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第十三話 科学を超えた何か

 12月22日に、大幅な改稿をしております。具体的には四分の三くらいの内容が変わっていますので、既にご一読されていた方に関しましてもお手数ですが是非もう一度目を通していただくことをお勧めいたします。

ご迷惑をおかけしますことをここでお詫び申し上げます。


 あれから数日。

 俺と唯さんは連日特に決められたというわけでもなく放課後に言葉を交わした。



 俺も部活終わりに会っているので時間は決して早くはない。

 そのためいつも話すのは夕暮れ時に十分、二十分程度なのだが悪い気はしなかった。



 気になる会話の内容としては当たり障りのないもので、「今日は信輝がまた馬鹿をやった」とか「智也が冷たすぎてめげそうだ」とかいう俺の学校での話が主だった。

 もっと言えばあまり彼女本人についての話というのはしていない。



 考えすぎかもしれないがあまり触れてはいけないような、そもそも唯さんの側がしようとしないあたりでその話をするのははばかられたのだった。

 俺も別にしたくない話を無理にさせたりなんてしない。

 しないのだが……。



 「――別に無理に聞く気もないけどやっぱり少し気にはなるんだよな……」


 「ん、何か言ったか?優太」


 「あ、いや何も」


 「そっか」



 信輝が冷凍のぱさぱさした唐揚げを口に運びながら俺に話しかけてくる。

 つい独り言がでてしまっていたようだ。



 「なんか最近の優太ってぼーっとしてること増えたよな」


 「確かに二年生になったあたりから少し気になる気はするな」


 「智也にまでそう思われてたのか」



 比較的変化に敏感な信輝だけでなく智也にまでそう思われていたらしく、ここで俺はいよいよ最近の自分について顧みた。

 言われてみれば確かに考え事とかよくしているかもしれない。



 それも考えていたのは『あの夢』と唯さんのことだった。

 ――断っておくと唯さんが好きだからとかではなく純粋な興味によって。



 「最近は俺も大変なんだよ……特に俺を取り巻く女の子のことでさ」


 「はははっ」


 「俺いい病院を知ってるから連絡を入れておくよ」



 嘘は言っていないのにあまりに酷い反応だ。



 「わかってたけどここまでコケにされるとは思わなかったな。 って智也お前! そのサイトの病院思い切り精神科って書いてるぞ! 友達を精神科送りにするのはちょっと違うよな!?」



 そう言って俺は思い直す。

 いや、この男は本当にやりかねないと。



 というか電話番号打ち込む一歩手前まで来ていたあたり本気っぽいし怖すぎて二度とボケられない体にされてしまいそうだった。

 トラウマになるわ。



 俺は気の置けない友人を憂いて溜息を一つこぼす。

 それで話は一旦終わったものだと俺は思っていたのだが、どうも智也と信輝の中では違うようだ。



 「それで? ほんとにどうしたんだよ優太。 今更気を遣われるような仲でもないだろ俺たち」


 「ほんとにその通りだぜ優太。 最近のお前がすこーしだけ様子がおかしいのはわかってるんだ。 言ってみろよ」



 それはさっきまでとは一転、急に真剣な面持ちへと切り替わった二人を見れば誰にでもわかることだった。



 俺が最近考えている夢のことも唯さんのこともなんら重い話ではなく、暇があったら少し考えていたくらいのことだったのだが、そんな些細な変化に気付くことの出来る二人に俺は何かくすぐったいものを感じていた。



