第14話:現実での固形食とお人好し勇者様
睡眠勇者をお手に取って頂きありがとうございます!本作品は基本的に1日3話投稿で7:10、11:10、18:10になっております。それでは、睡眠勇者夢一郎もといはレイズの冒険を読んで頂ければ幸いです!
第14話:現実での固形食とお人好し勇者様
今日も見慣れた天井、朝日が昇っていた。本棚を少し眺めてタイトルから居合術の本を1冊取り、読書灯を付ける。
「勝負の場においても礼節を尊ぶ……か。そして日本の武術らしく抜刀が基本か。となると白薔薇の剣なら間合いの確認と敵の位置確認、一撃で決めるべきかな……」
読書にふけっていると小柳先生が料理をお盆に乗せて持ってくる。
「おはよう夢一郎君、久しぶりの固形食だけど食べれそう?」
「おはようございます小柳先生。少しなら入ると思います」
アジの開きと味噌汁と白米と納豆が並べられており、久しぶりの日本食を目にする。
「あの……小柳先生……本当に恥ずかしいんですけど……」
「どうしたの?」
「箸の使い方を忘れました……」
小柳先生は最近の僕の夢の世界での報告を思い出して、「無理もないね」と言って優しく質問してくれる。
「じゃあ、僕が食べさせてあげようか?」
「お願いします……」
15歳になって箸が扱えないなど恥ずかしいにも程があると自分に言いながらも日本食を平らげる。
「凄いね夢一郎君。全部食べれるなんて」
「一応あっちでは毎日食事してるのでそれのお陰もあるかもしれないです」
「なるほどねぇ、ん?居合術の本読んでいたんだ。やっぱり戦闘?」
「前に話した魔物討伐隊の副隊長さんに今じゃ全勇者の中でワースト5位以内って言われたので……」
すると小柳先生はニヤニヤと楽しそうに笑みを見せながら何か面白いと確信させてくれる口調で語り出す。
「実は僕、実家が大日本居合道嗜好会の総本山で全10段位の内、僕は4段持ってるよ。兄さんは2段でお父さんは1段、お爺様は段位を決めた当主かつ実力から剣人の段位を与えられているんだ」
僕は唖然としながら聞いていた。小柳先生の実家は相当な武術の手練でありながら、人を癒す医師でもある、素晴らしい名家だと。
「小柳先生って文武両道なんですね……」
「まぁ、1度この病院に刃物を持った人が来て僕が対処したからね」
そんな過去は初耳だ。だけど面白そうなので聞いてみる。
「どうやって制圧しましたか?」
「相手は包丁かつ極度興奮状態だったから、患者さんや他の人を下げさせた上で包丁を何度も壁に当たるように限界まで引き寄せてかわしてたね。こちらが攻撃すれば正当防衛は明らかに成り立つけど僕も居合術の血が騒いで、警察が来るまで回避を続けてたら包丁が折れて、逃げようとした時にはもう警備員に拘束されたね」
この戦法は使える。仮に帝国の勇者が高威力かつ高速で振ってこれば武器が壊れるまで回避すれば希望はある。
「ちなみにどれくらい回避しました?」
「うーん……何百回だろう。犯人も途中から嫌気がさすレベルの回数かな」
僕は決めた。小柳先生を怒らしてはいけないと。
「小柳先生は西洋剣は扱えますか?」
「和道西洋剣術なら少し嗜んだよ。僕に答えられる範囲ならなんでも質問してほしい」
僕は白薔薇の剣のスペックと今度手合わせするかもしれない帝国の勇者の話をして、対策の享受を願う。
「まず、白薔薇の剣は両刃剣だから腕を何度も振り回す際は自分や仲間に気をつけないといけないのは当然として、西洋の両刃剣は叩き斬ることを前提している事から白薔薇の剣の推定される重さなら本気で叩き斬らないとダメージを与えれないかもね。勇者さんについては見たことないから分からないけど本気の殺し合いは多分考えにくいと思う。だけどそれは裏を返せば本気を出しても死なないという事だから夢一郎君があの世界ではどれくらい丈夫かは分からないけど可能なら一撃も喰らわない方がいいね。『いのちだいじに』だよ」
僕は脳内に定着させるためにルーティンの頭揉みをする。こうすると直前までの記憶がかなり覚わる事が判明して以来多用している。
「ありがとうございます。小柳先生、なんだか眠くなってきました……」
「うん、勇者夢一郎君のお役に立てて光栄だよ。じゃあ行ってらっしゃい」
僕は瞳を閉じるとすぐに目が覚める。
朝日が眩しく、少しずつ瞳を開けるとライラお嬢は肘を窓にもたれかかって頭を乗せて寝ている。
僕はしばらくライラの寝顔を見ていると幸せな気持ちになりながら眺めているとドアがノックされる。
