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第六十話 中間テスト一週間前

有織はべりです。

拙文ですが、お読みいただき、楽しんでいただけると嬉しいです。

 個人的にものすごく波乱だった球技大会も終わり、精神と肉体両方の疲れを癒やすべく振替休日を自宅でゆっくりと過ごした次の日、登校してきた俺を待っていたのは、先月ゆーちゃんが幼馴染だってバレた時と同じかぞれ以上の量の視線視線視線。


 うん、球技大会であんなことやらかしたんだから、こんなことになる覚悟はしてたけど……いや、やっぱりきっっっっついな!?


 生徒会役員に指名されたり、ゆーちゃんが幼馴染ってバレたり、先月、何回か目立つような機会があったけど、この視線にさらされる感じは一生慣れるような気がしない。俺みたいな小心者のヘタレにとって、大勢に注目されることは毒にしかならないのだと、改めて思い知った。


 しかも今回は、今までの興味とか好奇って感じの視線じゃなくて、妬みとかそういう感じの混ざってるやつもっぽいので尚更しんどい。特に男子からの目が!

 

 いくら競技の中でとは言え、ゆーちゃんに抱き着かれていた俺がそんなに憎たらしいのか、とにかく先輩後輩同級生、学年を問わず男子からの視線がものすごく痛かった。彼らが球技大会の時みたいに、急に嫉妬に狂った化け物になったりしないことを切に願う。


 いやほんと、ゆーちゃんの人気ってすごいわぁ……。


「えー……お前らも当然、知ってるとは思うが、一週間後に中間テストがあるからな。もし赤点を取ったら、くそ面倒くさい補習が待ってるから、各々いい感じで勉強しておくように」


 改めて幼馴染の凄さを噛みしめていると、いつもと同じダウナーな感じの話し方で連絡事項を告げる我らが担任。


 あー、そういえば、去年もこれくらいの時期にあったっけ……球技大会で色々ありすぎて、中間テストのこととか、頭からすっぽり抜けてたな。


 うちの学校は赤点を取ると、放課後に補習を受けないといけなくなる。しかも二週間、毎日欠かさず。そんな面倒くさいことは心の底からお断りなので、絶対に赤点だけは回避しないといけない。


 ま、そうは言っても一週間もあるし何とかなるだろ。二年に上がってから初めてのテストだけど、今の所どの科目にも、赤点を取りそうなくらいわからない問題とかないし。ていうか、いい感じで勉強って……相変わらず適当すぎるだろうちの担任。 

 

「当たり前だがテストで高得点を取った場合、当然お前らの成績は良くなるし、先生の評価も上がる。だから他の科目はほどほどに勉強して、歴史の勉強を特に頑張ってくれてもいいぞー」 


 おい、事実その通りなんだとは思うけど、そんな露骨に評価が上がるとか言っていいのか教師。


 ちなみに、うちの担任が教えてる教科は歴史だ。

 堂々と自分の担当する歴史だけ頑張ることを推奨しているところが、あまりにもうちの担任らしい。


 いやほんと色々はっきり言い過ぎじゃない? こんなことばっかり言って、よく怒られないなこの人。


「ま、そういうわけで一週間、悔いのないように過ごすように。連絡事項は以上。一時間目の始まる時間になったらまた来るから、それまでは隣のクラスに怒られない程度で、ほどほどに自由にしてろー」


 そう言うと、担任はのっそりとした動きで教室を出て行った。

 一時間目が始まるまであと5分くらいしかないんだから、そのまま教室にいればいいのに。 


 担任が出て行き、クラスメイト達がほどほどに自由に行動を始める。

 一番多いのは近くの席にいる友人と雑談。そうじゃない生徒の多くは本を読んだり、寝ていたりと個人プレイを満喫している。流石に立ち歩いたりするやつはいなかった。


 クラスのあちこちで雑談の話題は当然、中間テストについて。

 どの教科が不安だの、一緒に勉強会をしようだの、今日から部活できないとか辛いだの、色んな話が耳に入ってくる。


 せっかくだし、俺もできることならそういう楽しい雑談がしたいが、悲しいかな、それができそうな相手は近くにいなかった。5月になって席替えがあったけど、残念なことに先月と同じく竜也もゆーちゃんも、座ったまま話ができない程度には俺と席が離れている。仕方がないので今回は諦めるしかなさそうだった


 ……あれ? もしかして俺って竜也とゆーちゃんくらいしか気軽に話せる相手がいない? やだ……もしかして俺って友だち少なすぎ? い、いやそんなはずはない! 俺にだってそういう相手の一人や二人……! え、えっと、竜也だろ? ゆーちゃんだろ? 天崎だろ? 天崎先輩だろ? あ、あとは………い、妹?


