第11話:遺された決死隊と勇者の現代物理知識
睡眠勇者をお手に取って頂きありがとうございます!本作品は基本的に1日3話投稿で7:10、11:10、18:10になっております。それでは、睡眠勇者夢一郎もといはレイズの冒険を読んで頂ければ幸いです!
第11話:遺された決死隊と勇者の現代物理知識
そして計11名の決死隊が用意を整え、馬に乗り、山道へと向かう。僕は隊長の命令でライラお嬢の部屋の前に立つように言われて大人しく立っていた。
「いるのだろう?」
「気付かれましたね。先程妹さんが訪れて、APFSDS弾の試験モデルが完成したそうです。実物を見ましたがユゴニオ弾性限界を起こせるかは微妙ですね」
「だが街の人が一生懸命作った砲弾だ。いざと言う時は……」
「分かっています。大砲も直に完成する見込みとも仰っていました」
するとクスッという微かな笑い声と共にライラお嬢は嬉しそうに答える。
「さすが私の妹だ。伝えるべきことはしっかり伝えれるいい子だろう?」
「はい、その……ライラ。本当に僕の仲間になるのですか?」
「嫌か?」
意地悪な質問だと思ったが、僕は素直に自分の気持ちを伝える。
「そんな事ない、大歓迎だよ。一緒に旅に出るのが楽しみだ。だけどその前に師団長を倒そう」
「言われなくても分かっている。勇者様、私の部屋にいてくれないか?万が一隊長達が突破されたら第5班が私達2人をすぐに呼べるように」
正直僕としてはライラお嬢は1人で悩み考えるタイプだと思っていたがどうやら寂しさと合理性を兼ね備えてるらしい。
ドアを開けるとぬいぐるみを抱きしめながらベッドに横になっているお嬢が最初に目に入る。
「書斎の机とか片付けたんですね」
「もう副隊長でもないからな。さて装備の手入れをするぞ。磨き砂や簡単な鍛治設備ならあるから鍛えておかねばな」
2人で雑談しながら2日ほど徹夜し、武器と防具を決戦仕様に整える。無論僕は鍛治設備の使い方なんて分からないのでお嬢直伝の軽くて丈夫にする技法を教えてもらった。
「ふぅ……やっと終わったな」
「えぇ、2日間も徹夜したのは初めてです。少しだけ休みませんか?」
「そうだな、勇者様には私の抱き枕になってもらおう」
「仲間なら引き受けるのが筋ですね。僕でよろしければ」
ライラ嬢は何か違うような表情を顔に見せて、心の声を漏らす。
「私が忠誠を誓ったのは隊長だ。その隊長が勇者様を支えろと言うならそうするだけだ……だが勇者様は素直で優しい1面は好きだな」
「ありがとうございます。では、失礼しますね」
2人でベッドに入ってる事1時間半程度だろうか、意識がもう少しで飛びそうなタイミングで階段を駆け上がる音が聞こえる。
「……来ましたね」
「だな」
僕達は直ぐに起き上がるとドアを緊急事態のため無作法に開けられ、第5班班長が伝える。
「隊長及び第1班班長より伝令!我が決死隊敵の腕2本と片目と側近を撃破なれど決死隊壊滅、第1班副班長が伝えに行く。との事です!」
僕達は話を聞きながら装備を装着し、1つの疑問を投げかける。
「副班長の容態は!?」
「意識はありますが酷い火傷と裂傷を負っています!」
装備を付け終わると最初に来た時は期待の目線で見られて歓迎された討伐隊本部ロビーには5名しかおらず全員がこちらを向いていた。その目線にはかつてのような希望などはなく絶望と死から必死に逃げようとしており、それでも守るべき街の為に自らを奮い立たせるのを感じる。
「隊長より最後の伝令!勇者様が我らの最後の隊長として任命するとのこと!隊長、ご命令を!」
僕はじっくり考える。僕なんかで上手く指揮できるだろうか。
「ここにいる7名はこの街の最後の砦であり、今も尚街の人々は最新型の砲弾と大砲を作っている!我々が死ねば彼らも死ぬ。家族もだ!私からの命令は1つ!生き残り戦力として最後まで戦い続けよ!玉砕は許可しない!私も勇者であると同時に隊長として戦うつもりだ!」
「「「うおおおおおおおお!!!」」」
様々な激励の言葉が飛び交い、最後の打ち合わせとして大砲と砲弾の設計を担っているアルドス街ドワーフ長に話を聞くと4時間後に完成予定とのこと。
