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幕間⑦ 高原くんはお友だち

有織はべりです。

拙文ですが、お読みいただき、楽しんでいただけると嬉しいです。

 家に帰ってきた私は、制服から着替えることもなく、自分の部屋のベッドへ倒れこんだ。

 

 制服がしわになるとか、ベッドが汚れるとか、そんなことが頭をよったけど、気にしてる余裕は今の私にはなかった。


「お友だち……」


 高原くんからそう言われたあの瞬間から、気持ちがずっとふわふわしている。

 学校から帰って来たら、いつもなら製作途中の衣装作りの続きをしたり、大好きなアニメや漫画を見返したりしてるのに、今はどうしてかそんなことをする気持ちにならなかった。


 高原くん、私のことお友だちだと思ってくれてたんだ……。


 本人から直接聞いたはずの言葉なのに、今でも信じられない。


 高原くんは否定していたし、あの時は勢いに負けて頷いてしまったけど、私にとって彼は伏見さんや五位堂くんたちカースト上位の人たちと同じか、それ以上にきらきらしている憧れの男の子だ。


 そんな男の子とお友だちなんて……もしかしてこれは夢? 私の都合のいい妄想?

 

 高原くんはすごく優しい。


 今日だって、そんな仲の良いわけでもないクラスメイトの私に勉強を教えてくれたし、先月、生徒会のお仕事で撮影会に来てもらった時なんか、ものすごく迷惑をかけちゃったのに許してくれた。


 それだけじゃなくて、私の趣味やコスプレのことを話しても引かないでいてくれて、それどころか、すごいって褒めてくれた。


 自分でもちょろいとは思うし、普段から誰にでも優しい高原くんにとって、きっとそれは特別なことじゃないのかもしれない。だけど、私にとってはたったそれだけのことで十分だった。


 私のことを否定しないで褒めてくれたあの日から、彼のことを目で追ってしまうようになるのには。


 だから、あの時、そんな意味じゃないってわかってても、いつも隣で見てるって言われて、ものすごく動揺してしまった。


 うぅ~~~~~~~~っ……! い、いくら何でも過剰に反応しすぎでしょ私~~~~っ! 絶対、いつも隣の席から、高原くんのことこっそり見てるキモイ女だってバレちゃってたよ!


 自分のバカみたいなリアクションを思い出して、枕に顔をうずめて悶絶してしまう。

 すぐに否定して勢いで誤魔化したけど、よっぽど鈍感な人じゃない限り、あんなので誤魔化せるわけがない。


 そのはずなのに何も触れないでいてくれたんだよね……一方的に盗み見されてた完全な被害者なのに……。


 きっと私が恥ずかしい思いをしないよう配慮してくれたんだろう。何も言わずにそのまま勉強を教えてくれた。


 それどころか、英語と科学もマズいってことをばらしちゃったら、そっちも教えてくれるって言ってくれたし……やっぱり高原くんは優しい。百パーセント社交辞令だってわかってるけど、すごく嬉しかったなぁ。


「――ん? うひゃぁっ!?」


 突然スカートのポケットに入れてあるスマホが振動したので確認してみると、想像もしてなかった事態にびっくりしすぎて心臓が止まりそうになる。まさかのまさか、高原くんからメッセージが届いた。


 先月、高原くんに迷惑をかけたことを謝った時に、撮影会のこととか何か用事があるたびに手紙で呼び出すのは不便だと思うから、と高原くんと連絡先を交換していた。


 当然、そう言ってくれたのは高原くん。私の方からそんな恐れ多いというか図々しいことを言い出せるわけはない。


 そんなわけで私のスマホには高原くんの連絡先がたしかに存在はしているので、こうしてメッセージが届くことは物理的にあり得ないことはないのだけど……ゲームアプリのスタミナ回復の通知かメルマガか、それとも家族からの連絡か、私のスマホが震える理由なんて、ほとんどその内のどれかだ。


 たまに、本当にごくごくたまーに、天崎さんから来る撮影会に関する業務連絡以外だと、それくらいしか私のスマホに連絡はこない。そもそも学校で連絡先を知ってる相手が天崎さんと高原くんだけだしね……。


 そんな私のスマホに、まさか同級生の男の子から連絡が届く日が来るなんて……で、でも、き、急に連絡してくるなんて、いったいどうしたんだろう……? も、もしかして今日、気づいてないだけで何か失礼なことやらかしちゃってたとか……!? そ、それで怒られたり、と、友だち辞めるみたいなことだったらどうしよう……!?


