第七十二話 テスト終わって顔隠す
有織はべりです。
拙文ですが、お読みいただき、楽しんでいただけると嬉しいです。
「あぁ~やっっっっと終わったぁ~~~」
チャイムが鳴って国語の答案用紙を回収され、2年になって初めての中間テストが終了する。
テストから解放されて楽しそうに騒ぐクラスメイト達の喧騒を聞きながら、両手を投げ出すように全力で机に突っ伏した。
つ、疲れたぁぁぁぁぁ……誰かに勉強を教えながら自分の勉強もしつつテストに臨むのって、こんなに大変なことだなんて夢にも思わなかった……。
まだ今回のテスト範囲がさほど広くなかったのと、そこまで難しい問題が出てなかったおかげで、手ごたえ的にどの教科も赤点を取らなかった確信はあるが、同時に、いつものテストより点数が落ちた確信もある。
どうやら俺は、誰かに勉強を教えつつ成績を維持できるほど器用でも優秀でもなかったらしい。自分がいかに凡人なのかを実感した。
まあ、高得点を狙ってテストに挑んでるわけでもないから、別に赤点じゃなけりゃ何でもいいんだけどな。そんなことより、気になるのは山本さんの方なんだよなぁ……。
「あっ……」
机に寝そべったまま、何となく隣の席を向くと、何故かこっちを見ていた山本さんとばっちり目が合った。だらしない姿をばっちり見られてしまったことに、若干、恥ずかしさを覚えながら俺はゆっくりと体を起こす。
「て、テスト、お、お疲れ様でしたっ!」
「そっちこそお疲れ様。あ、そうそう、教えた身としては気になるから聞いちゃうけど、ずばり、今回のテストはどんな感じだった? いい感じに解けた?」
「は、はいっ! む、むしろ今までのテストで一番できたと思います!」
珍しく自信がありそうに、はっきり言う山本さん。
テスト一日前の出来具合から考えて大丈夫だとは思っていたけれど、こうして山本さん本人の口から手ごたえを聞けるとやっぱり安心する。教えたかいがあったというか、ちゃんと山本さんの力になれたみたいで本当によかった。
「これも全部、高原くんのおかげです! ほ、本当に、本当にありがとうございますっ!」
「そんな全力でお礼を言わなくても。テストがいい感じだったのも山本さんが頑張ったからだし、俺がやったことなんて微々たるものだから」
「そ、そんなことはありません! バカな私がわかるまで丁寧に教えてくれましたし、わかりやすく内容をまとめたプリントを準備してくれたり……自分の勉強だってあったはずなのに、絶対に大変だったはずですよ!」
「お、大げさだって。むしろ、山本さんに勉強を教えたりプリントにまとめたりすることで、いい復習になってたから気にしないで」
実際は割と大変だったけど、それを山本さんに言う必要はない。気にしいの山本さんにそんなことがバレてしまったら、また彼女がネガティブに入ってしまうことがありありと想像できたし、あとはこう、なんていうか、実は大変だったなんて言うのは何だかカッコ悪い気がしたからだ。
「……本当ですか?」
「ほ、本当だけど? そもそも、なんで嘘をつく必要があるんだよ?」
「だって高原くんのことだから、こうして私が負い目を感じていることを察して、優しい嘘をついてるかもしれないじゃないですか」
「あはは、ないない! 普通に本心だから!」
「…………」
意外と鋭い山本さんの指摘に、慌てて否定しそうになるのをぐっと堪えながら笑って誤魔化すが、どうやら納得できない様子の山本さんは、まるで何かを探るようにじーっと俺を見つめてきた。
万が一バレたらものすごくカッコ悪いし恥ずかしいにもほどがあるので、嘘なんてついてませんよとアピールするために、それ以上余計な言い訳やリアクションはせず山本さんのことを真正面から見つめ返す。
そもそも、いい復習になったことは間違いなかったので本当に嘘はついていない。ただ本当のことを言わなかっただけだ。
というか、俺のことだからってどういう理由? 女子の気持ちを察したり、相手のことを慮って嘘をつくみたいなイケメン行動なんて今までしたことないんだけど。
山本さんの中の俺はいったいどんな風になってるのか少しだけ気になった。
「……わ、わかりました、た、高原くんのことを信じます、で、ですからその、あ、あまり見ないでくださいぃ……」
よし、勝った。恥ずかしそうに両手で顔を隠す山本さんに、内心で謎の勝利宣言をする。ただ余裕の勝利ではなく、ぎりぎりのところだった。
あ、危なかった……先に山本さんがギブアップしてくれなかったら、これ以上はこっちが耐えられなかったかもしれん……男女問わず正面からじっと見られるとなんかものすごく恥ずかしくなってくるんだよな……。
何となく山本さんは俺と性格や考え方が似ているような気がしていたので、俺と同じように正面から見られるのも苦手だろうと思い、こっちも真正面から目を合わせに行って正解だった。
まあ、そのせいで俺ももっと恥ずかしくなったんだけどな! 誰かと目を合わせるのって、なんでこんなに緊張するっていうか恥ずかしくなるんだろう……あ、やばい、自分が何やってたのか改めて意識したらなんかめちゃくちゃ恥ずかしくなってきたんだけど!?
顔が赤くなるのを感じた俺は、山本さんと同じように両手で顔を隠すのだった。
二人そろって両手で顔を隠している光景は、はたから見たらそれはそれは不思議な光景だっただろう。
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