 よくよく考えてみて、気軽に雑談ができるような知り合いが片手で数えられるくらいしかいないことに絶望する。


 身内を入れても5人しかいないとか悲しすぎるだろ俺よ……あといくらなんでも妹をカウントするのはどうなんだ? こ、このままじゃ悲しすぎる! せ、せめて一人だけでも、近くの席の人と雑談できるくらいに仲良くなっておきたい! 


 そもそもあと1週間ちょっとで5月も終わって席替えがあるから、今、頑張って話せる相手を作ってもほとんど意味はないのだけど、それはそれ。、周りが楽しそうに話している中、友だちが少ないことを自覚した状態で、一人ぽつんとそんな会話を聞き続けるのは、思いのほか孤独感がヤバいというかメンタルにきた。


 そのせいか、今、無性に誰かと話したくなっているので、頑張って話せる相手を探そうと思ったわけだが、俺の近くの席のクラスメイトはほとんどが友だちと雑談中だった。


 そこに自然と混ざるようなコミュ力なんて俺にはないので、そうなると必然、誰とも話さず自分の時間に没頭している勢に話しかけるしかないわけだが……幸いなことに、それに該当する人物が確実に一人いる、というか隣の席に座っていた。


 けれど「そもそも、普段から仲良く雑談をするような関係じゃない相手に話しかけられても、びっくりするか変に思われるかの二択でしかないのでは?」なんて考えてしまい、この期に及んで、そんな貴重な相手に話しかけることを躊躇してしまうヘタレな俺。


 い、いや、うん、一応は知り合いでお互い連絡先も知ってるし、毎日、挨拶はする仲だから別に話しかけても大丈夫だと思うんだけど……今まで山本さんと雑談とかしたことないからなぁ……。


 該当する人物、それは少し野暮ったい感じのメガネにおさげという、いかにも文学少女といった見た目をしていて、アニメやマンガを好きで、そのコスプレ衣装を作ってそれを誰かに来てもらい撮影することが趣味? の女子生徒。先月、隣の席だった山本さんである。


 今月も彼女は俺の隣の席をまさかの続投。近くの席にいるクラスメイトの中じゃ唯一の知り合いで、現状、一番話しかけやすい子、というか話しかけられるたった一人の相手だった。


 う、うーん……もし話しかけるとしたら、きっと山本さんのことだから、いつもみたいに静かに本を読んでるんだろうし、そのあたりを話題にするのが一番いいか? いやでもいきなり俺から、何の本読んでるの? とか聞かれてもキモイとか思われるだけか……? ああもう! 今だけでいいから竜也の外見が欲しい! イケメンなら、どんな感じで話しかけても許されること間違いなしだろうし!


 竜也に聞かれたら真顔で「は? んなわけねーだろ?」と、ばっさり否定されそうなことを考えながら、とりあえず、まずは話しかけられそうな感じか確認してみようと思い、ちらっと隣の席に座る彼女の様子をうかがってみて、


「――――――――」


 ……うえっ!?


 あまりにも予想外の姿に思わず声が出そうになった。


 暇さえあれば読書をしているイメージの山本さんだったが、今は何もせず、ただただ生気ない顔で虚空を見つめていた。よく見ると目が虚ろであり、まるで世界の全てに絶望しているような雰囲気をまとっている。俺が知る限り、こんな山本さんを見るのは初めてだ。


 え、いやちょっと山本さん、何があったの!? さっき朝の挨拶をした時は普通だったのに!? 


「あ、あの山本さ――」

「おらーお前ら、授業始めんぞー教科書開けー」

 

 あまりにも山本さんの様子がおかしすぎたので、どうやって話しかけたらいいのかとか、そんな考えは頭から吹っ飛んでしまい、普通に何があったのか聞こうとした矢先、タイミング悪く一時間目の開始時刻になり、担任が教室に帰って来てしまった。ああもう以外に5分って短いな! 


 流石に授業が始まったのに無視して話しかけるわけにもいかないので、ものすごく気にはなりつつも諦めて授業の準備を始める。

 

 授業が始まると山本さんは普段の感じに戻っていたけれど、いったい何であんな顔をしていたのか。

 

 テスト前の大事な時間だというのに、隣の山本さんのことがずっと気になり続けてしまった俺は、授業に全く集中できなくなってしまうのだった。


 いやあの表情は絶対ただ事じゃないぞ……本当に何があったんだ……。 

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

よろしければ、ご感想や評価などをいただけると嬉しいです。

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