第6話:北の街アルドスの絶望的戦況
睡眠勇者をお手に取って頂きありがとうございます!本作品は基本的に1日3話投稿で7:10、11:10、18:10になっております。それでは、睡眠勇者夢一郎もといはレイズの冒険を読んで頂ければ幸いです!
第6話:北の街アルドスの絶望的戦況
さてと、ここからどうするか。
ホワイトアウトした一面白銀の世界の中で辺りを見回すとカンテラを吊り下げてる思われる人影が迫ってくる。
「失礼、もしかして勇者様ですか?」
「あ、はい。レイズと申します」
「おぉ!!これで討伐隊の士気が上がるぞ!!……あ、いや失礼しました。とりあえず討伐隊本部まで案内するので着いてきてください」
僕は頷き、彼の背中を追従しながら歩くと僅か2分にも満たない所に街が見え始める。
「こんな近くに街があったんですね」
「旅人や行商人の方々も口を揃えてそう仰います。ここら一帯は年中吹雪が激しく、この街アルドスも見えづらいと言われます」
そんな街の事情を聞きながらアルドスの門をくぐると少しずつだが街の灯りや人々が見え始める。
「衛兵さん、この街の特産物とかって何かありますか?」
「そうですねぇ……アルドスかぼちゃとメークンチーズですね。アルドスかぼちゃとメークンチーズを煮込んだスープとパンがあれば百人力ですよ」
「それは楽しみですね。ちなみにこの街の良い宿屋はどこですか?」
「いえいえ、勇者様にはアルドス討伐隊本部の客室をご用意させていただいております……もしかして宿屋の方がよかったですか?」
僕は失言してしまったかと思い、急いで言葉を紡ぎ直す。
「あ、いえ。その……ここまでおもてなしをしていただけるとは思ってなくて……」
「なるほど。ならば我ら討伐隊も勇者様をたっぷりとおもてなしさせて頂きます!」
街の話を聞きながら、五分ほど歩くと2名のカンテラを吊り下げた衛兵と思わしき人と大きな拠点のような物が視界に飛び込んでくる。
「エルメル班長!彼が勇者様ですか?」
「そうだ。これで魔物の侵攻にも歯止めが利くはずだ」
「「勇者様!待っておりました!」」
想像以上の期待の目線にプレッシャーがかかるが、この街を救う必要があるのは間違いないだろう。元気な声を出しているが目にはクマが出来ており、呼吸も荒い。疲れている証拠だ。
「僕はまだ駆け出しですがこの街のために尽力します」
「「はっ!ありがとうございます!どうぞ、お入りください!」」
木造要塞の建物に入ると過ごしやすい温度と共に複数名の先程の衛兵レベルの装備と銀色の兜や鎧、ブーツで固めた高身長の……女性?胸の当たりが膨らんでるから恐らく女性だろう。そしてその人の前には筋肉ムキムキの赤い鎧を着こなした明らかな古強者を漂わせる恐らく隊長もいた。
「勇者様をお連れしました!隊長!」
ムキムキ古強者隊長はおぉ!と地鳴りのような歓声をあげて、駆け寄ってくる。
「レイズ勇者様お待ちしておりました!私はヘルゴビナ・パライド・ルーンレシア大佐です!どうぞお気軽にヘルゴビナとお呼びください!そこの銀色の鎧を着ている美少女は……」
銀の鎧を着た女性が兜を外す。纏められた金髪が解放され、フワリと宙に浮くように広がり金髪ロングストレートだと分かる。そしてサファイアのような青い瞳。貴族の出だろうか?
