ハワイとロシアの寒暖差
「歌が上手いっていうのはいいものだよね」
「そうかな。よくわからない」
「そうに決まってるさ。オンリーマイレールガンを格好よく歌える女の子なんてそんなにいない」
「知ってたの?」
「ユービートっていうアーケードゲーム知らない? 音楽が流れている間、4×4マスのボタンが光るからそれをリズムに合わせて押していくゲームなんだけど。ゲームセンターにはよくあるよ。最近は新しいゲームと人気を競ってるみたいだけど」
「ごめんなさい、わからない。ゲームセンターに入ったことないから」
「ふうん。僕はそれで初めて聞いたんだ。アニメチックなイラストの女の子が2人ならんで立っているジャケットがあって、面白そうだったからプレイしてみた。格好良い音楽だったな。スタイリッシュなんだよね。同じ女の子たちが映ってるシスターズノイズっていう曲もあって、そっちもよかった。今まで聞いたことのある曲とは、色々違ってた。音楽が提供されてたアニメは、結構オタク界では人気なんだってさ」
「まあ、そうだね」
茜音ちゃんは歯切れ悪く言った。
「観たことあるの、そのアニメ?」
「友達から勧められて」
「面白かった?」
「まあ」
どこかあいまいな言い方だが、まあ、オタク文化にかかわる時は普通そうだろう。今時明るいオタクも現れてはいるが、そいつらの中にもどことなく本当はだめなことをしているという意識が散見される。あるいは劣等感かもしれない。
実のところオタク活動とゲーム活動が、最近の子供たちのメジャーな余暇活動であるという話も聞かないではない。まあ、ゲーム活動に関しては、僕もそうだったけど。小学生高学年になってまで公園で鬼ごっことかはしないよね。本当はしたかったけど。
子供のころ、僕の実家にはゲームキューブとDSがあった。今でもまだそのまま残っている僕の部屋の押し入れの中に入っているはずだ。今になってくるとまた様子が変わって来てスマートフォンを使ったゲームをよくやるらしい。スマートフォンは一応携帯電話だから、子供たちは学校に持って行くわけで、すると子供たちは学校で休み時間にゲームし放題ということなのではないだろうか。これは問題だ。学校は断固ゲームを禁止すべきだ。全部が全部出ないとはいえ、教育に悪影響を与えるゲームは多いからな。教育にというか、頭にというか。姿勢も悪くなりやすいそうだし。
僕達は入口で会計をして、(もちろん僕が全額払った)外に出た。外は当たり前のように寒かった。どこでもドアでハワイからロシアに移動したときくらいの寒暖差だった。
「大げさ」
茜音ちゃんにそう言ったら短く返された。
「ところでハワイがロシアくらいの広さだったら世界はより平和だったのじゃないかって思わない?」
「そしたらたぶんハワイだけで独立して列強の一角だよね」
「ハワイ資本主義民主共和国とか?」
「立派な名前ね。どこかの独裁国家みたい」
「その国の人たちも僕らと同じ人間なんだぞ。バカにするな」
「してないわよ」
「民意で独裁が選択された場合は民主主義と言えるのかな?」
「民意がいつでも独裁をやめさせられるのであれば言えるんじゃないかしら」




