第8話:悪化する戦況と残された手段
睡眠勇者をお手に取って頂きありがとうございます!本作品は基本的に1日3話投稿で7:10、11:10、18:10になっております。それでは、睡眠勇者夢一郎もといはレイズの冒険を読んで頂ければ幸いです!
第8話:悪化する戦況と残された手段
隊長はまたもや仲間を失った。その失望感から黙って撤退用の信号弾を撃ち、撤退する。僕も副隊長に引っ張られるように馬に乗せられ、撤退する。
ロッジは温かく、落ち着くはずが隊長は机に伏せたままだ。絶望と使命の狭間で揺り動いているのが分かる。しかしなんと声をかければ……
「隊長、討伐隊報告を……」
副隊長も辛そうに言葉を放つ。
「第1班5名生存」
「第2班3名生存、2名重傷」
「第5班5名生存」
「第6班2名生存……班長戦死、残りは雪崩に巻き込まれたと思われます……」
「副隊長ライラ問題ありません……」
「僕も大丈夫です……」
隊長は呟くように結果をまとめる。
「残存総兵力……18名……か……」
誰もこれ以上語らずに重く静かな時間が過ぎる。
「第2班と第6班を統合し、第3班とする。第3班は休め、第1班は悪いが山道警戒。第5班は緊急出撃準備体勢……ライラお嬢と勇者様は休め……私も少し休ませてくれ……」
「「「はっ!!」」」
僕は部屋に戻ろうとするとライラお嬢に手を掴まれる。
「ちょっと私の部屋に来てくれるか?」
「はい、いいですよ」
お嬢に背中には金色の美しい髪が少し焦げており、もったいないという今考えるべきでない考えが浮かんでしまう。
お嬢の部屋の扉には鍵穴が3箇所もあり、厳重だと思ったが素早く解錠し、部屋へと案内してくれる。ドランド山道が見える窓とその前に執務机があり、隣の広いスペースには縦長の金庫とベッドと本棚が並んでおり、ラベンダーのお香も焚いてある。意外にもベッドにはぬいぐるみが沢山ある。
「副隊長、お話とは?」
「勇者様、あなたの剣技は見たことがない。この世界のあらゆる武術を見てきたが武器を破壊する剣技は僅かにあるが確実に抵抗できなくするように腕まで切り落とし、反転し、首を落とすのは初めて見た。どこの武術でしょうか?」
さすがに現実の話をするわけにはいかないので誤魔化すように答える。
「王国の剣技を学んでるうちに自分で気がついたのみです」
ライラお嬢は執務机の葉巻に火をつけて、分煙という言葉を投げ捨てる。
「安心して、吸うタイプのお香だ。害はないわ。ただ勇者様って凄いわね……」
「肝心なのは錬磨と探求です」
僕は航空自衛隊の雑誌で見たアグレッサー飛行隊(仮装敵部隊)の標語を口にする。
「素晴らしい言葉ね。私の座右の銘にしよう……やたらベッドを見ているけどぬいぐるみが気になるのかしら?」
「えぇ、少し……意外と言うか……」
ライラ嬢はクスッと笑みを零し、語る。
「隊長とお父様が仲が良くて可愛いぬいぐるみを見つけては置いていくのよ。お気に入りはその白いトラのスノータイガーちゃんかしらね」
スノータイガー……モンスターなのか魔物なのか判別が付かないな。
「話が変わって申し訳ないんですが副隊長は銃の技術をどこで習ったのですか?」
副隊長は煙を吐くと答える。あまり好ましい質問じゃないのは明白だったが聞いておきたいからだ。
「ライラでいいわ。私は元々セングラード帝国の女性騎士団の副団長を務めていて、ライフル小隊の指揮もしていたから覚えたのよ。だけど父様が賄賂を受け取った疑惑で家族共々帝国を追放され、辿り着いたのはこの街よ。でも仕事も家もない私達を拾ってくれたのが今の隊長。父様が賄賂を受け取るはずがないと信じているわ」
想像以上に重たい過去を聞かされ、辛い思いさせてしまった事を後悔する。
「ご家族は今どこに住んでいるのですか?」
「近くの料理店よ。父様も母様も料理が得意で厨房担当ね。妹がホールを担当しているわ。この戦いを生き抜いたら一緒に行く?ご馳走するわよ」
「その時はぜひ!お願いいたします!」
するとライラは再び笑みこぼして、顔を下に向けながらくすくす声をと共に意外な事を口にする。
「勇者様って結構素直で正直なのね。あなたになら着いていくのも悪くないかもしれないわ。さて、この後はどうする?私は剣技について聞きたかっただけだったけど」
