第9話:現代兵器の理論は魔法の世界に通用するか
睡眠勇者をお手に取って頂きありがとうございます!本作品は基本的に1日3話投稿で7:10、11:10、18:10になっております。それでは、睡眠勇者夢一郎もといはレイズの冒険を読んで頂ければ幸いです!
第9話:現代兵器の理論は魔法の世界に通用するか
目を開けるとやはり病室だ。どうやら集中治療室から一般病棟に移ったらしい。
ベッドの机にはノートパソコンもある。とりあえずナースコール押しておくか。
「夢一郎です。目が覚めました」
「承知しました!小柳先生が直ぐに向かいます」
待ってる間に本棚から武器の歴史という本を読みながら、今後の戦略を考える。それから数ページほど読むとノックと共に小柳先生が入ってくる。
「おはよう、夢一郎君。夢はどうだった?」
「やはり、この前の続きでした」
「なるほど。実はこの前黒咲先生から連絡があって覚醒不明症の患者さんは皆夢の続きを見ているそうなんだ。しかも皆異世界を冒険しているらしくてね」
もしかして勇者の使命を背負っている者たちって……まさかね。
「先生、このパソコンって使ってもいいですか?」
「あ、うん。君のお父さんが好きに使わせてあげてと言っていたよ」
僕は夢のレポートを取ると決めて1時間くらい小柳先生にアドバイスを受けながらパソコンの初期設定を終わらせて、文書ソフトで夢でのやり取りを記入する。
「夢一郎君は夢の中では勇者で、しかも頼られる存在なんだね。あと温泉にも入ったんだ」
「人生初温泉は1時間半くらい入浴しましたね」
「それは入り過ぎだね……」
「小柳先生って物理か軍事に詳しくないですか?」
小柳先生は鳩が豆鉄砲食らったような唐突な質問に混乱しながらも答える。
「ま、まぁ、戦争のドキュメンタリーとか物理実験の動画を見るのは好きだよ」
「じゃあ……」
僕は小柳先生にデストーラの事と考えてる戦法を話す。
「確かに戦車の主砲の滑腔砲の原理を再現出来れば煉獄剣とかっていう剣も破壊できるかもしれないね。もし、材料があればAPFSDS弾(装弾筒付与翼安定徹甲弾)が出来たらユゴニオ弾性限界で物理的な強度は無視できるけどあと1週間でできるかどうか……」
先生とアイデアを協議していると院内放送が鳴る。
「筑波先生が1階から呼んでいます。手の空いている先生及び看護師は至急向かってください」
僕はこの病院内を散歩した時に担当医表を見たがここに筑波先生という医師はいない。つまり……
「スタットコールですか……」
「流石夢一郎君、詳しいね。僕も直ぐに行ってくるよ」
「絶対に助けてあげてください」
「全力を尽くすよ。これでも元急救命科にいたからね」
そして小柳先生は出ていく。その間にも僕はAPFSDS弾の知識を脳内に詰め込む。黒色火薬でもギリギリ可能だが侵徹体の重金属または劣化ウランをどうやって手に入れるべきか。パソコンの電源を落として考える。
王国剣パラディア……あれってかなり重たかったよな……?一か八か……
僕は再び眠りにつく。
重たい瞼を開くとライラお嬢が椅子に座りながら、楽そうな姿勢で本を読んでいた。
「ライラ……お嬢……?」
「あぁ、目が覚めたか。もう夜もすっかり更けているぞ。だからチーズパンを作ろうと思ってな」
ライラの面倒見の良さに正直頭が上がらず、暖炉で温めたパンにとろけたチーズをかけて頂く。
「美味っ!え!?王宮でもここまで美味しいパンは……」
「当然だ。私の母様は世界パン作り競技世界3位の実力の持ち主だからな。だからお店もよく流行るんだ」
世界パン作り競技とかあるのか……
僕は一時も経たずに用意された2本のフランスパンっぽいパンとチーズを食べ切ってしまった。
こんな美味しいパンを作ってくれるお店が魔物に破壊されるわけにはいかないと多少私情も交えて対師団長級デストーラの決戦兵器を忘れる前に設計する。
「ライラ、ペンと紙ありますか?」
「そうだった。勇者様と作戦を練る為に予め用意しておいたぞ」
流石副隊長。気合いの入り方や準備が念入りだ。
僕は脳内で描いた設計図を紙に写すが、ライラお嬢はなんだこれ?みたいな表情をしている。無理もない現代軍事の科学力の結晶なのだから。