 「そんなに言うなら話すけど……わかってると思うけど別に大した話じゃないからな? だからあんまりハードルを上げずに聞いてくれ」



 少し迷ったのだが、俺は結局始業式の夢の話と唯さんの話を二人に話すことにした。



 というのも、ここ最近一人であれこれ考えてはみたが彼女のことがさっぱりわからないのだ。

 記憶をたどっても俺は彼女のことを知らず、しかし彼女は俺のことを知っている風だった。



 つまるところ、はっきり言ってお手上げ状態だったので、第三者の意見が欲しかったのだ。



 それから多少気味悪がられても仕方がないなと思いながら話していたのだが意外というか当然というべきか、二人は興味深そうに俺の話を最後まで聞いてくれた。



 そして俺が最後まで話を終えると二人は揃って――



 「「うーん、わからん」」



 腕を組みながらそう答えたのだった。

 いやまあ、普通そうなるだろう。



 「だろうな、俺もさっぱりなんだ。 何であの夢にこんなに拘ってるのかも、何で記憶にない女性がその夢に現れたのかも、何でその女性が急に俺の前に現れたのかも」


 「夢に現れたっていうくらいなんだからよほど関係の深い人じゃないとおかしい気もするけどな。でも記憶にないんだろう?」


 「ああ、その上とんでもなく美人なんだ。 あんな人が学校にいたんなら話題にも挙がってるだろうし、一応この学校で一年を過ごしている俺が知らないとは思えない」



 智也が珍しく俺のために頭を巡らせてくれている。

 だが考えに行き詰まっているのか表情はあまり芳しくはない。



 対して信輝の方はさっきから腕を組んだままで弁当を見つめたまま静止している。

 お腹が減っている……というわけでは流石にないだろう。

 こいつは確かに馬鹿だけど、ここまで神妙な面持ちで弁当を見つめたりということは……いや、あるか? あるかもしれない。



 「あのさ……」



 と、静止したままだった信輝が口を開いた。

 どうやら座ったまま死んでいたというわけではなかったらしい。



 信輝は何かを考えこみながら、



 「それさ、ひょっとして幽霊なんじゃないか?」


 「「――ぷっ!」」



 かなりふざけたことを言ってきたのだった。



 「いやいや幽霊って信輝それはないだろ! 俺は普通にあの人と喋ってたんだぞ? 足だってちゃんとあったし!」


 「ほんとだぞ信輝。 そもそも幽霊なんて科学的に考えてもあり得ない。 優太が珍しく相談して来てるんだからちゃんと考えてやれよ」


 「だって幽霊に足がないとかそれこそ誰かが確かめたわけでもないだろ? それに科学的に幽霊が証明されていないにせよ見たっていう人は実際問題たくさんいるわけだし」


 「おいおい真面目に幽霊説を唱える気なのか……。 そもそも俺幽霊に恨まれるようなことやった覚えなんてないぞ!」


 「別に恨みがなくたって幽霊くらい現れることあるだろ? ましてや夢に現れるなんて幽霊くらいにしか出来ないって」


 「た、確かに実際優太には今少し変なことが起きてるわけだしな……」



 隣を見れば智也の顔がゆっくりと青ざめていくのがわかる。

 こいつ、さっきまで威勢よく科学的に有り得ないとか言ってたくせに堕ちるの早すぎるだろ!

 俺は心の中でことほか頼りなかった智也を非難する。

 そして、



 「でもやっぱり幽霊説は考えが飛躍し過ぎだって。 確かに一考としては良いかもしれないけど現実味がなあ……」



 真剣に考えてくれたのはわかったがそういうのは本当にわからなかった時の謂わば最終手段のようなものだろう。

 今出すべきものではない。



 しかし当の信輝はというと不思議そうな顔をして、



 「現実味っていうけど優太、まさかとは思うけどお前も幽霊見たことないのか?」


 「え?」


 「幽霊だよ幽霊。 お前も見たことないの?」


 「いや、え? え……?」



 いや、えっと……嘘だろ? お前まさか見たことが――



 「そうか、だったら俺の意見は通らなそうだなぁ。 いいや、すまねえ優太! 忘れてくれ!」


 「あー、そっかそっか。 ははは……」



 今の信輝の話に隣で震えている智也を見て、俺は近いうちに唯さんが幽霊でないか確かめようと心に決めた。



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