人間の本質について
「まあね、ところで時々死にたくなる時があるんだ」
「どうして?」
「だってこの世なんて無じゃないか」
「無だって思うんだ」
「そう。僕らはみんな無から生まれたんだ。だとしたら無に還るべきじゃないか?」
「そうかもね」
「何の意味もない。毎日には何の意味もない。寝て起きて食ってまた寝るだけだ」
「働くことに意味はないの?」
「よく考えてみてよ。何のために働くんだい?寝て起きて食ってまた寝るためじゃないか。それで働くことに何の意味があるというんだ?」
「そうかもしれないね」
「そうさ。僕の考えだけど、働くのは自分が寝て起きて食ってまた寝るためと、他人が寝て起きて食ってまた寝るのを助けるのと、2つの側面を持っている。でもとにかく何の意味もないことには変わらないよ」
「そうなんだ」
「それと、僕は満員電車も嫌いなんだ。人権がないように感じられるから」
「人権がないように感じるんだ」
「だってなんだって人間が押しくらまんじゅうしながら輸送されなきゃいけないんだ?まるで物を運ぶようじゃないか」
「そうとも言えるかもね」
「それに僕はトイレを待っている時間が嫌いだ」
「そうなの?」
「特に家の外でトイレ待っている時なんて最悪だね。吊り上げられて『あいつはトイレに行ったんだぞ!』って糾弾されても、文句は言えなかった」
「それは嫌だったね」
「あるいは僕の言っていることなんて虚無主義を気取っているだけだって思うかもしれない。でも、気取っているんじゃ全然ないんだ。魂の根本にある洞察のようなものなんだ。僕はそれを自分の精神の奥底まで入って行って見つけ出したんだ」
「そうなんだね」
「人の本質は闇でも善でもない。単純な無だよ。無だから、みんな好き勝手に善とか悪とか社会的動物とか、適当に理由を集めて言えるんだ。あんなのでっち上げだよ」