「勇者様、2人分の朝食と緑茶をご用意させていただきました。どうぞご堪能ください。そしてあと3時間ほどでセングラード帝国にお着きになります」
とエプロン姿のおばあちゃんが優しく、お弁当を渡してくれて僕はお弁当を置いた後に金貨を4枚チップ代わりとして渡す。
「ゆ、勇者様からこんな大金受け取れません!」
「おばあさん、きっと体が弱い家族がいるんじゃないですか?おばあさんが付けている指輪はパラグレス王国の結婚式の正式指輪ですから王国の老齢年金が渡されるはずです。なのに働いてるということは……ですよね?」
おばあちゃんは涙を数滴流しながら少し語り出す。
「勇者様のご察しの通りです……孫が重たい肺の病気で治療にはあと数年働かないと薬は買えないのですがお医者さんからはもうそんな長くは持たないと……」
そんな時に第2王子としての記憶が蘇る。それはお兄様からの言葉で弱者を助けることが政治であり、それもまた勇者である。と……本来なら平等に与えるべきだが……
「お孫さんの治療費に当ててください」
と僕は5万ルドシア分の金貨を渡す。お兄様から貰った門出金の半分に相当する。
「そんな……そんな……勇者様、本当によろしいのですか……?」
「僕は健康ですし、働けばお金が貰えますから。お孫さん良くなるといいですね」
「ありがとうございます……ありがとうございます……」
おばあちゃんは何度も感謝の言葉を唱えて、頭を下げて、次の部屋に食事を運ぶ。
「見ていたぞ勇者様」
「ライラ、起きたんだ。先に食べてていいよ。僕はもう少し後にする」
「それはいいんだが、優しすぎるというかお人好しというか……お金は大事に使えよ」
「そうだね、これからは気をつけるよ」
「頼んだぞ、全く……」
ライラお嬢の機嫌を損ねてしまったがそのまま朝食を摂り、1時間後くらいで駅に着くと放送が流れる。
「終点、セングラード帝国中央駅〜繰り返します、セングラード帝国中央駅〜お忘れ物がございませんようにお気をつけください〜そしてレイズ勇者様ご一行は駅長室に訪れください〜」
何かまずい事でもしたかと思いながら、忘れ物の確認後、鉄道をおりると港町を見下ろせる今まで見たことないような街が写っていた。青空を飛ぶカモメに、幾つかの飛行船、駅の出入口の左側には紅い立派な城も建っており、潮風が鼻をつく。もちろん人生初の潮風だからこれが本当に潮風かは分からない。
「どうしました?勇者様?」
「……いや、この景色に感動していて……」
「これで感動していたら前魔王を倒した勇者のグラン・フェルドリード皇国はもっと凄いぞ。蒸気機関の戦艦や白を基調とした魔法皇都グラドスは絶景だから勇者様倒れちゃうかもな」
「いや〜楽しみが増えたよ。さぁ、駅長室へ行こう」
駅長室に向かうと先ほどのおばあちゃんと2名の駅員が立っていた。
「レイズ勇者様、お呼び立てして申し訳ございません。この方に5万ルドシアをあげたのはレイズ様で間違いないですか?」
「そうだ、僕が渡した」
すると駅員2人が見つめ合い、頭を下げる。
「レイズ勇者様のご高配感服いたしました。これは世界交通連合から預かっている物です。信頼出来る勇者2パーティ分の特別永久無料乗車券の内の1枚を授けます。これで飛行船も鉄道も蒸気船も特別待遇室でお乗りいただけます。もちろん勇者様のお仲間6名までです」
こんな棚ぼた餅どころが棚から金塊みたいな……
「い、いえ……そんな他の勇者の方に……」
「レイズ様、あなたは自分の勇気とご慈悲に恩恵を受けるべきです。受け取らないのであればセングラード帝国城に送り、無理にでも渡します。実はこのおばあちゃんの旦那さんは元大陸横断鉄道の鉄道省のお役人さんで、お孫さんも鉄道省の整備部門トップでしたが魔物に襲撃された際に毒ガスを吸ってしまい、肺に病を。それで鉄道に遅れが生じたのです」
そういう事なら受け取っておくか。祖国に帰りたくなった際に鉄道に乗るお金もないのは大変だからなぁ。
「では、ありがたく受け取ります。お孫さん早く元気になるといいですね」
「ありがとうございます!レイズ勇者様!」
駅員と弁当売りのおばあちゃんに見送られ、駅を出るとレンガ造りの建物が無限かのように並び立ち、まさしく迷路を作り出している。
ご拝読ありがとうございます!黒井冥斗です!ご拝読お疲れ様です!1日3話というスケジューリングなので前書きも後書きもテンプレートなのをご容赦ください。
これからも睡眠勇者をよろしくお願いいたします!レビューや評価も面白ければお気軽にして頂けると励みになります!




