第3話:意外とシンプルな旅立ちの儀とこの世界の魔法について
睡眠勇者をお手に取って頂きありがとうございます!本作品は基本的に1日3話投稿で7:10、11:10、18:10になっております。それでは、睡眠勇者夢一郎もといはレイズの冒険を読んで頂ければ幸いです!
第3話:意外とシンプルな旅立ちの儀とこの世界の魔法について
王宮の朝食はこんなにも豪華なのか。トマトスープやスクランブルエッグ、複数種のサラダにいくつもの出来たての温かく優しい香りのパン。心が躍る、病院食が不味いとは言わないが、見た目だけ見ると病院食があまりにも貧相に思える。
「とうとう旅立ちの儀だなレイズ。お父様も楽しみにしているから無理しない程度に頑張れよ」
「ありがとうございます。お兄様、1つお聞きしたいのは旅立ちの儀とは何をするんですか?」
「そうか、レイズは知らないんだったな。このパラグレス王国建国時に最初に湧いた湧水の聖水で顔を洗い、国王陛下に魔王討伐を誓うだけだよ」
想像よりシンプルかつ短くて安堵する。安堵のため息後にトマトスープを口にするとその甘酸っぱさと濃厚なトマトの香りが鼻腔を突き抜け、心も落ち着く。
「ところでレイズ、ずいぶんと落ち着いてるな」
「え?そうですか?」
僕の記憶の書庫を漁ると昨日までお兄様に泣きついていたレイズの記憶が見つかる。しまった……記憶量が多すぎて盲点だった……
「まぁ、レイズが自信を持ったならそれでいいよ。お父様もきっとお喜びになるだろう」
「ですがお兄様もう1つお聞きしたい事が……」
「なんだい?」
「魔王討伐って具体的に何をすれば……」
お兄様は少し思案を巡らせ、分かりやすく答えてくれる。
「そうだな、世界中を旅して強い仲間と装備を集めて挑む事だな」
「それなら全世界の軍隊で攻めた方がよくないですか?」
お兄様は指をパチンと鳴らし、良い質問だ。と応える。これがお兄様の癖だった事も今思い出した。
「魔王のいる魔界には生きている存在は一度に6名までしか入れない。もちろん仲間になったモンスターも例外では無い。理由としては簡単に言うと魔界の警戒網に引っかかて総力を挙げて叩き潰されるからだ。それとお前に護衛を付けずに旅をさせるのも理由があってな、護衛が多ければ魔王に情報が入ってしまうというリスクと勇者本人に選ばれて冒険した仲間は盟友の証が右手に出来て魔物の元となる魔障に耐性が付くんだ。だから大変かもしれないがお前一人で仲間を集めてくれ」
なるほど。レーダーに引っかかるという事か。となると優秀かつ伸びが期待出来るパーティを作らねば……それも重要だがこのパンも美味しいなぁ。柔らかくて優しい香りがする。病院食の菓子パンとは、味も香りも比べ物にならない。
そして朝食を済ませると王の間へ通されるのだがとにかく贅を尽くした豪華な内装は病院からほとんど出たことない自分には宝石のように見えた。衛兵の方々もビシッと敬礼してくれるのは慣れない感じだったが自分も敬礼を返すと驚かれた。
「レイズ、お前変わったな。昨晩何かあったのか?」
「この城を旅立つわけですから今のうちに覚えてもらおうと思って」
と苦し紛れの言い訳をする。
「そうか、お前ならきっと魔王を倒せる。疲れたりしたらまたここに来い」
「ありがとうございます、お兄様」
そんな軽い話を何個かしていると王の間へと着く。華やかな装飾の大きなドアと2名の金色と青色を元にしたマント付きの鎧で身を固めた兵士達が立っていた。ただものではないのは誰が見ても理解できるだろう。
「レイズ勇者を連れてきた。これより旅立ちの儀を行う!通せ!」
お兄様が凄い剣幕で先程の2名の兵士に指示を送る。
「「はっ!国王陛下、勇者様が参られました!」」
「通せ」
と小さい声ながら聞こえてくる。
王の間の扉が開かれると漫画で見たような玉座に王が、つまりこのレイズのお父様がドッシリと構えていた。周りには記憶で見た政府高官やクラリスメイド長達も椅子に座りながら出迎えてくれる。
そして王の間の中央には移動式の洗面台が置いてあり、美しい銀装飾が施されている。
「我が息子、ロードシア・パラグレア・レイズ第2王子は今日この時をもって、勇者の使命を担い、天命の名のもとに魔王討伐を決意する。勇者レイズよ、顔を洗いたまえ」
