~おやすみ~
携帯のメールのみでつながる純愛のお話です。
「今日も一日お疲れさま。おやすみ」
「おやすみ」
とくに用事はない。
愛の告白もない。
でも、この「おやすみ」が聞きたくて、親友にメールを送る。
朝早い仕事をしている親友は、きっと夢の中…
着信音に起こされ仕方なく返信してくれてるのだろう。申し訳ない。親友の、このやさしさにわたしは甘えている。
親友は、中学の同級生だから、かれこれ20年のつきあい。20年ずっと近くにいたわけではないけれど、つかず離れず、時はすぎた。
二人でどこかに遊びに行ったり、飲みにいったり、ご飯を食べたりすることはない。
最後に会ったのは、いつだっただろう…忘れてしまった。
私たちをつなぐものは、携帯のメールのみ。
人生も折り返しにさしかかると、もはや自分の努力では どうすることもできないような事態に、突然うちのめされることがある。
ひとりで泣いていると、親友は必ず絶妙なタイミングであらわれて、これまた絶妙な励ましの言葉で、わたしを救ってくれる。毎回だ。
人生の節目節目でも、親友は必ずあらわれる。
何度も何度も助けられているうちに、ついつい甘えてしまうことを覚えた。パブロフの犬ではないが、親友からのメールさえあれば、すべてが救われたような気分になり、安眠できるのだ。
思い違いかもしれないが、わたしが親友の一大事を察知することもある。なんとなく胸騒ぎがするのだ。
必要とされれば、もちろん全力で助ける。
親友がわたしをどう思っていてくれるのかはわからない。
きいたら、すべてなくなる気がしてきけないのが本音。
いや、きっときいてもこたえてはくれない。
たぶん妄想族の現実逃避だと笑われるのがオチだろう。
でもわたしは今日もまっている。
親友からの「おやすみ」を…
「今日も一日お疲れさま。おやすみ。」
ひとの幸せは、ひとそれぞれ。
わたしの幸せは、「おはよう」と「おやすみ」を言えるひとがいること…。