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四話 知れたこと
あの時、怒りを顕にした彼も次の日には優しい彼に戻っていて、昨日はごめん、と謝ってくれた。彼への告白以来、私はまとわりつくように彼に関わっていった。
休み時間に話しかければ、話してくれた。
誕生日プレゼントを渡せば、一応受け取ってくれた。
帰路につく彼を追いかけて話しかければ、嫌そうにしつつ一緒に帰ってくれた。
体育祭でちゃんと見てて、と頼むと終わったあと褒めてくれた。
勉強を教えて欲しいと頼まれたりした時もあって、頼んだ本人より喜んで教えた。
朝、ちょっと好きな人を聞いてみたりもした。
彼の全てを知りたいと思ったあの日から、知れたことはそう多くはなかった。
チョコレートが好きなこと、母親と二人暮らしなこと、家計が厳しいらしくなんらかのバイトをしてること、運動は嫌いなこと、夢は特にないこと、今、好きな人がいること、それくらいだった。
いくつか知れた中で、たまに覗かせる彼の笑顔の裏にある悲しさや恐れの理由を知ることは出来ずにいた。
そして季節は、何の変哲もない六月から雪の降る十二月へと移り変わった。