「承知致しました。国王陛下」
洗面台に近づくにつれて心臓の鼓動が激しくなる。1歩進む度に周りの視線は熱くなり、期待に満ち溢れているのが分かる。病院にいた頃の自分とは縁のない感覚だった。
そして洗面台前に着き、両手で顔を洗う。冷たいただの水のように感じたし、特別な効果とかは無い……と思われるが決心がついた気がする。
「では、勇者レイズよ。魔王討伐の宣誓を」
「宣誓!私、勇者レイズは魔王討伐による世界の安定と平和の為にこの命尽きるまで努力する事を誓います!!」
「皆の者拍手!」
ぱちぱち!と拍手喝采が鳴り響く。
その後の晩餐会は騎士団長や師団長クラスの人と魔物の動きについて話し合ったり、魔王を今まで討伐してきた勇者の特徴などを聞いて静かに幕を下ろした、その後お兄様とお父様と自分の3人で王宮の中庭のガーデンでコーヒーを飲みながら今後について話し合っていた。
「レイズ立派になったなぁ!昨日まで勇者の使命なんてお断りだぁ!とか言っていたのに」
「僕はたくさんの人にお世話になりました。だから報いるためです。そして人生は一度と考えれば命を懸けて世界を救うのも悪くないような気もしたので」
月夜の下で城内を抜ける涼しい秋風が僕らの髪を揺らす。そこでようやく思ったのが僕の髪はお父様とお兄様の金髪ではなく、ダークブラウンだった。
「お父様、実はちょっと記憶が思い出せないのですがお母様の髪の色って何色でしたか?」
「ローレライの髪の色は……あぁ、懐かしいな。お前と同じ色だ。ローレライは私に尽くしてくれたよ。平民の出だったが計算が非常に早く、記憶力も良かった。そして何より好きな人と国への忠誠。私にピッタリな女性だったよ」
なるほど。話の内容がほとんど過去形の事からレイズの記憶が定着するような5歳とか3歳になる前に亡くなったのだろうか……
「国王陛下、そろそろ勇者レイズの今後の計画について話し合いましょう」
「そうだな、まずは大陸横断鉄道に乗って南のセングラード帝国へ向かうといいだろう。あそこには勇者と共に戦いたいという者が沢山集まっていたり、武器や防具も豊富にある。その後は飛行船に乗って花と水の都サーンライトへ飛行船に乗るといいだろうな。サーンライトには1度だけ生き返る事が出来る『命の奇跡の花』がある。魔王と戦うなら必須だろう」
そんな便利なアイテムがあるのか。どんな花なのかも気になるし、どういう理屈で生き返るのかも気になる。あと魔法が存在するらしいが一体僕にはどんな魔法が使えるのだろうか。
「お兄様、僕はどんな魔法が使えるのでしょうか?」
「そういえば勇者レイズは魔法の勉強は苦手だったな。光属性の回復魔法3種類と聖属性の攻撃魔法3種類だ。生まれた時から使える魔法は限られるが種類は増やせる。神属性を除く全ての基本属性には属性神が存在し、彼らに付き従う聖魔者達に会えば簡単に教えてくれる場合もあれば試練を与える場合もある。勇者達は大抵軽めの試練がある事が多いらしいがレイズは無理に試練に挑戦するのは愚策だな」
なるほど。まるでゲームのRPGみたいだ。とりあえず最優先すべきはパーティの編成か……
「さて、明日も早い。勇者レイズはそろそろ寝た方がいい。明日午前七時の帝国行きの大陸横断鉄道に乗るのがいいだろう。人も少なく、帝国に着く頃には沢山の職業会得者達が待っているだろうからな」
「ご高配いただき感謝します。それではお先に失礼致します」
「最後にこれだけ聞いてくれ、お前が勇者を辞めたくなったらいつでもここに帰ってこい。私はお前のお父さんでもあるからな」
「ありがとうお父様」
とだけ言い、僕は再び私室に戻るとクラリスメイド長が部屋の前に佇んでいた。
寂しそうな表情を見せており、僕は勇者としてではなく、お世話になった身として最後の夜を共にしようと思った。
ご拝読ありがとうございます!黒井冥斗です!ご拝読お疲れ様です!1日3話というスケジューリングなので前書きも後書きもテンプレートなのをご容赦ください。
これからも睡眠勇者をよろしくお願いいたします!レビューや評価も面白ければお気軽にして頂けると励みになります!