 震える指を操作して、どんなメッセージなのかどきどきしながら確認する。


『今日はお疲れ様』

『英語と科学を教える話なんだけど、山本さんさえよかったら、さっそく明日から始めようと思うんだけど、どうかな?』


 お、思ってたようなことと全然違ったし、社交辞令じゃなかったぁぁぁぁぁ!? え、嘘!? ほ、本当に!? 高原くんちょっと優しすぎない!?  あぁ~~~~~~~~~!! こんなに優しくされたらもっと好きになっちゃうよ! 私がちょろすぎるのかもしれないけど、もっともっと大好きになっちゃうぅぅぅぅぅぅぅぅ!  


 再び枕に顔をうずめて、足をばたばたさせながら声にならない声を叫ぶ私。

 顔がものすごく熱い。きっと死ぬほど真っ赤になってる。口元がにやけそうになるのを必死に我慢した。誰かが今の私を見たら、さぞ気持ち悪いと思うことだろう。


 うぅ……高原くんって絶対タラシだよ……! 高原くんにそんな気がないのはわかってるけど、こんなの好きになっちゃうよ! 私みたいな陰キャにも優しいし、お勉強もできるし、スポーツだって上手だし、それに加えて顔もカッコいいとか反則だよ! 


 うちのクラスの女子はみんな五位堂くんがカッコいいと言っているけど、高原くんだって負けてないというか、正直、高原くんの方がカッコいいと私は思う。


 球技大会でバスケやってる高原くんカッコよかったなぁ……今日の真剣な顔でスマートに勉強を教えてくれてる姿も、デキる男って感じですっごくよかったし……なにより笑顔が素敵! カッコいいのに笑うと子どもっぽくて可愛いとか、もうチートだよチート! あの伏見さんが高原くんのことを好きになっちゃうのも納得だよ!


 知り合って一か月くらいしか経ってない私がこんな有様なんだから、幼馴染で昔から一緒にいる伏見さんが、あんなに高原くんにベタ惚れなのもよくわかる。


 アイドルなのにクラスメイト全員の前で告白しようとするくらい伏見さんが高原くんのことを大好きだってことは、うちのクラスじゃもう全員が知っていた。というかあの告白未遂を見て、伏見さんの気持ちがわからない人はいないだろう。いるとしたら、あまりにも鈍感すぎるか人の心がないかのどっちかだ。

 

 だからきっと、私のこの好きは絶対に叶うことはないんだよね……二人ともお似合いだし……幼馴染で仲良しだし……。


 漫画とかだと幼馴染なんて定番の負けヒロインだけど、あの伏見さんが負けヒロインになる未来が全く見えない。きっと二人は素敵な恋人になるだろう。


 短い初恋だったなぁ……で、でもそのおかげで変に勘違いして高原くんに迷惑をかけたり、告白なんてしちゃってフラれたりすることもないし……プラス思考、プラス思考だよ私……お友だちだって思ってくれてるんだからそれで満足しておきなさい!


 そもそも今みたいに毎日挨拶してくれてるだけでもありがたいことなんだから! それだけでも、私みたいな陰キャ女には贅沢すぎることなんだって忘れないこと! 今ある幸せを享受してひたすら感謝しなさい! 今日みたいに勉強を教えてもらうことなんて――って勉強? 


 あっ!? そ、そういえば既読つけたまま返事してない!? こ、これじゃ既読スルーしてる失礼で嫌な奴になっちゃう!! は、早く返事しないと! で、でもでも、なんて返事するのが正解なの!?


 とんでもないことをやらかし続けている自分に気づき、さあっと血の気が引く。


 慌てて、何故かベッドの上に正座をして姿勢を正した私は、急いで返事をするために画面をタップしようとするが、直前で震える指を止める。


 す、素直にお願いしますって言っていいのかな!? で、でも、この連絡そのものが社交辞令の可能性もあるよね!? うぅ……は、早く返事しないと既読スルーしてる疑惑がどんどん深まっちゃうのに……ど、どうすればいいの!?


 早く返事をしないといけない、だけど、どんな返事をすればいいのかわからない、そんな状況に陥ってしまった私は、しばらくの間、スマホの前で必死で悩むことになるのだった。


 す、スタンプ!? とりあえずスタンプを送ればいいかな!? そうすれば、少なくとも既読スルーしてないって言うのは伝わるよね!?

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

よろしければ、ご感想や評価などをいただけると嬉しいです。

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