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戦闘描写練習

作者: 我狼 龍牙

 黒いコートを風になびかせながら、男は青く生い茂った芝生を踏みつけた。

 無言のまま歩き続ける男の先にあるのは、活気が失われ、そこだけ時が止まったような廃れた集落だった。

 その入り口にたどり着いた男は周りを一瞥することなく、荒れた道を進んでいく。

 ブーツが砂利を潰す音ばかりが辺りに響く。

 そのまま幾分もしないうちに男は開けた場所にでていた。

 そこで初めて男は首をめぐらせた。

 どうやらそこは広場のようだ。真ん中には枯れた噴水があり、その周りに一定の間隔でひび割れた椅子が置かれていた。

 そこまで見たところで、後ろから土を踏みしめる音が聞こえた。

「おっさん、なんかようか?」

 男は振り返りその声の主を確認した。

 どうやら近くの村のチンピラのようで、顔の至る所にピアスしている若い男だった。

 その容姿を見て用なしと判断した男は一つに揺った銀髪を揺らして反対の方向へ歩き出した。

「おっと、すまないな。ここは行き止まりだ」

 男の前には見上げるような巨漢の男がその体と同じくらい巨大なバトルアックスを担いでいる。

 見れば、すでに男は十人以上に囲まれていた。

 それぞれの手には剣やナイフ、槍など様々な武器を持ってジャラジャラと耳障りな音を奏でていた。

「悪いな、おっさん。金を恵んでくれよ。そうすれば、半殺しぐらいにしといてやるからさ」

 さっき話しかけてきた顔中にピアスをつけた男の言葉に周りの男も下品な笑い声を上げる。

「怖くて声もでないのか?おっさん」

 調子に乗った一人がナイフを片手に銀髪の男に近づいていく。

「なあ、金をくれよ。な?」

 その男が銀髪の男の肩に手を置いた。その瞬間、

「えっ?」

 いきなり顔にかかった生ぬるい液体をナイフを握った右手で男は拭う。


 その色は赤。


 それが何か理解できない男の前を、肌色の手が赤い尾を引きながら飛んでいった。


「今の、誰の手?」

 そう呟く間抜けな男の脳天に無慈悲な剣が振り下ろされた。

 股間まで一気に切り裂かれた男はその傷口からきれいに寸断された臓物や脳漿をばらまきながら絶命する。


「て、てめぇ!!」

 何が起こったか理解した槍使いの男は一気に銀髪の男に駆け出した。

 体勢を低くしながら駆ける槍使いの男が背後から狙うはその足。


 銀髪の男が使う剣という武器には下段に対する対処が少ないからだ。

 銀髪の男の大振りの剣ですら届かない距離から片手で足凪ぎを繰り出した。

 常人では決して反応できない攻撃。だが、銀髪の男はそれを音もなく軽々と飛んで交わす。

 それどころか、銀髪の男はその槍を地面に踏みつけ、男の手から槍をもぎ取っていた。

「ぐっ」

 男は腰に差しているナイフを取り出そうと手を伸ばすが、その前に体はすでに斜めに切り裂かれていた。

 骨にぶつかる音すらしない恐るべき切れ味とその技量。男たちも冷静な判断が出来ていれば、この実力差に気づき、すぐにでも逃げ出していただろう。

 だがあまりの恐怖によって恐慌状態に陥った彼らにそんな行動など取れるわけがなかった。

「う、うわああああ!!」

 悲鳴のような声を上げながら顔中ピアスも含めた男たちは何の策もなく突撃した。

「馬鹿やろう!!止めろ!!」

 巨漢の男がハッとして叫ぶが、男達は止まらない。

 銀髪の男はサングラスで隠れた瞳に冷たい光を宿したまま、ただその六人の愚者達を見つめていた。

「あああああ!!」

 最初に叫びながら切りかかってきたのは剣士だった。

 銀髪の男はそれをゆっくりとした動きでかわし、容易くその剣士を切り裂く。

 それを出始めに、銀髪の男は流れるような、緩やかだが素早い動きで、ものの数秒で六人という数を切り伏せていた。

「くそが!!」

 叫ぶと巨漢の男は銀髪の男に走り出す。

 巨大なバトルアックスを腰だめにし、銀髪の男が範囲に入った瞬間、それを降り出した。

 ギロチンのような巨大な刃が横から銀髪の男を襲う。

「な、に?」

 だが空気が裂ける音と共に繰り出されたその全力の一撃は、大振りの剣によって微かな金属音を奏でながら受け止められていた。

「っ、クソが!!」

 激昂した巨漢の男はもうがむしゃらにバトルアックスを振るう、ように見せかけて時に足払いや石付きなどの技を繰り出していく。

 だが、その全てが完璧に剣に受け止められていた。

 遂には銀髪の男に斧を弾きとばされた。

 巨大なバトルアックスは甲高い音ともに男の噴水の頂上に突き刺さった。

 巨漢の男は斧を弾きとばされた手を見て、ドサッと膝をついた。


「殺せ。俺の負けだ」


 巨漢の男はそのまま両手を地面につくと、頭を差し出し目を瞑った。


 だが、いつまでたっても剣が振られない。


 巨漢の男は不思議に思い顔を上げると、その銀髪の男は枯れた噴水の上に腰掛けていた。

 指に挟んだ細長い煙草をくわえるその姿はどこか幻想的だった。

「なぜ殺さない?」

 巨漢の男の問いに銀髪の男はチラリと視線を向ける。

 フーッと紫煙を吐き出してから初めて銀髪の男は口を開いた。

「お前が気に入った」

「は?」

「俺と旅をしないか?」

「何を・・・・・・」

「俺は今、仲間を集めている。お前も来ないか?」

「なぜ仲間がいる?」


「この国を滅ぼす」

「なっ!?正気か!?」

「ああ。どうだ?やらないか?」

 ニヤリと笑ってみせるそれに巨漢の男はなぜか惹きつけられた。

「かつてこの国のために働いたが、今ではこんなごろつきになってしまった」

「自分が守ったものを壊す。それもまた一興とは思わないか?」

 巨漢の男は立ち上がった。

 その顔には笑み。

「ああ。いいだろう。

 このガムル=ランパード。貴様について行くことをここに誓おう」






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― 新着の感想 ―
[一言] 我狼龍牙さん、作品拝読しました。『戦闘描写練習』ですか、まずタイトルにひかれてしまいました。その向上心、素晴らしいと思います。 三人称の語り手においても、どこからの視点か、という意識は大…
[一言]  僕では及びませんよう。  あまり知識も技術もない自分では、言えることがないです。ふひゅー。
2010/08/01 19:44 退会済み
管理
[一言] 前半文末を現在形「~いる」にした方が臨場感の出るところを、「~いた」と過去形にし、さらに繰り返してしまって単調なリズムになってしまっています。 現在形にできるところは現在形にした方が、戦闘…
2010/08/01 19:17 退会済み
管理
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