私の父親は
それからそのおじいさんは黒い車を見失わないように運転を続けてくれた」
「それで王さんの家を見つけて、三日前にそこに転がり込んだってわけか」
「そう」
ということは王さんは茜音ちゃんのことが誰だかわからないような態度だったけど、本当はわかっていたのか。
「でも、王さんは自分の奥さんのことを本当に愛しているみたいだった。浮気していたら後ろめたさを感じたり、そもそも夫婦仲が冷めているから、浮気に走るものよね? 王さんはそういったところが少しも感じられなかった。本当に奥さんを大切にしていたし、奥さんはとても幸せそうだった」
「じゃあ、仕事の付き合いとか、単なる友達とか」
「お母さんは紫音が産まれてからは一度も仕事はしてない。それに単なる友達には普通、会うたびに私の写真を見せたりしない」
「じゃあ、どういうことなんだ?」
「私の結論はこう。二人は昔浮気をしていた」
茜音ちゃんはちょっと言葉を切った。
「そして、私が産まれた。私の本当の父親は王さん。私はハーフなの。日本人と中国人の」
今まで知覚できてなかった茜音ちゃんを包んでいる霧のようなものが薄らいだような感じがした。
「よく考えてみたら私はあまりお父さんから優しくされたり甘やかされたことはなかった。普通父親って娘に対して優しいものよね? でもなんだかお父さんはずっと私に触れたくもないみたいみたいだった。いつもどこか私じゃないところを見ていた。まあ、だいたいは仕事だったんだけど。それに紫音から聞いた話でも私が生まれる前後、夫婦仲が悪かった時期があって、お母さんの浮気が疑われていたんだって。お父さんはその頃から私が自分の子供じゃないって疑ってたのかもしれない」




