと

 

 「あ…あ…悪魔……?」

 

 「…………………」

 

 終夜の言葉を無視して、彼女はゆっくりと終夜に向かって歩き出す

 

 「な、なんでこっちに近づ――」

 

 そして彼は理解してしまった。彼女は自分を殺しに来たのだ……と

 

 今直ぐに逃げ出したいが、そもそも扉は開かない。もしも扉が開いたとしても、今の彼は足がすくんで立ち上がれないので逃げるのは不可能だろう

 

 (あぁ……そうか…俺、ここで死ぬんだな……)

 

 彼に残された道は既に覚悟を決める以外には存在しなかった。”出来るだけ楽に死ねますように”終夜はそう祈り目を閉じる

 

 とうとう悪魔の少女は終夜の目の前に到着してしまった。

 

 そして彼女は終夜に――

 

 

 

 「どうして手紙を破ったの!破ったり捨てたりしたら直ぐに呪うって書いてあったでしょ!こっちにも準備ってものがあるんだから!」

 

 「……え?」

 

 殺意とは全くかけ離れた言葉を掛けたのだ

 

 

  

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