第1話:睡眠勇者爆誕
睡眠勇者をお手に取って頂きありがとうございます!本作品は基本的に1日3話投稿で7:10、11:10、18:10になっております。それでは、睡眠勇者夢一郎もといはレイズの冒険を読んで頂ければ幸いです!
第1話:睡眠勇者爆誕
「こうして、勇者様は魔王を打ち倒し、人類に平和な日が訪れました。どう?僕はあまり朗読に自信があるタイプじゃないんだけど」
「小柳先生の朗読、僕は好きです。いつも時間を見つけてくれては義務教育も教えてくれたり、夜勤の時は寝る前に朗読してくれる事も嬉しいです」
こう言うのは僕、時乃川夢一郎。先天性心疾患により、病院からほとんど出たことがない。だから義務教育は普段は母が教えてくれて、より細かい内容は主治医の先生である小柳先生から教えてもらっている。そして小柳先生は夜勤当直の時に時間を見つけては僕に本を読んでくれる。タイトルは時を超える勇者という少し幼い子向けの本だが僕にとっては夢中になれる1冊だった。
そして憧れでもあった。8畳程度のこの病室の世界は、僕の探究心を満たしてくれたことは1度もなかったからだ。
「時乃川君は病気が治った後は考えたことはある?僕は君の主治医として絶対に治すつもりだから聞いておこうかなと思ってね」
僕は思考を巡らすが特に思い当たらない。5歳の頃までは小学校に行けると思ってワクワクしていたが知らない内に5年経過し、今じゃ10歳。仮に治っても履歴書に10年間入院なんて書いたら社会人としての合格通知なんて来ないだろう。
「ちょっと思い当たらないですね……でもこのお話のような勇者になりたいです」
小柳先生は静かに聞いてくれた。そして重たい雰囲気の中で小柳先生は僕の氷のような冷たい手を握り、力強く願ってくれる。
「夢一郎君、君にはたくさんの可能性がある。義務教育の記憶能力や応用能力も高いし、そこの本棚には物凄い量の専門書もかなり覚えてるのは僕も知っている。だから人生を諦めないで!治ったら一緒に温泉巡りとかどう?」
「ラドン温泉とか憧れますね」
僕は本棚の火山に関する専門書で読んだ温泉の種類を語ってしまう。
主にラドン温泉は希少という事と自律神経失調症等に効果的だということを語った。
「詳しいね。凄いよ夢一郎君。僕もこの後仕事だし、夢一郎君と行く温泉探しに行かないとね」
「先生の温泉探しの感想もぜひ聞かせてくださいね」
「うん、楽しみにして欲しい。それ、じゃあおやすみ」
「おやすみです」
先生は疲れ気味と言わなくわかる通り、重たそうな足音で僕の病室の個室を去る。いつもこの時が1番寂しい。そして自分の存在に疑問を持つ。生きていていいのかと。
音のない静かな個室で僕は瞳をつむり、今日も生き長らえた事に感謝すると同時に明日こそ生きてもいい理由が見つかりますようにと祈る。
そして4年と半年が経った。
僕は結局小学校にも通えず、中学生になれたとしても数ヶ月しかなかった。だが今はそれよりも明日の夜は僕は15歳を迎える。小柳先生も楽しみなようでケーキを作ってくれるらしい。
そして今日は父と母が揃って15歳の誕生日を出迎えてくれる。そのために仕事を休んだのは僕としては申し訳なさを感じたが2人は僕の傍にいてくれた。
「夢一郎、小柳先生はどんなケーキを作るか知ってる?」
母さんの素朴な疑問に答える。
「えーなんだろう。チョコケーキだと嬉しいな」
「フルーツは多い方が好き?」
「確かにパイナップルとかイチゴとかあると嬉しいかも」
質問しながら母はスマホに入力している。そこで察しがついた。
「母さん、もしかして小柳先生から偵察命令を受託した?」
「あ、バレた?」
「あと多分お父さんはこの後にプレゼントの内容聞く予定でしょ?」
「あーバレたかぁ。何が欲しい?」
「表計算ソフトと文書執筆能力のあるパソコン」
そう、僕には夢がある。時を超える勇者のような小説を書くと。もし、この8畳程度の自分の世界から壮大な勇者が生まれたらそんなに嬉しいことはない。
「ゲームとかしなくていいのか?お父さんはこれでも貯金はあるからもっと良いパソコン買えるぞ」
「お父さん、そしてお母さん。僕は小説家になりたい、だから今のうちに練習したいんだ。もしワガママを聞いてくれるなら小説関連の教科書も欲しい」
僕は初めて夢を語った。心の奥の炎が燃え上がるような希望とやる気。これこそ人間の生きる意味だと思える。
「よし、お父さんはすぐにパソコンショップと本屋さん行ってくるから待ってろよ」
「私も小柳先生にケーキの情報を伝えてくるわ。夢一郎、1人になるけど大丈夫?」
「人生の半分近くを一人で過ごした息子だよ?今更大丈夫だよ」
「そう?ならいいんだけど……」
2人の足音が遠ざかり、この八畳ほどのそこそこ広めの個室に1人になる。外を見るともう夕焼けが訪れていた。そういえば時を超える勇者では夕焼けは現世が黄泉と繋がる瞬間だと書いてあったなあ。
はぁ、ちょっと疲れたし寝よう。心の中で疲労を呟き、カーテンを閉めて眠りにつく。
意識が遠のくにつれて、体が浮くような感覚を覚える。
「今日はまだ……そんなに……疲れては……」
ピーピーと警告音が鳴っているような気がするがそれすら無視できるほど確実に深く眠りにつく。
まるでこのまま、息を引き取るような感覚と共に。
そして僅かにだが、暗闇の中で光が見えた。まだ弱い光だったが僕には、自分が追い求めてた物だと気が付き追いかける。そして……
「勇者様、起きてください。旅立ちの儀が迫ってますよ」
麗しい女性の声と高級感漂う花々のブレンドした香り。そして病院のベッドよりも明らかにフカフカで広い寝床。
……ん?なんでそんな所にいるんた?
「勇者様、お目覚めになりましたか?少し驚いてるような顔をしてらっしゃいますが……」
目の前には赤髪のロングストレートの髪型をした、恐らくメイドさんがいる。僕の体験したことの無い記憶を総動員させながら、平然を装う。
「あぁ、クラリスメイド長。ちょっと眠り過ぎただけだよ」
「それならばよかったです。朝食の時間も迫っているのでお着替えを手伝わせていただきます」
待って、こん綺麗で美しい女性の前で着替えさせられるのか?
恥でウロウロする間もなく、クラリスメイド長は僕の下着姿には一切動じず着替えを済ます。
「これで完璧です。勇者様、第1王子殿下も共に朝食を摂りたいそうなのでお付き合いください」
第1王子……僕のお兄さんか。いくら記憶があるとはいえバレないものだろうか。と言うより僕は死んだのか?少なくとも現時点でははっきりしない以上、周りに流されながら動くしかない。
クラリスメイド長が、僕の私室の中世の王宮らしい赤と金色を基調とした、若干目が痛くなるほど豪華な部屋のドアを開けると長い廊下と絵画、レッドカーペット。まさに王族で自分がこの国の第2王子にして勇者の天命を背負ったロードシア・パラグレア・レイズだと実感する。
ご拝読ありがとうございます!黒井冥斗です!ご拝読お疲れ様です!1日3話というスケジューリングなので前書きも後書きもテンプレートなのをご容赦ください。
これからも睡眠勇者をよろしくお願いいたします!レビューや評価も面白ければお気軽にして頂けると励みになります!