「勇者様お待ちしておりました。私はアースヴァーン・パラシア・ライラ中佐です。呼び方はお任せします。ちなみにですが隊長や隊員からはライラお嬢と呼ばれております」
ライラさん……素敵で綺麗な女性だ……
「ては、僕も名乗らせていただきます。パラグレス王国第2王子現勇者ロードシア・パラグレア・レイズと申します。呼び方には特にこだわりはないのでお好きにどうぞ」
再び隊長を含めた討伐隊メンバーが雄叫びをあげて盛り上がる。だが大きな声を出していても疲れてる目をしてるのは隠しきれていない。街の防衛は厳しいか……
「それでは作戦会議に入る。各班長と勇者様とライラお嬢は俺の前に集まれ」
ヘルゴビナ大佐が声をかけると班長クラスの隊員達が「はっ!」と枯れかけた声を上げて集まる。
「勇者様にご解説します。現在5名一班で6個存在し、私と隊長の計32名で街を守り続けてきました。しかし勇者様もご察しの通りかなりギリギリのラインで防衛してます。増援の準備と到着まで1週間かかると王国からの書簡も届いており、なんとか防衛する所存です。万が一の時は街の武術使いを含めて50名体勢まで増強は可能です。医療拠点はこの北と南の2ヶ所の診療所のみです。光属性魔法の医師が各2名と看護師各5名のため、数名重症を負ったら医療リソースは尽きます。勇者様いかがですか?」
僕は軍事戦略を習った事や考えたことも無いが少なくとも持久戦に持ち込まれたらかなり厄介なのは間違いないと感じる。短期決戦が望ましいだろう。
「魔物はどこから来ますか?」
「東のドランド山道から10体単位で来ます」
素早くライラお嬢が答える。
「ドランド山道の地形を見る限り、一度に広範囲な攻め方はできません。しかし山道を突破されれば街の東広場が戦場になるという事態に陥れば必要となる戦力は増えます。よって山道内に戦力を集中させて、定期的に交代させる戦術が望ましいと思われます」
班長の方々がまたもや雄叫びをあげる。別に歴史の教科書を見た内容を元に想定しただけなんだが……
「勇者様の先見の通りです。我々もその戦略を取っていますが、既に7割が死んだ。そして戦線は3km下げました」
隊長は辛そうに語る。瞳には先程の強い瞳から自分の無力さを嘆くような悲しい瞳と涙が僕の視界に入る。
「辛い話で申し訳ないのですが何故100名以上いた討伐隊がここまで……」
隊長は拳を握り、机をドンと叩く。
「俺のせいだ!俺があの師団長級魔物のデストーラを殺せていれば70名の仲間は死ななかった!カイン少佐もレンゲル大尉も……そして前隊長のグルドアン准将も……」
隊長は泣き崩れ、拳を何度も机に叩く。
「勇者様申し訳ございません。隊長のいた精鋭班の20名はデストーラ防衛を担ったのですが煉獄剣の四刀流のデストーラに隊長以外は戦死し、隊長は当時の最友のカイン少佐から逃げて壊滅報告をしろと言われたそうです」
隊長は僕の瞳を強く見て、信頼と復讐の目で僕に訴えかける。
「勇者様……いえ、レイズ殿!デストーラはまた攻めてくるに違いない!私は……私は……仇を取りたい!その為ならこの命を捧げると決めている!だから力を貸してほしい!」
僕の中での答えはこの訴え以前から決めていた。
「もちろんです。ヘルゴビナ大佐、1週間という短い期間ですが全力を尽くします」
「ありがとう!ありがとう……!!では、勇者様お部屋へ私が直接案内します。ライラお嬢も着いてこい」
「承知致しました隊長」
この3人で行くという事は何か重大な話があるのだろうか?僕は気になりながらも通されたブラウンのシンプルな木造のドアを開けてもらうと暖炉にベッドが2つ、机にタンスなどちょっと良いロッジのような部屋だった。暖かく、真ん中の机にはチーズとパンも置いてある。気前の良さはバチコーンだと感じた。
「勇者様、ライラお嬢。3人で少しだけお話させてもらえないか?」
やはり予想通りだ。確か師団長級魔物のデストーラだったか。その話だと直感で分かる。
「私は構いません」
「僕も大丈夫です」
「そうか、ありがとう」
ヘルゴビナ大佐は扉に鍵をかけて3人が席に座ると重い口を開く。
「単刀直入に言う。次にデストーラが現れたら俺と最後の精鋭班10名で玉砕するつもりだ。可能な限り腕を切り落とし、可能なら相討ちと考えている」
その発言に僕以上にライラが驚きと怒りを示していた。
ご拝読ありがとうございます!黒井冥斗です!ご拝読お疲れ様です!1日3話というスケジューリングなので前書きも後書きもテンプレートなのをご容赦ください。
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