↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
25/130

わたしに触らないで

「昨日、なんで休んだの?」

「か、家族で、温泉に、行くことになって」とわたしがいうと、え、どういうことなのそれ、とありさがいう。その流れはとても説明できない。わたしは黙っている。


「一昨日、あの店にうちの生徒がいたみたい。昨日からなんか周りの空気がおかしいんだよね。

「わ、わたしたちの、こと、う、噂になってるって」

「やっぱりね。まあ、別に関係ないけどさ」と彼女はいう。どうしたら、そう平然としていられるのだろうか。


「お、一昨日どうだった?」

「まあ、別に普通だったよ。反省してますって言って謝って終わり。あ、同人誌買い取ってくれたんだってね。あれさ、いらないならちょうだいよ。どうせ読まないでしょ?」

「お、親が持ってるから。わ、わからない」

「ちょっと探ってみてよ。読みたいんだよね」


言わなければならないとわたしは思う。でも言うことができなかった。手紙か何かの形で伝えた方が羊であるわたし的にはいいのかもしれない。でも、それはできない気がした。面と向かって友達になったのだから、面と向かって別れるべきなのではないだろうか。葛藤がある。わたしは黙って天秤を揺らしている。片方の皿には否定のしようがない、はじめての大切な時間があるのだった。


ありさも何かを察したのか黙っている。車が何台か通り過ぎる。エコバックを下げたおばさんが歩いている。太陽が夕陽になろうとしている。


「ねえ、喉乾かない」と彼女が唐突にいう。わたしははっとする。

「やめて」とわたしはいう。

「いいじゃん、行こうよ」彼女がわたしの腕を掴む。

「わ、わたしに、さ、さ、触らないで!」わたしは叫ぶ。こころが沸き立つ。

「なにさ」彼女は平気でいる。わたしの叫びなど彼女には届かないのだろうか。


「ど、どうして、そ、そんなことができるの? こ、今度、捕まったら、ど、どうなると、思ってるの?」わたしの身体は興奮で震えている。

「別に捕まったからってなんなの。どうでもいいじゃん。また捕まろうよ。わたしたちの関係ももっと良くなるよ。お互いが離れられなくなるんだよ」

「あ、あなたには」わたしはありさを初めてあなたと呼ぶ。別れが始まっている。「あ、あなたには、た、大切に、したいものがないの?」

「なにそれ。いばらにはあるってわけ?」

「わたしは、お、親が好き。もう、お、親をき、傷つけたくない。親は、わ、わたしが好き。お、親の好きなわ、わたしをわたしは大切にしたい。そう思わない?」


「思うわけないじゃん」とありさはいう。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。