修学旅行
修学旅行の日が近づいている。わたしたちは沖縄に行く。3日目の自由行動の日は橋子と永遠と巡る。事前に予定表を書いて、先生に提出しなくてはならない。ここしばらくわたしたちの話題はこのことに集まっている。るるぶを広げネットを駆使して予定を立てようと日々話している。
それぞれの行きたいところを最初に決めたのは永遠だった。喫茶店で沖縄ならではのスイーツが食べたいと彼女はいう。じゃあ昼ご飯は喫茶店で食べようよとわたしたちはいう。そうだね。どこがいいかなあ。橋子はごっちゃんというご当地キャラクターに会いたいという。ちょうどその日に町のお祭りに出演するという。獅子舞のように、頭を噛まれると健康になると言われているそうだ。
いつまでも決まらないのはわたしだった。エイサー、ビーチ、琉球ガラス。行ってみればどれも魅力的なのかもしれないけど、なんだか腑に落ちない。なんでだろうか。行く場所を決めないとルートが決まらない。予定表を提出できない。ふたりはわたしに色々と提案してくれる。でも、どの行先もわたしのこころは首を縦に振らない。沖縄に興味がないのか。そんなことはない。期待している。道産子だから沖縄に憧れもある。なのになぜなのか。よくわからなかった。夕飯の時、「行く場所は決まった?」母がわたしに聞く。
「わ、わたしだけ決まらないの」とわたしはいう。「な、なんか、変なの。ど、どこもおもしろそうなんだけど、な、納得がいかないと、いうか。も、もやもやすると、いうか。こ、こんなこと、なかったんだけど」
「どこでもいいならあみだくじで決めたらいいんじゃない」と兄はいう。
「どこでも、い、いいわけじゃないんだよ」
「俺なら暑い中ゴルフやって、汗かいて、温泉入って、オリオンビールに泡盛をきめたいところだな」と父はいう。
「うーん」
「照爺ちゃんにも聞いてみたら? きっと沖縄に詳しいよ」と不意に母がいう。
「て、照爺って、前は毎年沖縄に、い、行ってたよね。お、お参りかなんかで」
「爺ちゃんのお父さんが沖縄で亡くなっているからね」
「わ、わたしにとって、ひいお爺ちゃん?」
「そう。顔出しついでに家行ってみたら? おこづかい貰えるかもよ」と母がいう。




