第七十五話 成績優秀者の発表
有織はべりです。
拙文ですが、お読みいただき、楽しんでいただけると嬉しいです。
テストが終わって三日後のこと、昼休み、本校舎の一階にある掲示板の前には多くの生徒たちが集まっていた。おそらく全員、目的はさっき貼りだされたばかりの、今回のテストで優秀な成績を修めた生徒の発表。
うちの学校は、中間と期末テストの度に、成績優秀者を掲示板に貼り出して発表している。具体的な人数で言うと各学年の上位50名。勉学に励んでいる生徒の中には、きっと、この発表に入ることを目標にテストを頑張っている者もいることだろう。
掲示板の前にけっこうな人混みがあることからもわかるが、割と成績優秀者の発表は注目されているので、ここに載ることができた生徒は、勉強ができる存在として広く学内で認知される。そのため、勉強ができるアピールをする絶好のチャンスとも言えるわけだ。そんなアピールをするつもりでテストに臨んだやつが、この貼り出された中にいるかはわからないけど。
ま、少なくとも天崎とか竜也は、そんなつもりは欠片もないだろうな。
成績優秀者常連組の二人は今回もちゃんと名前が載っていた。竜也は8位、天崎に至っては学年2位という、とんでもっぷり。いやほんとさぁ……顔もよし、性格もよし、男女問わず人気があって、運動も勉強もできるとか、あいつらどんだけ――。
「んんんんっ!?」
上位から順番に名前を見て行ってると、全く想像もしてなかった名前を見つけてしまい、驚いて変な声が出てしまう。周りの生徒たちから物凄く怪訝な目で見られたので、慌てて何もないアピールで誤魔化した。
は、恥ずかしかった……! え、けど、マジで? 俺の見間違えとかじゃないよな?
今度は変な声を出さないよう気を付けながら、改めてその名前を確認する。
20位 2年B組 山本仁美 460点
山本さんすげええええええええええええええええ!? テスト一週間前はあんなボロボロだったのに、何でこんなに高得点取れてんの!?
見間違いでも何でもなかった。まさかの山本さんの名前に驚愕を隠せない。失礼かもしれないけど、何なら俺の名前が載ってるより驚愕。
そもそもここに載ってる成績上位者は、順位の違いはあっても毎回、ほとんど同じ生徒で構成されている。急に勉強ができるようになるなんてことは、あまりないので、そんな感じになってしまうのも当然の結果だろう。
たまに常連組以外の生徒が載ることもあるけど、その数は少ないし、あったとしてもそれは普段から勉強ができる生徒に限る。なので、山本さんが成績優秀者、しかも20位という高い順位を取れたなんて、本当に驚きしかない。そりゃ、思わず変な声も出てしまうというものだ。
しかも平均90点超えってすごすぎるだろ……テスト前の小テストで0点を取ってた姿からは想像もできないな……。
「あ、あわ、あわわわわわわわわわわわわわわわ!?」
驚きやら困惑やらで掲示板の前で固まっていると、近くから聞き覚えのあるものすごく慌てた声が聞こえてくる。ちょうど声の主のことを考えていたせいだろうか、周りに騒がしい生徒たちがいるのに、不思議とその声ははっきり聞き取ることができた。
声のした方を見てみると、まるで幽霊と遭遇してしまったような顔で山本さんが大慌てしていた。そして何故かものすごく不安そうに周囲を見回し始める。な、なんでそんなきょろきょろしてるんだ?
「あ――」
周りをきょろきょろしている山本さんと、彼女を見ていた俺と目が合うのは必然だった。
俺がいることを認識した瞬間、生徒たちの間を縫うように、しかし物凄い勢いで山本さんが近づいてくる。
あ、これヤバいな――
近くに来た山本さんの顔を見て、はっきり直感する。今の彼女は、テスト勉強を教えた時に何度か見たことのある顔をしていた。
上気した頬に一目でわかるくらい焦った表情、そして混乱したように目の奥がぐるぐるしている。
早口でとんでもない発言をする時の、いわゆる暴走モードになった山本さんの姿がそこにあった。
この状態の山本さんは何をしでかすかわからない。どうして暴走してるのかはわからないけど、とにかく、とてつもなく嫌な予感がした。
こ、こんな人の多い場所で今の山本さんに何もしゃべらせたら絶対ヤバい! 俺と山本さん、お互いのためにも!!
「あ、あのあのあのですね――」
「うんわかった! わかったからちょ~~~~~~~っとこっちに行こうか!?」
「え、えええええええええええっ!?」
まさか手で強引に口を塞ぐわけにもいかなかったので、俺は山本さんの腕を掴んで全力で掲示板の前から逃げ出すのだった。
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