「これから話すのは他言無用だから覚えておいてください。まずは……」
僕はAPFSDS弾の構造とシュワショックの製造過程における金属管に発破薬を詰めて、弾を撃つ構造を見せる。
「この……APなんちゃらのユゴニオ弾性限界……勇者様になるにはこれほど高度な教養が必要なのですね」
「多分これは僕が……兵器好きだからだよ!」
「しかし……この王国剣パラディアを侵徹体とやらにするには勿体なくないか?なにか他に代用できそうな物とか……」
「残念ながら硬くて高質量じゃないとユゴニオ弾性限界は難しいですね」
「仕方ない、ちょっと待っててくれ」
ライラは席を立ち、部屋の外へ出る。数分ほど僕も設計図を見直していると戻ってくる。
「パラディアと比べたら安物もいいところだが騎士剣クルセイドだ。パラディアが使えないならこれを使って欲しい。少なくともデストーラの攻撃には何回か耐えられるだろう」
「ありがとうございます。ちょっと修練場で……」
「今は眠った方がいい。魔物も夜は基本的に寝るからな。明日も襲撃があるかもしれない以上寝るべきだ」
このまま寝ても寝れない気がするがまぁ寝よう……
翌朝6時
「あの……ライラさん、なんで僕のベッドに入ってるんですか?」
「ん?勇者様がしっかり寝るか監視するためだ」
このライラお嬢は男の子がこんな可愛い美少女と一緒に寝てたら色々アブナイと思わないのだろうか。
「で……では、僕は朝風呂に入ってきます」
「私は修練場で待っているぞ」
温泉に向かう途中で分かった事がある。完全に意識を失わないと世界を跨ぐ事は出来ないという点だ。この晩に意識は完全には落ちなかったのでライラお嬢の吐息や抱きしめなどをしっかり感じていた。あの騎士お嬢様が仲間になったら大変かもなぁ……
そんな本来なら嬉しい話だが僕はあまり性的な欲求が無いので困るだけと思いながら脱衣所に着く。
入浴中を示す看板は立ってないのでそのままドアを開けて服を脱ぎ、再び硫黄の香りを楽しみながら、寝汗を流し、またもや長風呂を楽しんで食堂へと向かう。
なんでもここの討伐隊は料理作りはローテーションらしく今日はライラお嬢が担当らしいが……
食堂の前のドアには絶望的な顔をした隊員達と少しだけドアを開けて見守る隊長の姿が見える。
僕はまさかと思い、第1班班長に小声で聞く。
「一体何があったんですか?」
「ライラお嬢はパンとパンにチーズを塗る料理以外は壊滅的なんだ……しかも今日は一番ヤバイカレーライスだ。あぁ守護神パラスディア様……我らにお導きを……」
カレーライスか、僕の大好物じゃないか。ぜひ、ご賞味いただこう。
僕は隊長すら押し退けてカレーを堪能しようと食堂へ入る。
「遅かったじゃないか。全員分出来てるぞ」
他の討伐隊員達も絶望の眼差しだったが食堂へ入ると急に食欲をそそられるスパイスの香りとトマトやかぼちゃの具材の良い香りが漂う。
僕以外のみんなが泣いている。お嬢がここまで料理上手になったとは……と。
「あぁ……褒めてくれてるところ申し訳ないんだが実家の贈り物だ。討伐隊には頑張って欲しいからだそうだ」
皆が安堵なのか、お嬢が料理上手になってないことに対するため息なのか分からないため息を吐いて席に座る。
僕は初めて食堂の席に座ると気がつく。
「空き席ばっかりだ……」
隣に座っていた第1班副班長が大盛りのカレーライスをドシッと置き、この言葉に出しちゃいけない独り言に答えてくれる。
「前に100人居たという話はしたと思いますが最初はここを100人を4回に分けて、食事をとっていました。ですが今では1回で足りちゃいますね……ハハッ!またここが討伐隊員で埋めてもらえるように頑張らないと!勇者様もよろしくお願いします!」
「えぇ、改めてこちらこそよろしくお願いします!」
彼の瞳には情熱と勇気が見えるがその反面恐怖と絶望が見えた。残り5日守り切れるか不安なのだろうか。
ご拝読ありがとうございます!黒井冥斗です!ご拝読お疲れ様です!1日3話というスケジューリングなので前書きも後書きもテンプレートなのをご容赦ください。
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