カラズ攻防戦
ここからしばらくカラズ攻防戦。
カラズにいる魔王の家臣、レイの視点です。
〖レイ視点〗
僕は魔王の家臣、レイ。
種族は獣人で獺。一人称が『僕』だけど、女だ。
確かにボーイッシュな髪型だし、体つきも女らしいとは言えないけど、女だ。断じて男ではない。
獺族はスタイルがいい美人が多いのに、自分だけ違うのを気にしているとかそういうわけではない。
その僕は今、かわいらしい猫耳を持ち、憎らしいほど理想的なスタイルをもった美しい女性にたたき起こされている。
文字通り、本当に叩いて起こされたのだ。
もう少し優しく起こしてほしいものである。
「はぁ、なんだってこんなことに・・・。せっかく久しぶりの休日だったのに。」
「レイ様。そんなのんきなこと言ってないで速く着替えてください。まだ寝巻じゃないですか・・・。」
そう呆れながら僕を急かしてくるのは、僕の副官のスイナだ。
「スイナだけでなんとかならないのかい?僕はまだ布団でごろごろ――」
「なりません!言ったでしょう?大規模盗賊団――おそらくレ・サーベル盗賊団によって街の北部が襲撃されています。そこらの盗賊ではすまない数です。それに何やらかなりの腕の魔法使いがいるようです。」
そう言って僕の布団を引っぺがしてくる。
盗賊団、ね。しばらくレ・サーベルの噂は聞いていなかったのだけど・・・僕の眠りを邪魔するなんて。
「レイ様。」
「はいはい。分かった行くよ。それに魔法使いの魔力は僕のところまで来てる。」
「・・・私にはわからないです。」
少し悔しがるようにスイナは言う。
「あはは。まあ、そうだろうね。普通魔力の探知は難しいから。」
「む。分かってるなら急いでください。」
「おっけー。君は先に行ってて。あと20分で――」
「いいえ、あと5分で来てください。それと、あなたはすぐ二度寝するので私も一緒に行きます。」
いったいいつ僕が二度寝をしたと・・・いや、結構あったかな。
「分かったよ。じゃあ、僕が着替えている間に詳しい現状報告をして。本当にレ・サーベルだけなの?」
「ええ、今のところではレ・サーベル盗賊団とその傘下の小規模盗賊団以外だと思われるものは報告されておりません。他の盗賊団と手を結んだというわけではないでしょう。」
そうか・・・。
僕がスイナの報告を聞いて一番に疑問に思ったのはそこだ。
本当に一盗賊団ごときでこのカラズを落とせると思っているのだろうか。
それも、この僕がいるタイミングで。
まだ、ハーロウのほうへ進軍中だったならわかるけど、そうじゃない。
今までと違って強力な魔法使いが増えたようだけど・・・。
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「へぇ。」
思った以上に本気だな。
レ・サーベルとカラズの守備兵及び僕の指揮する軍が戦っている様子を上空から見てそう感じた。
「これほどとはね。強盗するためっていうより本気でカラズを落としに来てる。」
「はい、なかなかの勢いです、ねっ。」
スイナがこちらへ飛んで来た鉛の礫の流れ弾を避けながらそう答える。
あの派手な破壊魔法はヒイスだったかな?魔法も破壊ってめちゃくちゃすぎるって。ま、あれから盗賊団がレ・サーベルだって分かったけど。なんか覚えてしまってるし。
守備兵の遠距離部隊が一斉に魔法を放ったのだが、それが粉砕されているのが見えた。
反対に、盗賊側から放たれた遠距離魔法も、こちらの防御を得意とする兵士たちによって防がれている。
カラズの守備兵もそれなりに頑張ってるけど、なにせ久々の戦だからまだ本調子じゃないって感じかなー。
動きにどこか熱がない。
こちらの主力はカラズ守備兵の隊長が出陣してるのと、軍の部隊長が数人出陣してる。残りの数人は後方から全体指揮だね。・・・何も言わないで自分で行動してくれるの本当に優秀。
「向こうは破壊男と鉛のやつと、どんな姿なのかわからないけど魔法使いがメインの攻撃中かな。」
石人たちが城壁を登られないよう頑張ってるけど、魔法を受けて次々に倒れている。
