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ハリネズミの旅  作者: 木村アヤ
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乾燥わかめ

カラオケルームの中で茜音ちゃんは語った。

「お父さんは日曜日になるといつもゴルフに行っちゃって夜遅くになるまで帰ってこないの。お母さんは一年前くらいまでは家で家事をやったり私とどこかに遊びに行ったりしてた。だけど一年前からは一人で出かけることが多くなったの。それで少し前になって、浮気の可能性が頭に浮かんだ。私は日曜日にお母さんが家を出た後を追って、大通りでお母さんがタクシーを捕まえたから、私もすぐに来たタクシーに乗り込んでこう言った。『忘れ物を渡さなきゃいけないから、あのタクシーを追ってください』運転手さんは『まさか本当にそんなことを言われる日がくるなんてね』って言いながら追ってくれた。お母さんは五反田で降りた。私も近くで降りて、追いかけた。お母さんはとある喫茶店に入っていった。私は近くにあった洋服屋さんに入って安売りしてたブルージーンズのジャケットを買って着た。普段はそういうワイルドな格好はしなかったから。店に入ってお母さんが見える席に座ってしばらくすると、一人の若い男性がやって来てお母さんの前に座った。それがあの人だった」

「あの人って?」

「王さんしかいないでしょ。あなたの頭の中に入っているのは、乾燥わかめか何かなの?」

「わかった。僕が悪かった。それで、それからどうなったんだい?」

「二人は真面目そうな顔をしてあれやこれや話してた。私はほとんど聞こえなかったけど、たまに自分の名前が出ていたのはわかった。それからお母さんはアップルのアイパッドを王さんに見せた。渡すときにちらっと見えたんだけど、それは私が小学三年生の時に学校の行事で近くの自然公園までピクニックに行った時の写真だった。そして二人は笑った。お母さんは家にいるときはほとんど笑わない。なのに、安心しているようにほおを緩めた。目も笑っていた。見たことのない笑顔だった。二人はそれから一時間くらい談笑して、親しげに別れた。男性が先に店を出て、お母さんが後に残った」

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