わたしは話したい
太陽がぎらついて睨んでいる。ある日の昼、わたしはお弁当の袋を持って教室の外に出た。押し出されるように。それまでは寝るふりをしてみたり、教科書を読んでみたり、音楽を聞いてみたり、ニコニコ動画を見てみたりしてみた。付け焼刃だが色々やってみたのだった。でも、当然というか、どれも上手くごまかせなかった。ただ胸がしくしくと苦しいのだった。
どうしてここにいなければいけないのだろう。教室を出てどこに行けばいいのだろう。この学校のどこにわたしの居場所があるのだろうか。
無いんじゃないか?とわたしのなかにいるわたしが語りだす。机の中をまとめてかばんに投げ入れてどこか大きな公園に行って、ベンチに座っていたほうがいいんじゃないか?公園のベンチはおまえだけの椅子ではないが、おまえの椅子でもあるのだから。そうやって生きていくしかないのだろうか。そうだよ、これからは公園の背景になりながらそこのベンチで過ごすんだよ。あのひと、いつもいるな。同じベンチで。いただろそんな人。次はおまえの番だ。でも、そんなことではいけない。卒業できない。卒業してどうなるの?学校なんてやめたらいいよ。だめだよ、そんなことではこの先どうなるの。これからまだ、ずっと……。この先だって?どこにいたって苦しいままじゃないか。話せないなら同じじゃないか。ひとりでいるのがいいんだよ。選ぶんだ。おまえは話せないんではなく、話さないんだ。逃げたんではなく、唾を吐いた。そう自分で選んだことにすればいい。思い込めばこころは後から付いて来る。たどり着けば航跡は曖昧になっていく。
なんだか正しいような気がしてきた。でも、それに反してこころは沸々としているのだった。
話したい!とわたしは叫ぶ。
わたしは話したい。わたしを変えたい。そういえば練習を最近してないな! とわたしは思った。自己紹介のあの日からわたしは諦めてしまっていた。ずっと話しかけられるのを待っていた。受け身だった。もう一度挑戦したい。わたしからボールを投げたい。そしたらボールはきっと帰ってくる。
今日から始めたい。早く河川敷に行きたいとわたしは思う。無駄なことをと影が薄くなったわたしのわたしが捨て台詞を吐く。