街の人々は手を止めて僕達7名を見送り、僕達も敬礼を返し、山道を馬と共にかけ登る。
「ライラ!山道はあとどれくらいで頂上だ!?」
「おおよそ2km!そこからは下りで浜辺がある!!」
あの大砲の射程的に予想命中精度と威力からして街の1キロ圏内まで引きつける必要があるが敵がそれに気がつくか……
山頂に近づくほど吹雪が激しくなるが赤い点が見える。
「総員!戦闘準備!!」
僕の叫びとも言える指令の後にライラが目を見開く。
「待て!……あれは隊長!?」
「なんだと!?」
第5班にも激震が走る。それと同時に馬に乗っていても分かるほどの地面が揺れる。
「師団長級デストーラを確認!」
ライラが双眼鏡で確認する。
それと同時にライラは隊長にかけ走る。だがあの死んだと思っていた隊長の叫び声が聞こえる。
「街まで引き寄せる!後退しろぉぉぉぉ!!!」
7名しか居ない討伐隊は従う他はなく、街まで一気にかけ下りる。そして僕も指揮を下す。
「この位置なら大砲の射撃可能位置だ!ここで迎え撃つぞ!!」
ライラは駆け下りてる最中も頻りに隊長を見ていたが配置に着いた時に双眼鏡を落とす。
「隊長……危ない!!」
ライラの声も虚しく、僕も双眼鏡で見たが煉獄剣が隊長の心臓を穿った。だがその瞬間隊長の体が輝くと爆発し、煉獄剣を持つ腕は残り1本、左上のみとなり、同時に雪崩でデストーラも流され射程圏内に入る。
「今だ!隊長の死を無駄にするな!大砲の命中率を上げるために動きを制限させるぞ!!」
7名の騎士達は動き回りながらデストーラを囲み、デストーラは片手を振り回すがここまで来た7名だ、そう簡単には当たらず武器で防ぎながら守り続ける。
デストーラも嫌気が差したのか飛び上がり、ライラお嬢に飛び斬りを仕掛ける。
お嬢もすぐに両手で剣を支え、なんとか防ぎ、ギリギリで守る。だが相手は自分よりも強かった隊長を殺した化け物だ、剣にヒビが走り始め、そう長くは持たない。
「隊長……今お傍に向かいます……」
「僕の仲間は殺させはしない!!」
僕は騎士剣クルセイドでパラグレス王国式剣術の第3種目「王の殴り上げ(キングアッパー)」に自らの魂を宿すつもりで両手で決める。
「はあぁぁぁぁぁ!!」
デストーラがバランスを崩した瞬間だった。動きが予想しやすく、撃てという間もなく雷のような激しい砲撃音と共にデストーラを上半身と下半身を分断する。
勝った……
ブォォンンと煉獄剣を投げようとするデストーラの腕を回転斬りで吹き飛ばすと同時に首を切り落とす。そんな技ができるのは……
「勇者様、勝ちましたね。最後の油断以外は100点だ」
「ですね、僕は油断しました。ライラ、ありがとう」
「お礼を言うのはこっちだ。あの時煉獄剣で折れそうになった私の剣と私を助けてくれてありがとう」
その夜、街中の料理店が討伐隊本部に料理を持ってきて、大砲や砲弾を作った人達も招いてどんちゃん騒ぎをした後に僕は隊長の部屋に入る。
隊長の義手の手術をした際にデストーラを討伐したら入ってくれと言われたので、鍵を開けて入ると簡素なベッドの上に2本の剣が置いてあった。黒の薔薇の剣と白の薔薇の剣で手紙もセットになっており、手紙を読む。ただ利き手じゃない手で書いたのか読みづらいが感情は伝わった。
『よぉ〜勇者様、これを読んでるって事はデストーラは倒せたようだな。ライラお嬢も生きてるって信じてるぜ。お嬢には申し訳無いことをしたな。後で俺の代わりに謝っておいてくれ。さて、この2本剣は2人のパートナーの証として持っていて欲しい。個人的には勇者様は黒薔薇でライラお嬢は白薔薇だが、まぁ好きに選んでくれ。この剣は俺が討伐隊に入る前に救った花と水の都サーンライトで事件を解決した時にもらったやつだ。本人の心が折れるまで折れない剣だからきっと役に立つぞ。魔王を倒す日を待っているぜ。』
「隊長……」
ご拝読ありがとうございます!黒井冥斗です!ご拝読お疲れ様です!1日3話というスケジューリングなので前書きも後書きもテンプレートなのをご容赦ください。
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