第八十二話 つーんからの、ぷんすこ
有織はべりです。
拙文ですが、お読みいただき、楽しんでいただけると嬉しいです。
「つーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーんっ!!」
天崎には勝てなかったよ……。
何とか追及に耐えて誤魔化そうとしたものの、どんどん距離を詰めてくる天崎の圧と格好にわずか数分で完全敗北を喫してしまった。
おかげで俺はすべて白状させられ、目の前の天崎が頬をぱんぱんに膨らませる結果となった。予想通りものすごく不機嫌そうである。そして俺は椅子の上に正座させられていた。
「お、おーい、天崎? 天崎さん?」
「まあ別に? 生徒会室にわたしたち以外の生徒が入ったらダメって決まりはないし? しかも遊ぶとかならともかく、テスト勉強をするってちゃんとした理由があったんだから、仁美をここに入れたことに何も問題はないと思うよ?」
「あの――」
「生徒会室を使っていいか聞いてきた時にそのことを言わなかったのも、今までずっと黙ってたのも仁美を気遣ってたわけだし、むしろ無駄に気遣いやさんの高原くんらしいなって思ったもん。だから別に怒ったりしてないよ?」
「いや、どう見ても怒って――」
「そもそも、いちいちわたしに報告とか説明する理由も義務もないわけだからね。うん、わかってる、わかってるよ? 高原くんは何ひとつ悪いことはしてないよね、安心して、ちゃ~んと理解してるから。高原くんは勉強が苦手な仁美を助けるために、生徒会室を使って勉強を教えてあげました~うん、とってもいいことだと思うよ?」
「お、おう、そこはちゃんとわかってくれてたみたいでよか――」
「でも気持ち的に納得できるかはまっっっったく別の話だよ! つーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーんっだ!!」
つーんから一転、ものすごい笑顔で畳みかけてきたかと思うと、再びのつーん。
事情を理解できても、それを納得できるかは全くの別物らしい。
えぇ……これどうすりゃいいの……謝るのもそれはそれでなんかおかしい気がするし。
天崎が言った通り、クラスメイトに勉強を教えるために生徒会室を使っただけなので、何も悪いことはしてない……はずだ。
「高原君のアホ、バカ、マヌケ」
「はい、すみません……」
でも、口をとがらせて罵ってくる天崎に、素直に謝っちゃう俺。
いやだってほら、天崎が拗ねるっていうか、つーん状態になるようなことをしちゃったのは事実だし。それはある意味、精神的なダメージを与えてしまったってことになるわけで……そう考えると俺は悪いことをしたってことになるから、謝るのも致し方ないというか……。
なんか自分で言っててものすごい理不尽な理屈な気がしないでもないけど、気分を悪くさせてしまったのは事実なので、甘んじて子どもみたいな悪口を受け入れて謝ることにする。
「人の気持ちがわからない鈍感、デリカシーなし男、文学少女フェチ」
「はい、すみません――って文学少女フェチ!?」
「違うの? わたしに黙って仁美のことを生徒会室に連れ込んで二人っきりで楽しんだんだから、てっきりそうだと思ってたんだけど」
「違うし、その言い方やめろ! 普通に勉強を教えただけだから!」
「さっき聞いたから知ってるよ! だから言ってるんでしょ! テスト前に友だちと仲良く勉強するとか絶対に楽しいやつじゃん! 二人だけで楽しんでズルいよ!!」
「いやそんなズルいって言われても……山本さんの成績を秘密にした方がいいって思ってたんだから、誘うとか無理だろ」
「仁美が見た目の割にすっごいおバカちゃんだってことくらい知ってたもん! 中学から一緒なんだから!」
「知ってたんかい! けど天崎が知ってたことを俺が知らないんだから、やっぱり誘うのは無理だったって! ていうか、もしかしてさっきから怒ってるのは、勝手に生徒会室に入れたことじゃなくて、勉強に誘われなかったからか?」
「そんなの両方に決まってるじゃん!! もしかしてそんなこともわかってなかったの!? これはもうぷんぷんどころか、ぷんすこだよ!!」
「ぷんすこて……まったく違いがわからないけど、とにかく怒ってるってことでいいんだよな?」
「そうだよ! もうほんとぷんぷん――あ、間違えた、ぷんすこなんだからね!」
……これ本当に怒ってるか?
コミカルな動きで腰に両手を当てて、わざとらしく言い間違えた天崎にそんなことを思ってしまう。
相変わらず、ぷくーっと膨れてはいるけど、さっきからずっと怒ってるっていうか拗ねてる感じに見えるし。
「お、おーい、天崎ー?」
「ぷんすこ!」
「いやぷんすこじゃなくて」
「ぷんすこ!」
……たぶんこれそこまで怒ってないな。
ぷんすこ、としか話さなくなった天崎にそんな気がした。
本当に怒ってる時にこんな感じになるやつは未だかつて見たことがない。
「一応聞くけど、怒ってるんだよな」
「ぷんすこ!」
念のために聞いてみると、何度も頷く天崎。ここまで説得力のない怒ってるアピールとかある?
それにしても、つーんだったりぷんすこだったり、感情豊かなやつだな。しかも、それがまた子どもっぽい見た目に、妙に似合ってるっていうのがまた。
「ぷんすこー!!」
「……ふふっ!」
追加とばかりに両手を振り上げて全力で怒ってるアピールをする姿が、ぷんすこという鳴き声あまりにもマッチしすぎていた。それがなんだかおかしくて、うっかり笑ってしまう。
「ぷんすこ!?」
そしてそれに対する反応が、まさかのぷんすこだったので、俺はそのまま腹を抱えることになるのだった。いや、それはちょっとズルいって……!
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