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町を出た俺は西に進み草原に出た。
旅立ちの町には四種類のフィールドがある。
北には初心者むけのザコしか出てこない森。
南には川が流れていて、比較的弱い原生生物が生息する。
東にはダンジョンの森があり、ここを越えるのが最初の攻略となる。ここの原生生物がこの辺りでは一番強いし、ボスもいるので余り近寄りたくない。
西には草原が広がり、この草原の街道を進むとシナイルの村というのどかな村につくはずだ。ちなみにここに生息しているのはルーキゴブリンという人形の原生生物だ。
こいつは初心者では手強い相手だが、テスト参加プレイヤーや課金によるステータスの強化をした者には美味しい経験値を落とすカモだ。
テスト時とルーキゴブリンのステータスが変わっていないのなら、HPは60で耐久は10ぐらいのはずだ。
さて、俺は今、草影に隠れて隠密スキルを使ってルーキゴブリンに接近していた。
距離は約1mぐらい。そこで投剣スキルの初期技の【貯め投げ】のモーションをとる。
ちなみに【フリーダムオンライン】のスキルや技の発動はモーションをとるかスキルを口にするかの2つだ。ちなみに【貯め投げ】は短剣を投げる構えをして、【貯め投げ】とイメージしたら発動する。
【貯め投げ】は単純な技だ。10秒間貯めるだけで次の投剣攻撃の威力が1.5倍になるのだ。(小数単位は切り捨て)
さて、とりあえず目の前のルーキゴブリンにむけて【貯め投げ】を使った軽量純銀の短剣を投げる。
投げられた短剣はルーキゴブリンの頭に当たり赤いダメージエフェクトを撒き散らしてポリゴンとなり消滅した。
まあ、筋力ステータスが34(+1)の数値で距離は1mほど。その結果、武器の攻撃力の15と筋力ステータスの攻撃力が25。さらに【貯め投げ】によるダメージが1.5倍になり、この時点で60ダメージ。さらに、敵の弱点を攻撃することにより発動するクリティカルアタック。これによりダメージが二倍になり120ダメージ。そこに不意打ち補正がはいり、1.5倍になりダメージは180ダメージ。そこからルーキゴブリンの耐久ステータスの10を引いてもお釣りがくる。
ちなみにこのルーキゴブリンの経験値は25。序盤にしては高く先程から同じ方法で倒してきたのでレベルが3にあがった。
といあえず短剣を外出して辺りを見渡す。ちょうど近くにルーキゴブリンがいた。俺に気づいているらしく、右手のこん棒を振り回しながらこちにむかって走ってくる。
俺はそのルーキゴブリンにむかって全力で走りだす。準備ステータスの恩恵で50mを5秒で走るぐらいのスピードで走る。
ルーキゴブリンはこん棒を大きく振りかぶるが、そんな隙だらけの状態はまさしくカモだ。
俺は走りながら短剣を逆手に構えて短剣スキルの初期技の【風切り】のモーションをとり、そのまま、ルーキゴブリンと交差する。交差した瞬間に【風切り】発動してルーキゴブリンの首を切り裂く。
【風切り】は自分の俊敏ステータスの数値を攻撃力にする突撃技だ。重さによるマイナスを差し引いても、17(+1)はある。そこに、武器の攻撃力の15を加えて筋力ステータスの数値の34(+1)を足す。ダメージは68。そこにクリティカルアタックによりダメージは二倍になり合計ダメージは136。ルーキゴブリンは呆気なく赤いダメージエフェクトを散らしながらポリゴンとなって消滅した。
しっかし、こいつは本当にカモだ。クリティカルアタックの条件となる弱点が4つあるのだ。
頭に心臓に首。これが人形の弱点だ。ちなみにこれはプレイヤーにも当てはまる。まあ、何らかの防具を着けたら簡単に防げるのだ。
ゴブリンはこの弱点の他に角が弱点になるのだが、ルーキゴブリン意外のゴブリンはちゃんと防具を着けているため初手からクリティカルアタックを狙うのは難しい。しかし、このルーキゴブリンは腰の防具以外に防具を装備していないのだ。
よって、テスト参加プレイヤーは楽々とクリティカルアタックを決めるし、課金プレイヤーは課金により得たステータスで倒すことができる。
そのためカモ扱いされているのだ。
しかも、ルーキゴブリンのドロップアイテムはNPCの店の防具よりも性能のいい防具を作るための素材にもなるのだ。
まあ、俺のステータスは耐久はあまり高くないので性能のいい防具は大歓迎だ。
まあ、自分で作れたらいいのだが、防具作製が可能なのはメインスキルに鍛冶屋を選択したやつだけだからな・・・
とりあえず町に戻ったら交遊関係を広げるように努力しよう。それに、もうすぐ19時だ。俺も飯を食わないといけないし、ログインしてくる人も増えるだろう。
まあ、素材も集まったしここいらで町に戻るか・・・
そう思い旅立ちの町にむかって歩き出そうとしたとき・・・
『GMメッセージ。【フリーダムオンライン】に五万人のプレイヤーが揃ったため、チュウトリアルを終了します。正式プレイ開始のため、旅立ち町の中央広場に転送されます』
なに?
俺はいきなりなり響いたGMメッセージの内容を理解する前に転送の光に飲み込まれた。
転送先は合ってるみたいだ。確かにここは旅立ちの町の大広間だった。
ただプレイヤーの数が多すぎるがな・・・
見渡すだけでも数千はいるだろうが、GMメッセージの内容どうりならここには五万人のプレイヤーがいるはずだが・・・
そう考えていると、再びGMメッセージがなり響いた。
『諸君。私の名前はR このゲームの開発者の一人だ』
『さて、では私の方から【フリーダムオンライン】の公式プレイを始める前の初注意を言わせてもらうよ』
『まず、第一に諸君らはゲームをクリア。つまりグランドクエストをクリアしないとログアウトすることはできない』
な!そんなばかな。
俺はメニューを開きログアウトボタンが有るところを、有ったところを見るがボタンは跡形もなく消え去っていた。
『次に公式プレイでは蘇生などの行為が一切できなくなっている。これによりHPがゼロになったプレイヤーは現実世界で脳死となる』
周りからふざけるな!と怒鳴る声が聞こえるが、恐らく、本当なのだろう。
『これは命を賭けたゲームだ。私はこのゲームを諸君らに楽しんでもらうためにこの世界でどれだけ過ごしても現実世界では数分になるように細工した。では諸君。存分に命を賭けて遊んでくれたまえ』
と言ってGMメッセージは聞こえなくなる。その変わりにシステムメッセージに・・・
『【フリーダムオンライン】正式サービス開始にともない以下の機能が解放されます。
1.ギルドの作成が可能になりました。旅立ちの町の紅の館で誰でも作成可能になります。
2.傭兵システムが解放されました。傭兵の登録は蒼の館で可能です。
3.闘技場が解放されました。闘技場では死亡しても問題ありません。気軽にプレイヤー同士の戦いを楽しむことができます。
以上が解放された施設です。それでは皆さんよいゲームを』
こうして俺のデスゲームがスタートした。