本当になかなかの腕だね。こっちに来たばかりの僕だと負けてるかも。それに複数属性持ち。
「そうですね。あと、目立っていないですが、こちらから見て右側に凄腕の弓使いがいると思われます。右側の守備兵の強めな人たちが撃ち抜かれています。」
「あー、それで。道理で右側だけ不自然に押されてるわけだ。」
さてと、どうしようか。
兵士の数は圧倒的にこちらが上。だから持久戦に持ち込めば勝ちは確定だけど、それだと流れ弾とかで人数が多い分こちらの被害が大きい。
「こっちでまだ出陣してないのはカラズ守備兵副隊長と軍の部隊長数人、それと僕と君ぐらいかな。冒険者ギルドのほうは?」
「既に連絡しております。とりあえずAランクパーティーが3組とBランクパーティーが8組、まだ実力がわかりませんが、魔人が5人いました。」
「魔人かー、まだ召喚されてからそんなに経ってないでしょ?だったら遠距離から攻撃できる人だけでいいかな。近距離の人はむしろ足手まといかもしれないし。Aランクパーティには来てもらうように言って。」
「分かりました。」
スイナが冒険者ギルドのほうへ向かっていく。
用意できる戦力はこんなもんか。やっぱり何でもありの戦だと主力級以外は何もできずに死ぬことが多いからねー。自主的に志願した兵士たち以外は参加させるべきじゃない。
向こうは確か、・・・うぉっと!
また、鉛礫の流れ弾が飛んで来た。
いや、こちらを狙って飛ばしてきたか。
はぁ、そろそろ降りるか。
あまり飛び過ぎていたら注目が集まりすぎる。
下の方の守備兵たちに飛んで行った大きめの鉛礫を水槍で粉砕しながら軍の部隊長が集まっている方へ移動する。
「やぁ、どんな感じ?」
「ん?ああ、レイ様か。珍しいですね。いつもこの時間帯は起きてないのに。」
「いつも起きるの遅いですからな!」
「ちょっと。『レイ様か』じゃなくてそこはもう少し喜んでよ。あと、最後のは余計なお世話。」
「ははは!」
「で、状況は?大体はスイナから聞いて上からも確認したけど、何か気になることはある?」
「そうですなー。やはり今までのレ・サーベル盗賊団には確認されていない魔法使いでしょうか?結構な被害が出ています。」
「うん。そうだね。大結界もその子に破壊されたようだし。他には?」
「他には・・・勢いは本物ですが、主力級が少々抑え気味かと。今のところ鉛魔法のロロ、弓使いのイリェしか前線に出てきておりません。破壊魔法のヒイスは目立ってますが、あくまで後衛としてです。」
「やっぱそれ気になるよねー。まぁ、だからこそこちらの精鋭部隊も出してないようだけど。」
主力級が本気で来ていたら、現場はこんなものではなく、もっと凄惨で見るに堪えない血戦場になっているだろう。
そもそも、僕やスイナも上空でのんきに観察している場合ではない。
「にしても、レ・サーベルって主力級多すぎない?素直に投降してくれたら重用するのになー。」
「御冗談を。まあ、確かにほかの盗賊団とは比べるまでもなく多いですな。」
「結構本気なんだけどね。頭のカインは僕と普通に張り合うだろうし、味方になったらいいのに。」
本当にレ・サーベルは一軍隊の主力級を持ってるからなー。
「ま、それはおいといて。なんか時間稼ぎしてる感があるよね。鉛のやつもそんな感じで僕に牽制してきたし。」
「はい。今出陣してる部隊長からもそう報告されています。」
・・・よし!
「このまま相手の思うとおりにするのも嫌だし、僕がちょっと出陣するよ。君たちはいったんこのままで全体指揮。スイナが呼んできたAランクパーティと魔人は後方から攻撃させて、彼女自身は僕のところに合流するように言ってて。」
最近のエピソード少し暗めのが多くて年末っぽくないですが、もうしばらくお待ちください。
本当なら正月っぽい閑話とかを入れたかったのですが、まだこの世界に来てからそんな経ってないので書けなかった・・・
最近自分の作品をブックマークしていただいてる方が他にブックマークしている作品を読むのにはまっています。ブックマークありがとうございます。




