後悔の中で
あけおめです。
・・・・はい。だいぶ遅くなってしまいました。
次は大丈夫です。この三連休で書きます。
前の後書きで、あと数エピソードは主人公以外の視点が続くといっていたのですが、変更しました。
というわけで琉斗視点です。
暗い。
暗い。
ただただ暗く、何も見えない。
これを闇と言わずして何という。そんな空間をゆっくりと落ちていく。
ここは・・・どこだ?
これだけ暗いと目の意味が全くない。
あるのは左頬から全身に広がる痛み。落下していく浮遊感。それだけだ。
そうか。毒をもらったんだったな。
だんだん思い出していく。
・・・しかし、油断していたなー。もう、自分が馬鹿すぎて笑えてくる。
毒はおそらく、というか確定であの矢だ。奇妙な形をした、何かの骨のような矢。
あの矢を受けたのは、まぁ仕方ないとしても、もっと早くに気づくべきだった。
毒の兆候はあった。
男の不自然な発言。
当たっていないはずの攻撃後に血を吐いたこと。
氷に映った回復が効かない左頬の傷。
歪んだ視界。
力の抜けた足。
男がやけにスラスラと答えていたこと。
もっと早く気付くことはできたはずだ。
あの後、どうなったのだろう。
最後に見たのはフィシアに盗賊が取引を持ち掛けていたところ。
フィシアはどうなっただろうか。いくらレ・サーベルがまともな盗賊団とはいえ・・・まぁ、そんな都合のいい話があるとは思えないな。
フィシアは強い。盗賊からすると、いったんは男を回復されられたとしても、すぐに戦うはめになる。そうなると、一対大勢とはいえ厳しいと分かっているだろう。少なくとも大打撃を受けるのは間違いない。
俺だったら・・・やっぱりだまし討ちをするだろうな。男を回復させ、ある程度直ったあたりで殺すか気絶させる。殺そうとしたんだったらセーブリングが発動するだろうし・・・そうだ。セーブリングがあった。
セーブリングは使用者の体の危機、つまり命の危険がある場合のみ発動する。
忘れていた。あの時は攻撃が来るとしか思っていなかったが、セーブリングが発動した時点で命の危険がある攻撃だと分かったのに。・・・いやそれは無理か。普通の矢でも人は死ぬ。やっぱりあの攻撃後に血を吐いたことで気づくべきだった。
はぁ、結局全部俺が悪いな。くそがっ!
無性に怒りがわいてくる。盗賊に対してではない。自分自身に対して苛立っている。
最悪のパターンは・・・俺が解毒されず、男は回復し、フィシアが気絶させられた場合、か。気絶していたら何かの魔道具でも使って拘束できる。その間にセーブリングを取られたら殺される。・・・それだったらましか。
フィシアのあの見た目だ。慰み者にされるのは容易に想像がつく。
フィシアは男性恐怖症。となると・・・
「・・・くっ!そもそもなぜ俺は陰狼や魔力銃を使わなかった!」
馬鹿だ。自分は。
「俺は大量の魔力とナンバースしかチートはないのに。確かに陰なる移動は強いが、それだけで勝てる相手だったか!」
大規模盗賊団に勝てると自惚れていた。
とるべき最善手は、違和感に気づき、すぐに陰狼、魔力銃を使って敵を殺す。戻ってから治癒を試みるか、最終魔王のところに行けばよかった。
馬鹿だろ。
俺は嫌いだ。自分の力を過信する奴らが。自分自身を最高の存在だと思っている奴らが。
俺は雨が嫌いだ。
あの時を思い出すから。
嵐の中のあの場所を。
初めて人を殺したときの、あの感覚を。
思考が鈍る。
「なあ、やめろよ。」
こんな
「こんないい、憧れの異世界に来て。こんな価値観の合う世界で。」
つまらない
「こんなミスで死ぬとかやめろよ」
俺は別に死ぬことは怖くない。だが、
「あいつらが。明らかにプラスのやつが消えていくのは許せない。」
なあ、
「聞こえてるんだろ。お前。」
『無様だな、我が王。見っともない。』
死への恐怖は全くない。
だがそれでも体が、命を宿す容器が本能で震えている。
『それでも私が選んだ魂か。失望した。』
俺の目の前に二つの闇の中で黒く光る眼が現れる。
そいつの声はどこか俺を嘲笑っているかのようで、とても残虐な響きだった。
「お前はナンバースの一人か。」
『いかにも。ただ、ナンバースとはお前がつけたものであって、実際は違う。』
まあ、
「だろうな。フレアも俺に会う前があったといっていた。」
『あいつか。あいつは気にくわん。』
「俺は今どうなっている?これは走馬灯に近いものなのか。」
『違うな。これはお前の力の源の中だ。・・・そんなことはどうでもいい。我が問いに答えよ。』
『お前は何を望む。』
「望むもの?」
『そうだ。お前は失敗した。だが、虫の息だが、まだ生きている。お前が望むものを私が望むものが重なっているのであれば、手伝ってやろう。お前は今、何が欲しい?』
こいつの望みは知らないが、俺の欲しいものはある。
「俺の今の望みは、生き返り、フィシアを取り戻すことだ。そのための力が欲しい。」
『そうか。では、その道を阻まんとするものがいたらどうする?』
なるほどな。こいつは・・・
「そんなの決まっているだろう。ずっと前から決めていることだ。」
『俺の敵となりし者は、俺のプラスを消そうとするマイナスは、排除する。』
俺の声色が変わった。
『それはつまり?』
分かったよ。お前はこういってほしいんだろ?
『『皆殺しだ。』』
『分かっているじゃないか、くくっ。』
『それでこそ私が選んだ魂。狂った魂。いかれている。だがそれがいい。』
『私の力を分けてやる。それで殺せ。皆殺しだ!あらゆるものを殺しまくれ!私に死の叫びを、絶望を、血を、見せよ!!』
いかれてるのはお前だろうが。まぁ、いい。
『さあ、宴の始まりだ。』
俺はそいつに喰われた。




