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第十六話 いなくなった少女

 クリスマスとかそういうの関係ないんで! 投稿するんで!


 黒板を白い文字が埋めていく。

 俺はその過程をただ茫然と見ていて、開かれたノートの空白が醸し出す空虚さにも気付きはしなかった。



 頭の中で繰り返されていく言葉の数々。



 そのどれを手繰っても明確な『答え』というのは出せそうにない。



 ――唯さんがいなくなってから数日が経った。

 あれからブランコ園に彼女が現れることはなく、それどころかブランコに乗っている人さえも見ることはなくなってしまった。



 そもそもあそこに遊びに来る人の多くは子供たちで、その子供たちもブランコ目当てというよりはあの僅かに開けた空間を求めてやって来ているため当然と言えば当然であったが。



 幾つかわかったのは俺がずっと一人だったのかもしれないということだ。

 俺がブランコ園にいるのを梓は二、三度見たことがあったらしいがどの時も俺は一人でブランコに乗っていたらしい。



 しかし俺には少なくとも今年に入ってブランコに乗った記憶というのがない。

 明らかに梓の見た光景と俺の記憶との間に齟齬が生じているのだ。



 加えて藤丘高校三年生の中に唯という名の生徒はおらず、由衣も、結衣も、優衣もいなかった。



 あれだけ綺麗な少女であれば多少の話題にはなるはずだと不思議には思っていたのだが、そもそもうちの生徒でないとすれば話題に上がるはずもない。

 気付かなかった自分の愚かさに苛立ちを覚える。



 実はおかしなことはもっとありふれていたのではないか?



 そう思って色んなことを考えたこの数日間で考え付いたのは『答え』とは言い難い滅茶苦茶なものばかりで、もし考えていた通りだったとしても唯さんに会えなくなってしまった今では確認のしようもない。



 言ってみれば唯さんという一人の人物において俺は八方塞がりなのであった。



 それに、俺にはそもそも理解が出来ずにいることがある。



 「なんで……」



 ――俺はどうしてこんなにも唯さんに執着しているのだろうか。



 はっきり言って恋愛感情はない。

 確かに彼女は美人で話していて楽しいとも思うが、今俺が抱いている感情はそういったものとはまた異なる、名前の付けられない何かだ。



 こんな気持ちを抱いたのは初めてだった。

 だからどうすればいいのかさえわからずにいる。



 俺はどうしたくて、どうなって欲しいのだろうか。



 「では今日はここまで」



 終わりの見えない思考は生物教師の授業終了の合図によっても途絶えることはなかった。


 * * * * *


 「ほら優太、次は体育だしさっさと着替えるぞ」


 「ん? あー、そうだな」



 生物の授業が終わったようで次の体育に備えて男子はこのまま、女子は更衣室に向かう。

 休み時間は十分なので基本的には急がなくてはならない。



 が、ぼうっとしていたのか周りを見るとほとんどの男子が体操着に着替え始めており、それを怪訝に思った信輝が注意を促してくれた。

 どうやら深みに入ってしまっていたらしい。



 「一回元気になったと思ったら今度はまた一段と元気ないな」



 智也はもう着替え終えているようで近くの机に座って俺たちを待ってくれていた。

 あまり待たせては悪いので俺も急いで体操着に着替える。



 「また何かあったなら言えよ?」


 「――――」



 智也の言葉に答えることはせずさっさと着替えてしまった俺は水筒のお茶をたっぷり飲み込んで、



 「行こう」



 二人に授業に向かうよう促した。

 信輝も智也もこれ以上は何も言うつもりはないらしく、俺たちは急ぎ足で教室を後にする。



 今回のことはあまり相談というのをしたくない。

 自分で解決したいのだ、たとえ八方塞がりであっても。



 二人が心配してくれているのもわかっていたし俺自身もいっぱいいっぱいではあるのだが、そこはあまり譲りたくないことだった。



 そんなことを考えつつ信輝と智也が当り障りのないやり取りをしているのをなんとなく聞いているとグラウンドに到着した。

 その中央にはもうほとんどのクラスメイトが集まっており、ペアになっている。



 俺たちの体育のスタートは準備体操から始まるわけだが、その際それぞれでやったりするわけではなくペアごとに並んで準備体操を行う、というのが我が藤丘高校の習わしなのであった。



 だからそれに則りこれから俺のペアである人のもとへ向かう必要がある。

 あるのだが――。



 「あ! 佐藤さーん! こっちですよー!」



 視線の先には周りなどお構いなしにこちらに手を振るサラ・バレンタインの姿があった。



 「おい佐藤さん呼ばれてるぞ」


 「凄い手を振ってるな……」


 「勘弁してくれ……」



 後で浴びることになるであろう男子たちの罵声を想像して俺は大きくため息をついた。

 

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