基本的には人の善性を信じない方向で作られている
「まあ、特には。でも面白い話ならなりますよ」
「例えば?」
「アパートの自分の部屋に戻ったらダイニングルームの机の下にサークルの男の先輩が隠れてたとか」
「なんで? 丸見えじゃないのそれ?」
「そうです。その先輩が白状したところによると、その知り合いの子が好きで、たまたま知り合いが鍵を閉めたあと、その鍵を郵便ポストの中に入れるのを見て、ついその鍵を使って入っちゃったそうです」
「それで?」
「その人には帰ってもらって、大学の学生生活課に相談したそうです。それで、生活課の方は注意しておくと言って、それきりだそうです。特に被害もなかったらしいですし」
「それは大変だったね」
「ええ、で、面白いのがその話を聞いた一年後に、その子と、その先輩が、付き合いだしたらしいんですよ」
「愛が伝わったのかな」
「まあ、今はどうなっているのか、わかりませんけど、少なくとも私が卒業した時はまだ付き合ってましたね」
「すごいね」
「まあ、世の中何がどう転ぶかわかりませんね」
そのとき、僕のスマートフォンが鳴った。僕は王さんかと思って、喜んでスマートフォンを取った。しかし表示を見ると、さっきの白いコートを着た警察官のものだった。
「すいません。あなたがおっしゃった高校生を確保したのですが、お時間ありましたら確認に来ていただけますか? 写真で済ませられればいいのですが、そうもいかないので」
僕はちょっと二人を見た。まあ、大丈夫だろう。
「構いませんよ」
僕はそうスマートフォンに向かって答えた。
「すいませんね。肖像権の問題でそちらに写真を送るわけにはいかないんですよ。基本的には法っていうのは人の善性を信じない方向で作られているのでね。では先ほどのパトカーをそちらに送るので、それに乗って渋谷警察署まで来てもらえますかね。本当に申し訳ないです」