「とりあえず装備の整備と身体を洗ってきます」
雪と泥だらけのこの装備で女性の部屋に入ったのが今更ながら申し訳なく感じる。
「そう、入浴室は地下2階よ。地下の方が温かいからね。武具の整備品置き場も地下1階よ」
「ありがとうございます。それでは、失礼します」
ライラは静かな微笑みと共に手を振ってくれて、僕は地下1階に行く前に隊長が休んでいた会議部屋を覗くと眠っていた。怒られたらそれでいいと思い、来客用のソファーから毛布をとってきて隊長に被せて、地下室へと向かう。
装備の整備と言ったがやり方なんてちんぷんかんぷんだ。悩みながら整備室へ入ると鍛冶場があり、木の丸椅子に第1班班長が鍛冶ハンマーを打ち鳴らしていた。
「おっ!勇者様!先程の剣技お見事でした!もしかして装備の整備ですか?」
「そ、そうなんですけどやり方が全然分からなくて……」
「自分でよければやらせていただけませんか?王国剣パラディアとこの王国の師団長クラスの指揮官用の鎧の手入れなんて人生で初めてなので是非やらせてほしいです。何か改造とかいたしまょうか?」
僕は少し思案を巡らす。敵と戦って分かったが胸と頭、大腿部は特に重要と気がついた。胸は特に槍、頭部は転倒した時の防御等、大腿部は小柳先生が教えてくれた事で大腿動脈と大腿静脈が同時に離断すると人は1分前後で亡くなるそうだ。それらを考慮してお願いする。
「なるほど。勇者様の知識恐れ入ります!自分の鎧も大腿部はほぼ鎖を巻いただけなので改造しようかな……あ、勇者様が仰られた通りに改造するのでどうぞご入浴ください。この拠点のお風呂は温泉なので気持ちいいですよ。1時間後くらいには出来ると思うのでごゆっくりどうぞ」
まさか温泉に入れるとは思いもよらずテンションが上がり、ありがとう!とだけ言って脱衣所へ向かい、上着と下着を脱ぐがこんな寒い所でも戦闘をすると汗まみれになると学んだ。そして浴室のドアを開けると硫黄の香りと落ち着くような温もりを持った風が僕を包み込む。
まずは下着と上着を洗い、脱衣所で干して、待ちに待った温泉に入ると心がとろけそうになるほど温かい気持ちになる。
「ふぅー……疲れたなぁ。今日はもう襲撃はないといいんだけど……」
自分でも思ってない弱気な独り言を呟く。そして時計が午後6時を示し、入浴から1時間半も楽しんでしまったが体がふらつく。これがのぼせか……なんとか転ばすに脱衣所に着くと第1班班長が鎧と剣を置いてくれてる最中だった。
「勇者様大丈夫ですか!?」
「ちょっと気待ちよくて……長湯してしまった……」
「とりあえずこれ飲んでください!」
冷たいガラス瓶に詰められたのは炭酸飲料で甘口だった。コーラやサイダーとは少し違うが美味しくて飲みやすい。そのまま一瞬で1瓶を飲み干す。
「これはなんですか?」
「シュワショックという飲み物です。炭酸温泉が近くにあるのでそれに砂糖などを溶かして冷やした物ですよ」
なるほど。もしかして……
「これを作る際に細長い金属管とか使いますか?」
「確かそうだったと思います」
勝った……!師団長級魔物デストーラを討伐できる道筋が!!あとは隊長達の玉砕攻撃がどこまでいけるか……
そのまま装備を着込んで、会議室兼フロントの隊長の寝てた部屋に向かうとライラによく似た小さい女性とライラがいた。
「あの人が勇者様よ。ミステル」
13歳くらいのミステルと言われた少女は走って駆け寄ってくる。
「勇者様!これ食べて元気出してこの街を守ってください!」
バスケットにはクロワッサンやフランスパンや様々な種類のジャムがあり、目移りしてしまう。
「ありがとうミステルちゃん。僕達が街を守るよ」
「あと、お姉ちゃんをよろしくお願いいたします!」
「ミ……ミステル、そんな事言わなくていいから……勇者様はおやすみください」
僕は頷き、2人に挨拶をしてから客室へ行き、武器と防具を置いてベッドへ寝転がると一刻も経たずに寝てしまう。
ご拝読ありがとうございます!黒井冥斗です!ご拝読お疲れ様です!1日3話というスケジューリングなので前書きも後書きもテンプレートなのをご容赦ください。
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