オセロを並べるように
あるその日、昼過ぎにふたりは家に来る。家族で出迎える。
「はじめまして、いばらさんの友達の小野寺橋子といいます。よろしくお願いします」
「はじめまして、友だちの水木永遠です」
父と母と兄もふたりに挨拶をする。なんだか空気に緊張感が漂っている。ピリピリしている。ものものしいなとふたりは感じたんじゃないだろうか。
あのこれ、ケーキ焼いてきたんですけどと永遠が箱を母に渡す。あらと母がいう。チョコレートケーキです。じゃあ、おやつの時間にみんなで食べましょうか。わたしはふたりを部屋に連れていく。
「な、なんか変だったでしょ。ご、ごめんね」
「ちょっと焦ったよ」と橋子がいう。
「わ、わたしの友だちだって、いうから、み、みんな神経質に、な、なってるの」
「なるほど、だからか」
「どういうこと?」と永遠が聞く。わたしと橋子は目を合わせる。
「永遠になら言っても大丈夫だよ」
「わ、わたしも、だ、大丈夫だって思うよ?」でも、やはり怖かった。好意が、信頼が消えてしまうかもしれないと思った。でもわたしは話す。永遠聞いて欲しいの。わたしは藤本さんのことを最初から話す。久しぶりに当時のことを思い出す。もうわたしの中では過去になっている。その後のたくさんの良い思い出がその上に積もったからだった。もっと月日が経てば記憶は分解されてなくなってしまうのだろうか。でも家族はまだなのだ。今もなのだ。それはわたしがその後の日々を上手く伝えれなかったせいなのだ。ゆっくりと、少しづつ永遠に話した。橋子はわたしたちを見守っている。話し終えると沈黙が部屋を満たした。
「そんなことがあったんだね」と永遠がいう。
「そ、そうなの」
「ちょっと早いけど、ケーキみんなで食べようよ」とだしぬけに永遠がいう。わたしたちは居間に行って母に伝える。母は父と兄を呼ぶ。これおいしそうねえと母がいう。ケーキ作りには自信があります。母がコーヒーと紅茶を淹れる。永遠がパンナイフを火で炙りケーキを六等分に切り分ける。それぞれの皿に乗せて、飲み物も並べ後は食べるだけになった。
永遠がぽつりぽつりとオセロを並べるように話し出す。




